上 下
123 / 378

122話 ダンジョンクリアでございます!

しおりを挟む
【む……!】


 思ったより高い威力_____
 私はそのまま勢いよく壁に激突した。
 激しい衝突音がこの部屋の中に鳴り響く。


「アイリスちゃん!?」


 ロモンちゃんのそう叫ぶ声が聞こえる。


【大丈夫、無事ですよ】


 私はそう告げた。
 実際、全然…とはいかないものの、サナトスファビドの一撃をまともに食らった程度でしかないから大丈夫よ。
 あと10回くらい喰らわなきゃ致命傷にすらならない。
 とは言ったものの…私の視界の真ん前にはでっかいてんとう虫の顔があるわけで。
 ちょっと気持ち悪い。

 さて…ここからどうしようかな。
 思ったよりダメージ受けてるし、こいつ私に抱擁をかましたままどいてくれないし…回復しようかな?
 なんかこの至近距離からずっと炎やら雷やら撃ってくるしね。

 でも逆に言えば私も高火力の技をお見舞いする大チャンスよね! 例えば…自爆とか。
 いやでも自爆したら折角の綺麗な素材がダメになっちゃいそう。

 なら何がいいか。
 正直、この至近距離から殴ったりすることはできない。
 …….ま、普通に魔法よね。

 
【スシャイラ!】


 光の上級範囲魔法。
 この壁に穴が空いてできた密接空間では、単発魔法より効果があるはず。
 私の、てんとう虫しか見えなかった視界が、真っ白に輝く。


「光ってる!」
「スシャイラだね」


 そう、ロモンちゃんとリンネちゃんの声が聞こえた。
 

「ギィチィィイィィィ!?」


 そんな叫びを発しながら、プロミネンスレディバは私から離れた。というより私の魔法で吹っ飛んだ。
 やっと私の現状が把握できるわね。
 ……どうやら壁にこのゴーレムの形でめりこんでいるみたい。お腹はちょっと凹んでる。
 まずまずの威力だったのね、やっぱり。
 ロモンちゃんが食らってたらやばかったかも。


【終わらせますか】


 誰にいうでもなく、私はそう呟いてみる。
 壁から無理くり腕を剥がして、その腕をいまだに空中で悶絶しているプロミネンスレディバに合わせて________


【リシャイム!】


 発射した。
 その発射された光球は素早くプロミネンスレディバの元まで飛んで行き、被弾。
 

「やった!?」
「どうだろ?」


 ロモンちゃんとリンネちゃんが下でそんなこと呟いてるけど…どうやら…倒してしまったみたいね。
 大探知にプロミネンスレディバの生命反応がない。
 もう終わったんだ。


【どうやら終わったみたいですね】
【あ、アイリスちゃん! あんなの耐えるなんてさすがー】
【ふふふ、まあ余裕ですよ。今からそっちに降りますね】


 ロモンちゃんにそう告げてから、私は体を小さくする。
 これでスキマができてこの壁の食い込みから逃れられ、そのまま落下するんだ。
 そして地面と衝突する瞬間に、気でガード!


「だ、ダイナミックだね」
「ね」


 きちんと降りられた私に、ロモンちゃんとリンネちゃんが寄ってくる。二人には目立った傷がない。
 念のために私はそのまま回復魔法を全員に掛けてから人間の姿に戻った。


「案外楽勝でしたね」
「うんうん!」
「アイリスちゃんが強くて良かったよー!」


 なんて、もうなにも襲ってくるものなんかなくなった私達は平和に笑い合うの。
 もう魔物は襲ってこないし、宝物を入手してここを出ればダンジョンは消滅。
 ダンジョンクリアって言ってもいいよね。


「それじゃあ……あのアーティファクト入手と行きましょうか!」
「わーい!」
「お宝お宝っ!」


 歳相応の子どもらしく、二人ははしゃぎにはしゃいでいる。……ふ、ふふふ、かくいう私もこの現状に興奮しているの! 
 ダンジョンをクリアしてお宝を手に入れる、とてもワクワクする!
 もう目にアーティファクトというすごいお宝が見えてるぶんだけよっぽど!


