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356話 私の記憶でございます。 4
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私がお嬢様から『ばぁや』というあだ名を授かってから数々の場面が過ぎ、私は中学2年生、お嬢様は小学4年生あたりになった。
ここまで、幼いお嬢様が頑張って私の誕生日を盛大に祝おうとする場面だとか、お嬢様が私におんぶをせがむ場面だとか、私が初めてお嬢様にお出しした料理をおいしいと言ってもらえだ日の事だとか……従者として生まれた人間なりの楽しみがギュッと積み込まれている日々を送っていた。
私は勉学、武術、給仕、これら全てを納めつつお嬢様のお世話をしなければならなかったため、同年代でよく付き合いがある友人と言えるのは勝負君くらいしかおらず、他の存在はクラスメイト止まりであった。その上、私が小学生の間はほとんど外に遊びに行く等の娯楽的活動は一切できなかった。が、それでも私は私なりに幸せだったのだと実感、否、再確認させられた。
しかし、この日の場面は今までの雰囲気とはまるで違っていた。
寒気というか、悪寒というか。直近でいえばグラブアに襲われ、危機的状況に陥ったあの日と同じほどに。
「ばぁや……」
「ええ、わかってます」
私はお嬢様をお守りしなければならないので、特例で学校を早上がりし、彼女の送り迎えを毎日行っていた。
とはいえ普段は屋敷から車が出る。ただこの日は蘇った記憶が正しければ、ご主人様の仕事の関係上、送り迎え用の車すら出払わなければならないような状況であったため、こうして徒歩で帰路にたっていた。
そして、昔の私とお嬢様はその最中、自分たちの跡をつけてくる存在に気がついていた。
昔の私が臨戦態勢をとり、お嬢様が私の後ろに隠れる。それと同時に今の私も思い出した。この場面が何を意味するのかを。
この日は……私のお嬢様に対する役割とその重大さを身をもって体験する初めての日。そして男性に対して過度な苦手意識も芽生えた日。昔の私にとって、悪い意味で大きな大きな影響を与えた日だった。
「あらら、バレちまったか」
「いいんじゃね? ここらへんって計画だし」
「えーっと、二人ともとっ捕まえたいいんだよな」
「チビの方は気絶だけ、オカッパの方は好きにしていいとよ」
「へぇ、好きに?」
「お。乗り気だねぇ、ロリコンかよ」
「そーだよわるいかよ」
いかにもガラの悪い男性二人がニヤニヤしながら近づいてくる。この二人の顔を見た瞬間、私が感じていた悪寒は強くなり、吐き気までしてきた。
昔の私も嫌な予感がしたのか、お嬢様の手を取り、前方へ駆け出した。しかしその先にあった曲がり角から、後方の二人といかにも同類の男性がまた二人現れる。挟まれる形となった。
「くっ……!」
「はい、ダメ。ここは通さないよ蛇神家のおじょーちゃまと、そのメイドさん」
「大人しく捕まってくれたら乱暴はしないからねー」
「おーい! 別に乱暴しちゃいけねーのはチビの方だけだとよ」
「あ、マジ? ってことはこっちは何でもあり系?」
「らしい! オマケ感覚で楽しもうぜ」
「……いいねぇ」
曲がり角から現れた男性の一人がお嬢様に、もう一人が私に向かって手を伸ばした。昔の私は咄嗟にお嬢様を壁際まで突き飛ばし、庇う形でお嬢様に手を伸ばした方の男性に捕まった。
「お、あらら」
「ば、ばぁや!?」
「……」
「おー! よくやった!」
「お前、そのままメイドの方を捕まえてろよ。どうせおじょーちゃまの方は一人で逃げられないんだし、早速味見しても……」
普段、私と武を競い合っていた道場の人たちは、私の足や手を注視していた。だから、このように戦うべき相手の目線が手足ではなく、臀部や胸の方に向いているのは当時の私にとっては初めての経験だった。
