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333話 嫌な再会でございます……!

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「おじいちゃんがこれだけやったから、次はもう魔王軍幹部を一人一人倒してけばいいんだよね?」
【そうなるゾ。ただ魔王軍幹部は二人一組でいるみたいだからオイラ達もみんな二人一組以上で行動した方がいいゾ】


 幹部じゃないSランクの魔物は、10人近く居るS級冒険者を中心として力のバランスが均等になるように分ければ何とかなる。それに魔王軍幹部の人数より私達勇者軍幹部の方が多いから余った人は兵隊さん達で対処しきれない分を処理していけばいい。
 こうなった場合の組み分けパターンも事前の作戦会議で決めてある。そもそも私達は魔王軍幹部をまともに1対1で倒そうなんて考えていないからね。二人一組になってる時点でそれは向こうも同じ考えみたいだけど。


「そうじゃな。それじゃあ事前に決めたように分かれるとするかの」


 まず、ロモンちゃんとリンネちゃんとケルくんの三人で一組。ロモンちゃんが魔物使いだから実質二人組だけど、ロモンちゃんとケルくんは力を使えばSランクの魔物を二匹同時に相手できる強さを持っているため問題はない。それに双子だけあってコンビネーションは抜群。ただのS級二人組では収まらない強さがある。

 次にお父さんとお母さん、ベスさん。この三人については双子達と使う力も戦い方もコンビネーションのやり方も同じ。違う点があるとすれば、戦闘経験の差。特にお父さんなんてすでに二回も魔王軍幹部にトドメをさしてるわけだし。

 そして最強なのがおじいさんとクロさん、ナイトさんの三人の組。この人たちについてはもう何も言うことはない。正直なところ、勇者の力でないとまともなダメージが与えられない魔王が相手でなかったらこの三人だけでおそらく事態は収束させることができていた。

 さらに私とガーベラさん。私の極至種、賢者の石としての特性とガーベラさんの勇者としての力である未来予知。この二つが掛け合わさって二人とも不死に近い力を持っているこの屈指の不死コンビ。……自分でそう考えるのもあれだけど、事実ではある。
 なによりこのコンビは私がガーベラさんを、ガーベラさんが私を互いに守るという役目がある。

 最後に残りのランスロットさん、ペリドットさん、タイガーアイさん。カップルや兄弟という訳でもなく余ったのでこの三人でトリオを結成したと本人達は言うけれど、それでもこの三人で途方もない強さを誇っている。


「それで、どの組がどこに向かうのがベストだ?」
「そうじゃの。リンネ達とノア達の二組、四人と二匹で東側の四匹、ワシらとアイリス達の二組で西側の四匹、ランスロット達は兵達の指揮とともに残ったSランクの処理をお願いしたいかの」
「では、そのようにしましょ~ね~~」


 私かガーベラさんがやられた時点で終わりだから、おじいさんとナイトさんがついてきてくれるのでしょう。どう考えても戦力過多だけどね。とりあえず私達は一番近くにいる魔王軍幹部二人組目指して進んでいった。

 道中、おじいさんが遠距離攻撃で倒したと思われる魔物の亡骸と五体ほど遭遇する。三匹は天井から生えてきたゴーレムの時の私ぐらいの太さはある巨大な水晶の柱に貫かれ、二匹は辺り一帯に血肉が飛び散り爆散していた。双方の共通点としては地形まで変わっていること。大きく地響きが起こるのもわかる。こんな恐ろしい攻撃を感知だけで対象を捉えて行うなんて、ほんと、化け物染みてるわ。
 ちなみに途中で生きてる魔物にも二匹遭遇したけれど、どうやら先の攻撃で大怪我をしていたみたいでまともに動ける状態じゃなく、ナイトさんが手早く倒してしまった。もしかしたら幹部以外の魔物はもうすでにみんな瀕死の可能性すらある。
 

