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262話 リンネちゃんと特訓でございます!

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「あぁ…癒された」
「そっか!」


 お母さんの顔がさっきより楽そうになった。これくらいでお仕事するのが楽になるならいくらでも抱きしめてもらって構わない。お母さんの横で寄り添うように丸くなっていたケル君が思い出したように念話をし始めた。


【そういえばノア、一つ聞きたいことがあるんだぞ】
「あら、なーに?」
【オーニキスって宰相の人、好物ってなんだったのかゾ?】
「好物? たしかがっつりお肉だったかしらね? それも脂身の少ないの。モツを好んで食べる趣味だったわ」
【亀料理が好きだって話は聞いたことあるかゾ?】


 ケル君のその言葉にお母さんは首を傾げた。


「初耳よ?」
【そうなのかゾ】
「少なくとも、私とパパは食べてるとこ見たことないなぁ」


 ギルドマスターもお母さんと同じようなこと言っていたけれど、オーニキスさんは本当に亀料理が好きだったのかしらね? 


「そもそも亀料理なんて出すの、如何わしいお店が並んでる通りか、男の人と……えーっと、いちゃつきたい女の人くらいじゃないかしら。あの真面目なオーニキス様が女遊びしてるとは思えないし……」
「とりあえず最低でもこの街全体を捜査しなければならないとは思いますが、そういった場所を調べる際はちょっと念入りにしてみてはどうでしょうか」
「そうね。情報ありがとう! ところで、亀料理が好きってどこで知ったの?」


 そう聞かれたケル君はお母さんに、自分の鼻で嗅いだことと本人が亀料理が好きだと言っていたことを話した。私や双子達もその話を聞いたと証言する。


「ベス譲りのケルの鼻なら確かね。……もしかして女遊びを前日にしたことを悟られないための言い訳だったりしない? それも私としてはあまり想像できないけど。なんにせよ、食べたということは事実みたいね」
【なにかの手がかりになればいいんだゾ】
「そうね、ありがとうケル。じゃあ私、そろそろ戻るから」


 お母さんはもう一度私たち全員のことを強く抱きしめ、屋敷の戸締りをしてからお城に行ってしまった。お母さんの疲れ切った様子をみると、やっぱり私もなにか協力したくなるわね。


「うーん、本当にオーニキスさんどこいったのかなぁ?」
「もし今、新しい魔王軍幹部が現れたらどうしよう……」
「私達にも関係がある手前、しばらく数日家を空けるようなことはできませんしね……」


 ガーベラさんみたいにダンジョン攻略したりするのがこういう場合はベストなのでしょうけれど、あいにく、ダンジョンはクリアするより見つける方が難しかったりする。探してる暇なんてないし。
 そう考えると、たった一人で2つも見つけたガーベラさんってすごいわね。私達の場合は噂で聞いたところと、オーニキスさんに紹介してもらったところだから自力で見つけてなんていないし。


【じゃあアイリスの特訓でもするかゾ】
「おや、朝にオーニキスさんの件が終わった後にしようと決めたではありませんか」
【よく考えたら、アイリスがリンネみたいに早くなるだけなら二人だけでできるゾ。オイラ留守番しててあげるからみんなで外で特訓してくるんだゾ。いい機会だしロモンも杖術を鍛えるんだゾ】


 ふーむ、たしかにそれはいいかもしれない。ケル君一匹で家を任せても、これだけしっかりしてればもう大丈夫だろうし。仮に兵士さんが来たとしても受け答えはできるでしょう。


「それではお言葉に甘えましょうかね」
「いいのケル、暇じゃない?」
【オイラは本を読むか寝てればいいんだゾ】
「そっか!」


 もし兵士が来たらその兵士を連れて私達が訓練してる場所まで来てくれるらしいので、私がまだ盛んに特訓してた頃に使っていた城下町付近の森の中の広場を練習場所にすることにした。
 訓練するための服に着替え早速その場に向かい始める。練習用の木の剣なども久し振りに持ち出した。何より一番大きいのがリンネちゃんの動きやすいらしいお腹を開けた格好。これが見れる事よね。やましくない服装であるはずなのに露出度が高くて非常に素敵。そして脚と腹筋は前よりもスポーツ少女の基準でかなり発達してて……健康的にエッチではっきり言って鼻血出そう。


「ねぇ、そういえばさ」
「どうしたのロモン」
「アイリスちゃんって、お姉ちゃんがその服着てる時、やけに見つめてる時間が長い気がするんだよね」
「気のせいじゃないかな?」
「そうかな? 特にお腹周りなんだけど」
「そうなの?」


 しまった、最近胸とかお尻とかじっくり見つめてもなにも言われないから慣れてきたのかと思ってだから油断してた。ロモンちゃんの勘が久しぶりに発動してる……。ここはあれね、下手にごまかすとおかしなことになりそうだから事実を交えつつ嘘をつこう。


「いえ、いつ見ても健康的な身体をしているなと思いまして」
「なるほどね!」
「ん? どうなの、ロモン」
「うん、アイリスちゃんのいってる通りだと思うよ。私と同じでたくさん食べて、お腹が膨らんだり萎んだりを繰り返してるのにスリムだしさ」
「痩せてるのはロモンだって同じだよ」
「痩せてるのとスリムなのは違うんだよ」
「んー?」
 

 なんとか誤魔化すことには成功し、気づけば練習場所にたどり着いていた。前から特になにも変わってない。リンネちゃんは一人でも結構来るらしいから管理してたのかも。
 リンネちゃんはそこらへんの木の下に荷物を置いて、手をパンと叩いた。


「じゃあ、なにから始めようか! んーっと、まずロモンにはちょっと待ってもらって、アイリスちゃんにはまず、ぼくとお父さんが日頃からやってる鍛錬の方法を教えるよ。それがある程度教えられたならロモンの相手をしよう。それでいいかな?」
「はい、お願いします」
「任せるよお姉ちゃん!」


 というわけで特訓が始まった。とりあえずやりやすいように、ロモンちゃんとリンネちゃんと同年代の姿になっておく。それからリンネちゃんは手取り足取り特訓方法を教えてくれた。初日ということで一部だけだけど、日と私のこなし具合によって増やしていくらしい。
 初回だけれど、リンネちゃんが練習していたため知っていたものや私とリンネちゃんの合同の特訓の中で行ってきたものが含まれている。案外、すんなりこなすことができるかもしれない。
 そう、思ってた。


「ぜ……は……」
「きつい? 大丈夫?」
「だ、だいじょぶでふ……」


 こんな訓練してたなら、そりゃああんな超高速移動できますって。前から一緒にやってたものと、見てきていたものは余裕でこなせたけれど、初めて見る素早く動く特訓というのが本当にきつかった。もうしばらくやってたら、久しぶりにステータスから素早さの補正がかかったって連絡が来そうね。やらなくていいならやりたくないくらいきついけど……でもやるって決めたからやるわ。強くなることは確実だしね。


「ロマンもやってみる?」
「いや……いい。よくお姉ちゃんそんなのこなせるね?」
「そう、普通じゃない? ぼくもできるんだから、ロモンもできるって!」
「た、たしかに理屈ならそうかもしれないけど……」


 ロモンちゃんはどっちかっていうと、後方支援タイプだから鍛える必要ないものね。……でも、お腹と脚がいい具合になったロモンちゃんも見てみたい気がする。いや、それは別にリンネちゃんの髪を伸ばせばいいだけの話なんだけど。


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