加えて、私は自分が容姿が淡麗とかそーゆーことは一切思っていなかったので、何故にそんな気持ち悪い目を向けられるのかがさっぱりわからなかった。
……まあ、今の私でもガーベラさんや周りのみんなに綺麗とか言われてもピンとこないし、それは従者として徹底して生きてきた性というものかもしれない。
故にただでさえ恐怖的な状況にも関わらず、昔にとっての私には理解不能な目線がさらにそれを増幅させる。それは私の判断を一瞬遅らせた。
防御をとるという判断が追いつかず、何気なく伸ばされたような一人の男の手が、私の頬と髪の毛に触れた。
「……!」
「へっ、あんがい……おぐぅ!?」
触れられた事で自我を取り戻した昔の私による、金的への蹴上。
幼い頃から鍛え上げてきた蹴りが男性の随一の急所を的確に貫いた。それと同時に私は制服の内ポケットから迅速にスタンガンを取り出し、私を捕まえている方の男性の手に当てる。
電気の痛みで拘束が緩んだ隙に抜け出し、その男性の金的も蹴り上げる。そしてその場でうずくまる二人に対して首筋にスタンガンを当てて気絶させた。
「ば……ばぁやすごい……!」
「彼らの顔は覚えました。残り二人は下手に倒さずに逃げ、あとは警察に任せましょう」
「う、うん!」
私はお嬢様の手を掴み、思い切り走り出す。
そういえば、私はこの後日から今までの習い事に加えて絵も練習し始めたんだっけ。人相描きができるようになるために。
「あ、おい! くそっ……まて!」
「なんだあの強さ!? 用心しろとは言われてたが……」
「おい、お前らしっかりしろよ、なに中学生にのされてんだよ」
元々、後方の二人とは距離がそこそこ離れていたため、私とお嬢様はそのまま逃げ切れた。
そう、この一連の事件で私は実感させられたんだ。蛇神家が代々、信頼できる血筋から付き人を子供の頃から決めるその意味を、心底。
何千年もの歴史があり、世界屈指の大財閥である蛇神家はその力の強さから度々、いろんな方面から命を狙われる。もはや、外部から雇った料理人などにも毒を盛られないか疑わなければならないほどに。
そこで必要なのが私達、幼少期から共に育つ専属の従者。給仕の全てを任され、戦闘と護衛をこなす蛇神家にとって一番信用できる人間。
この日まではそれなりに疑問には思っていた記憶がある。お金があるのに専属のシェフではなく私がご飯を作ることや、私が外部の人と恋愛してはいけないことに対して。何となく聞かされてはいたが、それぞれ『決まり』としか認識していなかった。
だがこうしてその必要性を実体験させられると、私は私の運命を再確認せざるを得ない。
「……ばぁや、ばぁや、大丈夫?」
「ど、どうされました?」
お屋敷の前にたどり着いたところで、お嬢様が私にそう尋ねた。
「すごく……手が震えてるよ?」
「……そ、そうですね。走ってつかれてしまったのかと……」
昔の私はそういうが、今の私は違う。わかる。この震えは、恐怖からくるもの。ありとあらゆるものに対しての、恐怖__________。
◆◆◆
「ひっ……!?」
「……へ、変なところ触ったかい? ごめんよ愛理ちゃん」
「あ、いえ……すいません、ちょっとびっくりしただけです。続けてください」
「……? ならいいけど」
あれからおそらく二日後。
お嬢様の前では問題なさそうに立ち振る舞っていた昔の私だが、恐怖心はやはりふとした瞬間に表面に現れた。
道場にて、おそらく襲ってきた暴漢達と同年代の男性と、組技の実践練習をしていた時。体を触れられた事で私にはあるまじき声がでてしまった。
無論、この人は昔から知ってる人だし、優しいことも把握している。しかしおそらく、この昔の私は頭の奥底で拒否してしまっていた。……つまり、私の男性不審はあの日から始まったといえる。
そして、その日の練習メニュー全部が終わった後、昔の私は勝負君から呼び出された。
