上 下
77 / 378

77話 私vs毒蛇王でございます…! 3

しおりを挟む
【どういう意味ですか、それは…?】
【……わかるだろ? ミジかい髪のムスメは…オレの不治の呪毒におかされた。その呪毒のハツドウや死亡ジキはジユウにキめられる。あのコは1シュウカンだな】


 毒による死亡時期って自由なんだ……。
 てことは今頃、リンネちゃんは地獄のような苦痛を…。ジエダちゃんも相当きつかったって言ってたし、心配……。

 あの時、リンネちゃんは……魔物の気配でサナトスファビドから反射で遠のいたのかと思ったけれど、本当は肌に何かを触れたから反射で下がっただけなのかもしれない。

 それにしても……こいつ、私があれを治せることを知らないから、ザマァみろみたいな顔とドヤ顔を合成ような表情をしてる。
 今のところはリンネちゃんが痛くて可哀想で…早く治してあげたいってだけなんだ。焦っちゃだめ。

 死ぬ心配はない。いや、確かに痛がるリンネちゃんは見たくないけれど、私がいる限り死なないし……もう、こうなったら情報どうのこうの言ってる場合じゃないよね。

 さっさと死んだふりをして、この場から逃れて、リンネちゃん達の元に行かないと。
 大丈夫、慎重にやれば全部うまくいく…!


【それにしても髪のナガいホウのコはカワイソウだな。仲魔がシに…仲間もシぬのだ! あ、ああ、ああああ! い、いいい! いいぞ! ステキだ…ショウジョが痛がるスガタも、絶望するスガタも……ソウゾウするだけでサイコウのキブンだぁぁぁぁああああぁ】


 突然、涙を流しながら身体をクネクネとうねらせ出した。気持ち悪い、変態だ、狂ってる。
 さっきまでの、割とちゃんとした喋り方はどうしたというんだろう……この様子じゃあ、こっちのが素だと思う。

 というか、向こうが狂ってるせいで、私がコイツに対して怒るタイミングを逃した。
 リンネちゃんの仇を取りたいのに……。


【あはぁぁぁぁ…っ! ホントウははぁぁ…ホントウはキサマを…イヤ、よしておこぉ。ヤハクハヤクハヤクヤハク! キサマをコロして絶望をうまなければなぁぁ……!】


 そう言いながら、サナトスファビドは私に向かって体当たりをしてきた。
 さっきよりも速い一撃。
 私のガードは甘かったようで、お腹が凹んでしまった。
 さらに魔法を追い打ちで何発も撃ってくる。
 
 その魔法の速度も速い……だけど、前より避けやすい。
 なんというか、攻撃が雑になってる。さっきのは不意だったからいきなりもらっちゃたけど、素早さと防御に補助を最大までした今だと、ギリギリ避けられる。

 早くリンネちゃんの元に行きたいのに、今は…避けずに死んだふりするとか、危なすぎる。
 攻撃の歯止めが効かなくて、死んだと思われても攻撃を続けられ、本当にそのまま殺されてしまう。
 私が死んだらリンネちゃんを治せない。

 それにしても……なんで仲間を殺される(予定)の私が暴走せずに向こうが暴走してるんだ? 


【あああ!? あたらない…コシャクな…。このぉコウフンするとザツになるクセ……いい加減なおしたほうがいいな。シカタない、さっさとコロすためだ……】


 突然冷静になったサナトスファビドはピタリと攻撃を止め、その場に佇んだ。
 そしてすぐに謎の黒いような白いような光に包まれ、姿が小さくなっていき、人型となった。

 半魔半人…やっぱり、魔王の配下の幹部となると半魔半人化ができるのか。羨ましい。
 しかし…動きやすいこの姿になったということは、なにか仕掛けてくることは明白。

 相手の見た目は…まるで服装から盗賊と忍者の合いの子。
 蛇のように、目は黄色い眼の真ん中に細い黒目。
 口からは一定の間で二股にわかれた舌が出し入れされている。
 髪の毛の色は紫色と、ところどころ黒色。長さは男の人にしては長いだろう。

 腰には二本の短剣…ダガーが携えてあり、その鞘と柄から推測するに、相当な代物。

 そして、ところどころ出ている白すぎる肌には、呪毒にヤられた人のように真っ黒な文様が現れている。
 顔にも、首から目に、目から頭まで一直線に2本、黒くて太い線が通ってるしね。

 ……ジエダちゃんの両親を殺した敵……!
 リンネちゃん含む、今まで噛まれた娘の分まで、しっかりとコイツの容姿を記憶しなきゃ。

 ……人型になった今ならペラペラと話してくれるかもしれないし、確認だけしとくかな。
 

【その姿…もしや、元魔王の…!?】


 なんて言ってみる。
 違ったら恥ずかしい。


【…知ってるのか。そうだ、オレは魔王軍幹部ギフト。魔王様にギフトと名付けて頂いた】


 ギフト……。
 覚えておこう。生きて帰って、国に報告するんだ。
 信じてもらえるかどうかは別として。


【そうですか、160年前にいなくなったはずの魔王が何故? 貴方だけ復活したのですか?】
【……さあな。オレ以外にも復活したヤツがいるかどうかは定かでない。…だが魔王様…我らが父の封印はまだ解けていない…解かねばならぬのだ】


