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337話 因縁の決着でございます!

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「その槍の先端……何という魔力量……」
「いくぞ!」


 ガーベラさん渾身の突き。グラブアは首を曲げ、顔面に対して振るわれたそれを回避した。しかし一部頬を掠めたのか、そこだけ抉れたような傷ができる。


「~~っ!? な、なるほど、大体原理はわかった。一時的にその先端だけ魔力を一点集中させることで、この俺ですら傷を与えられるだけの破壊力を生み出しているんだな?」
「答える必要はない」


 ガーベラさんははぐらかしたけど、それ以外に考えられない。グラブアにすらかなりのダメージを与えられるあの光は、おそらく昨日の手合わせで私に使っていたら大変なことになっていたかもしれない。


「武器と魔力の複合技としては基礎中の基礎。でもここまでうまく集中させるなんて、いままでどんな鍛錬をしてきたんだか……だが、そんなことしたところで今も俺の優勢であることに変わりはない! 見ろ、アイリスちゃんを!」


 私に向かって斬撃が再び振るわれる。衝撃波は私の肩から右腕を吹き飛ばした。すぐ再生するし痛みも感じないから、別にどうってことはないけれど、ガーベラさんは苦悶の表情を浮かべている。


【私に攻撃して油断しています! 今のうちですよ、ガーベラさん】
【わ、わかってる!】


 ガーベラさんはグラブアの左肩に槍の先を軽く当て、素早く振動し始めた。


「十五連突き!」
「ぐ!?」


 その名の通り一瞬の間に十五回突く技。全てグラブアの肩に集中している。要するに、グラブアの左肩は風穴が重なり肉も甲羅も絶たれ、皮一枚で繋がっている状況になった。
 すかさずガーベラさんは上段蹴りをかます。グラブアの左肩から先がもげた。


「あああああっ……き、きさまっ! アイリスちゃんに構わず俺を!?」
「次は右だ」
「そうはいくか! 脱皮……ぐふっ……」
「隙が大きい」


 たしか魔王軍幹部の大半は脱皮をすることで欠損した肉体含め全回復することができる。しかしガーベラさん程の手練れの前で自分の全身の皮を剥ぐだなんて行為、隙だらけで自殺行為に等しい。
 グラブアは見事に鳩尾を貫かれた。


「お……ぐ……ぐあああああ! あっ!?」


 グラブアは残った右手で斬撃を繰り出そうと盾剣を構える。しかし、それを振るう瞬間にガーベラさんはグラブアの無くなった左肩を盾で打ち、バランスを崩させた。

 巨大なグランルインクラブが人型に圧縮された形態である今のグラブア。その重さも計り知れない。それはつまり、片腕を失えば全体のバランスを崩してしまうことを意味している。
 
 私のように体幹を鍛えていたりせず、盾剣も握ったままなら尚更。
 グラブアは盛大に転倒した。


「くそっ……くそ!」
「十五連突き!」
「ぐあああ!」


 ガーベラさんの二度目の連突き。今度は右肩を抉り取り、遠方までその千切れた腕を蹴り飛ばす。
 グラブアはもう、自分では起き上がれなくなってしまった。足をジタバタさせてもがいている。


「今の俺は最強だ! 最強のはずなんだ! なんでこんな仲間を引き連れた軟弱な勇者にここまで……!」
「考えられるとすればアイリスを人質にし、俺の怒りを頂点まで達せさせたからだ」
「ならば! ならば死ぬ前にアイリスちゃんを道連れにしてやるよ! 俺の泡は破裂する瞬間、爆発を起こすことができる! あの牢を爆発させ、アイリスちゃん破壊してや……ぐふぅ……が……ぐあああああああ!」


 ガーベラさんはグラブアの腹部に回転させた槍を突き立て、押し込んだ。絶叫が響く。


「たしか、痛みがある間はうまく魔法を扱えないんだったか。俺の彼女に同じことをしていたっけ……?」
「はぁ……はぁ……ふざけ……ぐおおおおおおお!」


 今度は左足を捥いだ。グラブアが打ち上げられた魚のように身を震わせる。ガーベラさんが怒りの形相で淡々とグラブアの体を突き刺していく中、私と目が合った。
 何を思ったのか彼の目の色は変わり、少し悲しそうな表情になるとグラブアの頭部に槍の切っ先を向ける。


「終わりにしよう、これで」
「勝手に終わりにするな! 俺はまだやりたいことがある! まだ、まだ足りないんだ! そ、そこにいるアイリスちゃんからまずは……まずは……」
「いい加減にしてくれ」
「ぐふっ……」


 槍が脳天に押し込まれると、グラブアの魔力の反応がなくなった。私を捉えていた泡の牢も爆発することなく消滅する。


「アイリス……! 腕が……!」
【大丈夫ですよ、この通り】


 すでに全身元に戻っていることをガーベラさんに見せてあげる。彼は安堵し、槍をしまってから私に近づいてきた。私も人間に戻り、彼に駆け寄る。


「すいませんでした、足を引っ張ってしまって」
「いや、いいんだ。仕方ないんだよ。……よかった、本当に何ともなくて」


 ガーベラさんは私を抱きしめようとして手を止める。何か思うところがあるのだろうか。私にはわからないけど、それならば、私から抱きついてしまうまで。


「アイリス……」
「これで私のトラウマも少しは和らぐでしょうか。……ガーベラさん」
「ん?」
「グラブアの言っていたことは気にしなくていいですよ。前々から言っている通り、全て終わったら、体感させてあげますから。む、胸の感触でも何でも……」
「……あ、あはは、いや、そのことはあんまり気にしてなかったよ、俺」
「なんだ、そうでしたか」


 男性はそこらへんもプライドに関わってくることがあると聞いたことがあるから言ってみたけれど、そういうことなら羞恥心を乗り越える必要もなかったわね。
 

「さ、次はどうしようか。魔王軍幹部全員を片付けなければどっちみち魔王のところまで行くのはリスクがあるし」
「そうですね……」


 探知をしてみると、溶岩で遮られたこの隣の部屋のおじいさんとナイトさんはそこまで苦戦をしている様子はない。

 開始地点のペリドットさん達も、生き残った全てのSランクの魔物、計五匹と戦闘しているようだけれど……今一気に二匹の反応が消えたからこの調子なら問題ないでしょう。

 ロモンちゃん達、ターコイズ家の四人と二匹は遭遇した二匹の幹部と戦ってるみたいだけど、誰一人欠けることなく戦闘を続けている。まああの四人が揃って負けることはありえないわね。


「なんかみんな大丈夫そうだね」
「ガーベラさんもそう思いますか」
「うん。助太刀は必要なさそうだし、ちょっと魔力の回復しておこうか。だいぶ魔力を使ってしまった」
「わかりました」


 私とガーベラさんはグラブアの攻撃によりデコボコになった壁に寄り添って休憩を始めた。おそらく、この次に戦うのは魔王。万全の状態まで戻しておかなければ。



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次の投稿は5/11です!
次回はロモン達目線での話を書きますよ~!

そしてせんでんです。
私、先週から宣言通り新作を投稿しております!

『神速の大魔導師 ~魔法が一種類しか使えなくても最強へと成り上がれます~』というものです。
ぜひ作者ページをとんで閲覧していただけると嬉しいです!
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