呼び出された場所に行くと、彼が今までにないくらい真剣な面持ちで……だいたい、ガーベラさんが勇者に任命された時と同じくらいの……とにかくそんな表情で昔の私を待っていた。
「……なぁ、愛理」
「はい、何でしょう」
「何かあっただろ、お前があんな……」
「……いえ、特には」
「……言いたくないならいいよ。でも、だいたい察しはつくんだ。ほら、うちって昔から石上家の人達に武術を教えてきたからさ」
勝負君はなんとも言えない表情を浮かべている。一方で私は無表情。正確に合えば必死で無表情を作っていた。……私自身だからわかるが、この時は……たぶん、慰めたり励ましたりして欲しかったと思う。友達として。
そんな私の気持ちを汲んでいるかのように、勝負君は言葉を続けた。
「とにかく、何かあったらできる限り助けに行くから。俺が。……お嬢様を守る、愛理を守りたいというか」
「そうですか。……私より弱いのに?」
「い、一歩劣るだけ! 側から見たら拮抗してるってよく言われるだろ? と、とにかく……なんていうかその……助けるよ。幼馴染みとして、友達として。だから辛いことがあったら我慢しないで。そ、そういうワケだから! ……帰っていいよ」
今だからわかる。この頃はすでにガーベラさん……もとい勝負君は私のことが好きだった。それにこの反応を見るに、やはり、こちらの世界で私に告白してきた時にはもう、だいぶ記憶が戻っていたとみえる。なんかそう考えるとなんだか甘酸っぱい気分に襲われる。
「はぁ。まあ、気持ちはありがたく受け取っておきますよ」
人がせっかく勇気を振り絞って守ってくれると宣言したにも関わらず、昔の私はそっけない返事をして、彼のもとを後にした。
ただ、私の記憶にはなかったことが一つ。その私の頬が赤くなっていた。
まさか、私もこの頃からガーベラさんを……?
いや、どうだったかしら。嫌いではなかったし、信用はしてたけど……。好きだったのかなぁ……? 実は気が付いてないだけで……?
#####
三日も遅くなってしまい申し訳ありません。
次の投稿は1/19の深夜あたりの予定です。
予定変更の場合は上記の時間までにこの部分に追記いたします。
ここまで、幼いお嬢様が頑張って私の誕生日を盛大に祝おうとする場面だとか、お嬢様が私におんぶをせがむ場面だとか、私が初めてお嬢様にお出しした料理をおいしいと言ってもらえだ日の事だとか……従者として生まれた人間なりの楽しみがギュッと積み込まれている日々を送っていた。
私は勉学、武術、給仕、これら全てを納めつつお嬢様のお世話をしなければならなかったため、同年代でよく付き合いがある友人と言えるのは勝負君くらいしかおらず、他の存在はクラスメイト止まりであった。その上、私が小学生の間はほとんど外に遊びに行く等の娯楽的活動は一切できなかった。が、それでも私は私なりに幸せだったのだと実感、否、再確認させられた。
しかし、この日の場面は今までの雰囲気とはまるで違っていた。
寒気というか、悪寒というか。直近でいえばグラブアに襲われ、危機的状況に陥ったあの日と同じほどに。
「ばぁや……」
「ええ、わかってます」
私はお嬢様をお守りしなければならないので、特例で学校を早上がりし、彼女の送り迎えを毎日行っていた。
とはいえ普段は屋敷から車が出る。ただこの日は蘇った記憶が正しければ、ご主人様の仕事の関係上、送り迎え用の車すら出払わなければならないような状況であったため、こうして徒歩で帰路にたっていた。
そして、昔の私とお嬢様はその最中、自分たちの跡をつけてくる存在に気がついていた。
昔の私が臨戦態勢をとり、お嬢様が私の後ろに隠れる。それと同時に今の私も思い出した。この場面が何を意味するのかを。
この日は……私のお嬢様に対する役割とその重大さを身をもって体験する初めての日。そして男性に対して過度な苦手意識も芽生えた日。昔の私にとって、悪い意味で大きな大きな影響を与えた日だった。
「あらら、バレちまったか」