 もう情報収集はしないつもりだったけど、知れるなら知っておいた方がいい。
 どれもこれも重大な情報だ。
 つまりこいつ、魔王復活のために何かしらの行動をしてたと。
 その行動が、この人の性的欲求を満たすあの呪毒なのかはわからないけれど…。

 もう、こんなもんでいいだろう。
 そろそろ"アレ"をやるかな。
 逆に人化して攻撃しやすくなって良かったよ。


【わかりました、ギフト…。貴方が魔王軍の幹部だったとしても私は貴方に立ち向かわなければなりません! 勝てる勝てないは関係ないのです! …私のもう一人の主の! 仇を、とります。死んでください】


 これは半分本音。
 せめて、ここで私は一旦散るとしても、リンネちゃんが味わう痛み以上の苦痛をギフトに与えなければ。
 おもいっきり個人的な理由だけど。


「そうか、そうかぁぁぁあ! 貴様なんぞがこのオレを殺せるものか? やってみろ…やってみろがぁぁぁあっ!」


 念話ではなく、普通に口でそう言って、ギフトは私に向かってきたと思うと、目の前から消えた。
 
 そして________

 私の背から腹まで、二本の短剣が突き出してきた。
 闇のオーラを纏っている……上に、ミスリルでできている私の身体がその刺された箇所を中心にボロボロになってきている。
 この短剣は怖い……知れて良かった。


「さて…このまま…」


 かと言って、私も負けたわけじゃない。
 このまま作戦を決行しよう……自爆という作戦を。


【ギフト、あなた……物凄いスピードですね】
【ああ?】
【ああ、あいにく私、動きの早い方との戦いは慣れてまして。……捕まえました】


 私は手をうまい具合に操作。
 相手がスピードタイプだと、短剣やら動きやすい服装やらをみてわかってたから、その対策もいろいろしておいたんだよね。

 リンネちゃんとの日頃の鍛錬がよく生きている。
 
 だから、掴めた。
 掴めたということは…至近距離から爆発を浴びせられる!

 私はただサナトスファビドの攻撃を避けていたわけじゃない。その間に魔集爆の準備もしていた。
 だから自爆できる。そして手に回復魔法を唱えさせることで、私は自爆をしても生きることができる。

 格の差がありすぎて、殺せはしないだろうけれど、これが私なりの一矢の報い方_____!


【捕まえた……? ああ、この手か…こんなの____】
【……さよなら】



 私は自爆した。
 


【『自爆』を習得しました】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。 黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、 接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。  中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。  無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。 猫耳獣人なんでもござれ……。  ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。 R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。 そして『ほの暗いです』

【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいから、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜

久遠ノト@マクド物書き
ファンタジー
【ステータス1の最弱主人公が送るゆるやか異世界転生ライフ】✕【バレたら殺される世界でハイドレベリング】✕【異世界人達と織り成すヒューマンドラマ】 毎日更新を再開しました。 20時に更新をさせていただきます。 第四創造世界『ARCUS』は単純なファンタジーの世界、だった。 しかし、【転生者】という要素を追加してしまってから、世界のパワーバランスが崩壊をし始めていた。挙句の果てに、この世界で転生者は罪人であり、素性が知られたら殺されてしまう程憎まれているときた! こんな世界オワコンだ! 終末までまっしぐら――と思っていたトコロ。  ▽『彼』が『初期ステータス』の状態で転生をさせられてしまった! 「こんな世界で、成長物語だって? ふざけるな!」と叫びたいところですが、『彼』はめげずに順調に協力者を獲得していき、ぐんぐんと力を伸ばしていきます。 時には強敵に負け、挫折し、泣きもします。その道は決して幸せではありません。 ですが、周りの人達に支えられ、また大きく羽ばたいていくことでしょう。弱い『彼』は努力しかできないのです。 一章:少年が異世界に馴染んでいく過程の複雑な感情を描いた章 二章:冒険者として活動し、仲間と力を得ていく成長を描いた章 三章:一人の少年が世界の理不尽に立ち向かい、理解者を得る章 四章:救いを求めている一人の少女が、歪な縁で少年と出会う章 ──四章後、『彼』が強敵に勝てるほど強くなり始めます── 【お知らせ】 他サイトで総合PVが20万行った作品の加筆修正版です 第一回小説大賞ファンタジー部門、一次審査突破(感謝) 【作者からのコメント】 成長系スキルにステータス全振りの最弱の主人公が【転生者であることがバレたら殺される世界】でレベルアップしていき、やがて無双ができるまでの成長過程を描いた超長編物語です。 力をつけていく過程をゆっくりと描いて行きますので「はやく強くなって!」と思われるかもしれませんが、第四章終わりまでお待ち下さい。 第四章までは主人公の成長と葛藤などをメインで描いた【ヒューマンドラマ】 第五章からは主人公が頭角を現していくバトル等がメインの【成り上がり期】 という構成でしています。 『クラディス』という少年の異世界ライフを描いた作品ですので、お付き合い頂けたら幸いです。 ※ヒューマンドラマがメインのファンタジーバトル作品です。 ※設定自体重めなのでシリアスな描写を含みます。 ※ゆるやか異世界転生ライフですが、ストレスフルな展開があります。 ※ハッピーエンドにするように頑張ります。(最終プロットまで作成済み) ※カクヨムでも更新中

25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。 社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。 頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。 オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...