「アイリスちゃん! ゲットしたよ!」
「はや……やりましたねっ!」


 私がものに思いふけっていたうちにどうやらあの二人がアーティストファクトを祭壇から取ってしまったらしい。
 罠があるかも~なんて思ってたんだけど、無かったみたいね。
 私も急いで二人の元に駆けつける。


「どうです?」
「やっぱりアーティファクトってなんか凄いよ! 力が溢れるっていうか…。まあぼくは使わないし、アイリスちゃんも元々防御が高いからね、ロモンが使いなよ」
「それがいいと思いますよ」
「う…うん!」


 リンネちゃんからロモンちゃんにテントウムシデザインの片手盾が渡された。
 ロモンちゃんは丁寧に丁寧にそれを受け取り、まじまじとそれを眺める。
 大きさだけならこじんまりとした盾なので、ロモンちゃんでも問題なく扱えるでしょう。
 

「……ところでこれの効果ってなんだろ?」


 盾を握ってみてから、ロモンちゃんは首を傾げながらそうつぶやいた。


「誰も鑑定できないのでわかりませんからね、街に帰ったらみてもらいましょう」
「うん、そうだねっ!」


 私のそんな普通の提案にロモンちゃんはにっこりと笑うと、自分のスペーカウの袋の中にその、テントウムシの盾をしまい込んだ。


「それよりも今はお宝だよ! どこかに宝箱が……」


 
 普通じゃないテンションでお宝を探すロモンちゃんがキョロキョロと辺りを見回すの。
 

「あっ…え、なにあれ!」


 リンネちゃんはプロミネンスレディバがある方向をみてから興奮気味にそう叫んだ。
 私とロモンちゃんもそっちを見る。
 ……部屋の真ん中にいつの間にか水色の発光している何かが浮いていて、その何かの前に宝箱が置いてあった。


「……あれって確か、外に出るためのゲートだよね?」
「ってことは本格的にクリアかー」


 へぇ、あれがゲートか。
 本ではロモンちゃんやリンネちゃんと一緒に読んだけれど、実物ははじめてみた。
 あれに飛び込んだらこのダンジョンの外に出られるんだっけ。
 ちなみに外に出たら、クリアして直接ゲートに飛び込んだ人以外は一瞬だけ気絶させられ外に放出される。さらに転移魔法陣とかは効果がオシャカになっちゃうんだ。


「その前にお宝あけようよ!」
「うん!」
「ええ!」


 私とロモンちゃんとリンネちゃんは同時に且つ颯爽と宝箱の前へ。


「なにかなぁ…」
「ワクワクするね、お姉ちゃん!」
「そ、それじゃあ開けましょうか」


 私達3人でその宝箱に手をかけ、同時に開けた。
 パカリと軽快な音を立ててその宝箱は簡単に開き、その中身が現れることとなる。
 私達はその中身を額を寄せ合って覗き込んだ。


「わ…わぁ…綺麗…!」
「大きな宝石がこんなに…!」


 すごい。
 ロモンちゃんくらいの女の子の握り拳くらいに等しい大きさの宝石がゴロゴロと入ってる。30個以上かな。
 この世界では宝石は…前世にいた世界より高くない。
 でも高い換金アイテムであることにはやはり変わらないの。


「これ一つでどれくらいご飯たべれるかな?」


 リンネちゃんが一つを手に取った。


「私の勘だったら今日の昼食みたいなのを3日間それぞれ3食はできるんじゃないかな?」
「ロモンちゃんが言うならならそうなのでしょう」


 ロモンちゃんの言うことはよく当たる。
 私達はそれを、私のスペーカウの袋に宝箱ごと放り込む。ついでにプロミネンスレディバの亡骸も回収。


「それじゃあ外に出ましょうか。忘れ物はないですよね?」
「「うん!」」


 私達は3人手を取り合う。
 どうせだから一緒に一気に飛び込んじゃおうってことで。その相談通りに私達は水色の発光した輪の中に、3人で仲良く飛び込んだ!



######


次の投稿は2/25です!
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

家族と移住した先で隠しキャラ拾いました

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」  ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。  「「「やっぱりかー」」」  すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。  日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。  しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。  ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。  前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。 「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」  前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。  そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。  まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...