「いいんじゃね? ここらへんって計画だし」
「えーっと、二人ともとっ捕まえたいいんだよな」
「チビの方は気絶だけ、オカッパの方は好きにしていいとよ」
「へぇ、好きに?」
「お。乗り気だねぇ、ロリコンかよ」
「そーだよわるいかよ」
いかにもガラの悪い男性二人がニヤニヤしながら近づいてくる。この二人の顔を見た瞬間、私が感じていた悪寒は強くなり、吐き気までしてきた。
昔の私も嫌な予感がしたのか、お嬢様の手を取り、前方へ駆け出した。しかしその先にあった曲がり角から、後方の二人といかにも同類の男性がまた二人現れる。挟まれる形となった。
「くっ……!」
「はい、ダメ。ここは通さないよ蛇神家のおじょーちゃまと、そのメイドさん」
「大人しく捕まってくれたら乱暴はしないからねー」
「おーい! 別に乱暴しちゃいけねーのはチビの方だけだとよ」
「あ、マジ? ってことはこっちは何でもあり系?」
「らしい! オマケ感覚で楽しもうぜ」
「……いいねぇ」
曲がり角から現れた男性の一人がお嬢様に、もう一人が私に向かって手を伸ばした。昔の私は咄嗟にお嬢様を壁際まで突き飛ばし、庇う形でお嬢様に手を伸ばした方の男性に捕まった。
「お、あらら」
「ば、ばぁや!?」
「……」
「おー! よくやった!」
「お前、そのままメイドの方を捕まえてろよ。どうせおじょーちゃまの方は一人で逃げられないんだし、早速味見しても……」
普段、私と武を競い合っていた道場の人たちは、私の足や手を注視していた。だから、このように戦うべき相手の目線が手足ではなく、臀部や胸の方に向いているのは当時の私にとっては初めての経験だった。
加えて、私は自分が容姿が淡麗とかそーゆーことは一切思っていなかったので、何故にそんな気持ち悪い目を向けられるのかがさっぱりわからなかった。
……まあ、今の私でもガーベラさんや周りのみんなに綺麗とか言われてもピンとこないし、それは従者として徹底して生きてきた性というものかもしれない。
故にただでさえ恐怖的な状況にも関わらず、昔にとっての私には理解不能な目線がさらにそれを増幅させる。それは私の判断を一瞬遅らせた。
防御をとるという判断が追いつかず、何気なく伸ばされたような一人の男の手が、私の頬と髪の毛に触れた。
「……!」
「へっ、あんがい……おぐぅ!?」
触れられた事で自我を取り戻した昔の私による、金的への蹴上。
幼い頃から鍛え上げてきた蹴りが男性の随一の急所を的確に貫いた。それと同時に私は制服の内ポケットから迅速にスタンガンを取り出し、私を捕まえている方の男性の手に当てる。
電気の痛みで拘束が緩んだ隙に抜け出し、その男性の金的も蹴り上げる。そしてその場でうずくまる二人に対して首筋にスタンガンを当てて気絶させた。
「ば……ばぁやすごい……!」
「彼らの顔は覚えました。残り二人は下手に倒さずに逃げ、あとは警察に任せましょう」
「う、うん!」
私はお嬢様の手を掴み、思い切り走り出す。
そういえば、私はこの後日から今までの習い事に加えて絵も練習し始めたんだっけ。人相描きができるようになるために。
「あ、おい! くそっ……まて!」
「なんだあの強さ!? 用心しろとは言われてたが……」
「おい、お前らしっかりしろよ、なに中学生にのされてんだよ」
元々、後方の二人とは距離がそこそこ離れていたため、私とお嬢様はそのまま逃げ切れた。
そう、この一連の事件で私は実感させられたんだ。蛇神家が代々、信頼できる血筋から付き人を子供の頃から決めるその意味を、心底。
何千年もの歴史があり、世界屈指の大財閥である蛇神家はその力の強さから度々、いろんな方面から命を狙われる。もはや、外部から雇った料理人などにも毒を盛られないか疑わなければならないほどに。
そこで必要なのが私達、幼少期から共に育つ専属の従者。給仕の全てを任され、戦闘と護衛をこなす蛇神家にとって一番信用できる人間。