「ごめんね、二人っきりにしてあげられなくて」
「い、いえ、戦争中ですし……」
「まあ敵地でイチャつく余裕なんてないじゃろうがな」


 この魔王の拠点はダンジョンとしては大して広くはない。私達は歩き始めて十分ほどで魔王軍幹部二人組がいる広場へとたどり着いた。そこに居たのは赤髪オールバックの人物と、私達のよく知っている人……。


「真っ先に私のところに来ると思っていましたよ。久しいですな、総騎士団長ジーゼフ殿」
「よく言うわい。ワシと遭遇するためにわざわざ比較的近場に身を潜めておったくせに」
「アイリス、あの人がオーニキスって人なの?」
「……そうですよ」
「アイリスも久しいな。息災であったか」
「裏切り者が孫娘に気安く話しかけるでないわ。……クロ、行くぞ」
【ああ、叩き潰すぞ】


 移動に不便のないよう幼体化していたクロさんが元の姿に戻った。明らかに怒っている。そりゃ、八年も彼によって不自由を強いられたのだから当然よね。


「孫娘? どういうことかね、アイリス」
「えっと、あの、私正式にあの家の養子になりまして……」
「普通に答えちゃうんだ、アイリス」
「あっ……そうですね。つい……」
「そういうわけじゃ。だが、そんなことこの戦いには関係ないじゃろう。クリスタル・リスドゴドラムじゃ」
「やれやれ、久しぶりに再会したというのに話すらさせてくれないなんて。……頼んだぞ」


 オーニキスさんがそういうと、オールバックの男の人……たしかイフリートサラマンドラの半魔半人で、ジンという名前だったかしら、その人が彼の前に出てきた。
 おじいさんにコテンパンにやられたのを忘れたわけじゃないでしょうに、なぜそんな自信満々そうなのかしらね?


「ふはははは! 等しいな、強き愚族の老人よ。ゴーレムの娘も一緒か」
「貴様に構ってる暇はないわい」
「ジーゼフ殿、まさか我々がなんの準備もなしに貴方をここまでおびき寄せただなんて思っては居りますまい? ジン殿」
「ああ、あの老人相手に手抜きはできん」
「……危ない、みんな避けろ!」


 オーニキスさんに名前を呼ばれたジンは自分の顔の前で拳を握り込んだ。瞬間、私とガーベラさん、おじいさんとナイトさんの二組ずつの間の地面に亀裂が入り、そこから溶岩が噴出された。
 ナイトさん達はどうやら難なく避けたみたいだった。私はガーベラさんに慌てて押しのけてもらった。とりあえず全員今の攻撃からはダメージを受けなかったけど、分断はされてしまったわね。


「アイリスとその……もう一人の君! 聞こえるかな? そっちでは私達ではない別の者が相手をする! せいぜいあがいてくれたまえ」


 私達に呼びかけられたオーニキスさんの声。それと同時に、私達の目の前に二つの魔法陣が現れる。外の魔物を呼び出したものと同じ魔法陣。そこから出現したのは……出現したのは……!


「ひっ……!」
「ははは、怯えたアイリスちゃんもまた可愛いな。久しぶり! 元気にしてた?」


 私は思わず小さく悲鳴を上げた。それどころか身体が勝手にガーベラさんの後ろに隠れてしまう。全身に鳥肌が立ったのがはっきりとわかる。あの男を私の身も心も全力で拒否している。
 格好悪いけれど、私はガーベラさんの後ろに隠れたまま二人の魔王軍幹部の様子を見ることにした。ガーベラさんは後ろに手を回し、私を守るようにしてくれている。


「ずいぶん嫌われたものだね。その心の底からくる恐怖にしかめた眉、そういうのが好きなんだよ」
「あの女の子知ってるよボク、ゴーレムでしょ? グラブア、まさかアイツにも手を出したの?」
「もちろん。あの男のせいで未遂だったけどね」


 もう一人はアルケニスだったはず。私が把握してる限りでは魔王軍幹部の紅一点。この二人が相手か。
 ふと、ガーベラさんの顔を肩越しに見てみると、グラブアに向けて凄まじい表情を浮かべていた。コメカミに血管が浮き出そうな勢いで。



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