この日まではそれなりに疑問には思っていた記憶がある。お金があるのに専属のシェフではなく私がご飯を作ることや、私が外部の人と恋愛してはいけないことに対して。何となく聞かされてはいたが、それぞれ『決まり』としか認識していなかった。
だがこうしてその必要性を実体験させられると、私は私の運命を再確認せざるを得ない。
「……ばぁや、ばぁや、大丈夫?」
「ど、どうされました?」
お屋敷の前にたどり着いたところで、お嬢様が私にそう尋ねた。
「すごく……手が震えてるよ?」
「……そ、そうですね。走ってつかれてしまったのかと……」
昔の私はそういうが、今の私は違う。わかる。この震えは、恐怖からくるもの。ありとあらゆるものに対しての、恐怖__________。
◆◆◆
「ひっ……!?」
「……へ、変なところ触ったかい? ごめんよ愛理ちゃん」
「あ、いえ……すいません、ちょっとびっくりしただけです。続けてください」
「……? ならいいけど」
あれからおそらく二日後。
お嬢様の前では問題なさそうに立ち振る舞っていた昔の私だが、恐怖心はやはりふとした瞬間に表面に現れた。
道場にて、おそらく襲ってきた暴漢達と同年代の男性と、組技の実践練習をしていた時。体を触れられた事で私にはあるまじき声がでてしまった。
無論、この人は昔から知ってる人だし、優しいことも把握している。しかしおそらく、この昔の私は頭の奥底で拒否してしまっていた。……つまり、私の男性不審はあの日から始まったといえる。
そして、その日の練習メニュー全部が終わった後、昔の私は勝負君から呼び出された。
呼び出された場所に行くと、彼が今までにないくらい真剣な面持ちで……だいたい、ガーベラさんが勇者に任命された時と同じくらいの……とにかくそんな表情で昔の私を待っていた。
「……なぁ、愛理」
「はい、何でしょう」
「何かあっただろ、お前があんな……」
「……いえ、特には」
「……言いたくないならいいよ。でも、だいたい察しはつくんだ。ほら、うちって昔から石上家の人達に武術を教えてきたからさ」
勝負君はなんとも言えない表情を浮かべている。一方で私は無表情。正確に合えば必死で無表情を作っていた。……私自身だからわかるが、この時は……たぶん、慰めたり励ましたりして欲しかったと思う。友達として。
そんな私の気持ちを汲んでいるかのように、勝負君は言葉を続けた。
「とにかく、何かあったらできる限り助けに行くから。俺が。……お嬢様を守る、愛理を守りたいというか」
「そうですか。……私より弱いのに?」
「い、一歩劣るだけ! 側から見たら拮抗してるってよく言われるだろ? と、とにかく……なんていうかその……助けるよ。幼馴染みとして、友達として。だから辛いことがあったら我慢しないで。そ、そういうワケだから! ……帰っていいよ」
今だからわかる。この頃はすでにガーベラさん……もとい勝負君は私のことが好きだった。それにこの反応を見るに、やはり、こちらの世界で私に告白してきた時にはもう、だいぶ記憶が戻っていたとみえる。なんかそう考えるとなんだか甘酸っぱい気分に襲われる。
「はぁ。まあ、気持ちはありがたく受け取っておきますよ」
人がせっかく勇気を振り絞って守ってくれると宣言したにも関わらず、昔の私はそっけない返事をして、彼のもとを後にした。
ただ、私の記憶にはなかったことが一つ。その私の頬が赤くなっていた。
まさか、私もこの頃からガーベラさんを……?
いや、どうだったかしら。嫌いではなかったし、信用はしてたけど……。好きだったのかなぁ……? 実は気が付いてないだけで……?
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三日も遅くなってしまい申し訳ありません。
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