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55話 大会当日でございます!

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 昨日は仕事は一切せず、すぐに休んだ。
 たっくさん、私は2人に可愛がってもらったんだよ。

 そして、今は当日の朝。
 2人は少し早めに起きて準備をしてる。朝食もすでに食べ終わったしね。


「あ、あ、アイリスちゃん、今更だけどさ…緊張するね?」


 ロモンちゃんが、いつもより少し暗めな声でそう言った。言葉通り、かなり緊張しているように見える、


【そうですかね?】
「す…するよぉ……」
「ふふ、ロモンもアイリスちゃんも、ぼく、全力で応援するからね!」


 って、リンネちゃんは言うけれど、きっと、来週そう言われるのはリンネちゃんの方なんだよね…。
 緊張でお腹くだしたりしなきゃいいけどね。


「さ、準備ができたね、いこう!」
【まだ集合規定時間まで1時間ありますが…まあ、行っても問題無いでしょうね】
「う……うん、い、行こう!」


 私達3人は部屋を出た。
 宿屋の店主さん達ご家族や、他の部屋に泊まっている冒険者さん達は私達に声をかけてくる。
 やっぱり、前回決勝までいった相手が私達の対戦相手だとみんな把握しているみたいで、私の実力を知っている店主さん達以外は、諦めるなとしか言わなかった。

 どうせみんな、スベルとかいう名前の方にかけるんでしょう? 損確定ですね。ふふ。

 ロモンちゃんの緊張を、他愛の無い話でほぐしているうちに、割とすぐにコロシアムに着いてしまった。
 コロシアムで受付を済ませたら、後は一回戦を待つのみ。リンネちゃんとはここで別れた。


「うぅ…緊張するよぉ」
【大丈夫ですよ、頑張って特訓したでは無いですか】
「確かにそれはそうだけど…」
【そうですね、緊張するなら、もう一回、大会のルールを確認しますか?】
「うん」


 大会のルールはこう。

・制限時間5分間で戦う。先に相手を戦闘不能させた方が勝ち。5分間たった場合、HPが残っている方が勝ち。
・相手の魔物を基本、故意に死なせてはいけない。
・魔物使いに反動が出る『魔人』の特技使用禁止。
・武器の持ち込みは可。
・魔物使いの直接的な戦闘の介入は不可。
・魔物使いの通常補助魔法、回復魔法の戦闘中、戦闘前の使用不可。

 というもの。
 過去に何件も死んでしまった魔物がいるらしい。ま、魔物だしね。しょうがないね。
 私はどんなに傷を負っても完全回復できるけどね。


「あ…アイリスちゃん…が、頑張ろうね?」
【ええ、勿論。あ、何か飲み物でも飲みましょうよ】
「うん!」
 

 私達は出店でジュースを買い、飲みながら大会開始の時間を待っているた。
 すると、私達の元に1人の初老であろうおじさんが、1匹の氷のような色のトゥーンゴーレムのオスを連れて近づいてきた。
 

「君が…ロモンとアイリスかな?」
「は、はいっ…そうです」


 そう、この人がスベル…さん。確かね。
 この街の外から来た、Bランクのパーティの冒険者の一員だよ。


「まあ…宜しく頼むさね」
「はっ…はい、こちらこそ」


 スベルさんはそれだけを言うと、身を翻し、その場から去ってしまった。その間……あのトゥーンゴーレム……おそらく、幼体化させられているスヒョウゴーレムなんだろうけれど、私の事をチラッチラッと見てきたかと思いきや、私にこんな念話を送ってきた。


【ギミ…ヂャワビー…ドドー】


 はっきり言ってなんて言ってるかわかんないけど、多分、私の事を可愛いって言ったんだろう。
 私ってば、ゴーレムからしたら美人なのかしらね?
 美人でも人間じゃ無いのはなぁ……。人間…ワーゴーレムになっても美人かしらね? それだと良いのだけど。


◆◆◆


 ロモンちゃんが私の頭をなでたり、私がロモンちゃんに擦り寄ったりしていたら、あっという間に時間になってしまった。
 この部屋にはモニターのような水晶がところどころにあって、そこから外のコロシアムの風景が観れるようになってる。
 

《さあ! 始まりました第___回、魔物武闘大会! 司会は私、カルサイト・スピーチャがお送り致します!》


 そう、ちょっとチャラい声で司会が入る。
 画面からでも十分な観客の歓声も聞こえる。
 見ている側ってのは、こういうので気分がこうようするんだろうけど、私達、特にロモンちゃんにとっては不安と緊張が募るだけ。
 ….…ロモンちゃんはここに来てからの4回目のお花摘みに行った。


≪それでは早速、本日第一回戦! _____≫


 第一回戦はおぼっちゃまというか、いかにも金持ちといういか、そんな感じの少年vs.その人のパーティ自体はCランクなのにCランクの下の魔物を率いてるカリゲンとかいう好青年。

 おぼっちゃま風の少年の魔物はピヨール。Eランクの下の魔物。
 正直、私がロモンちゃんと出会う前のトゥーンゴーレムの時でも勝てたと思う。

 そしてカリゲンとか言う人の魔物は、イタチのような魔物、メタルミミンカー。
 普通のミミンカーとは違い、鋼色だね。
 きっと、防御と素早さが高いタイプだ。

 ま、結果は言うまでも無いよね…。
 カリゲンとか言う人の圧倒的勝利だよ。

 ありゃりゃ、おぼっちゃま、悔しそうに地団駄踏んでる。でも、優しくピヨールを抱き上げて退場していった。
 魔物に対する愛は持ってるみたいだね。


≪勝者! カリゲン&ミクック!!≫


 そう、司会者が言った。会場は一気に湧き上がっている。お花摘みに行っていたロモンちゃんが帰ってきた。


「はふぅ……」
【お腹の調子はどうですか?】
「ん、もう大丈夫! ところで、どっち勝ったの?」
【ミクックとか言う、メタルミミンカーを連れた青年の方です】
「そっか…あ、始まるみたいだね、次!」


 ロモンちゃんがそう言ったと同時に、係員さんに声をかけられた。


「ご準備をお願いします。ロモン選手の入場口はあちらです」
「はい、わかりました!」


 そう言いうと、ロモンちゃんは私の手を引きながら、案内された場所へと向かった。
 その場所は通路のようになっていて、狭かったけれどちゃんとモニターは着いてた。
 というか、歓声がすごい聞こえる。うるさい。


≪それでは第二回戦_____≫


 二回戦目は互いにだいたい、16歳程度の男の人だった。

 緑色の服を着ている方は、ボスゴブリンを。
 焦げ茶色の服と、白い帽子をかぶっている方はココモスというDランクの魔物を使っている。

 上中下の段階も同じだ。

 結局、ボスゴブリンが5分粘って、ギリギリ勝った。
 正直言おう、つまらない試合だよ。


≪勝者、グリテ&ボフトン!≫


 グリテとか言う人が、私達が居る通路に、疲れ果てているボスゴブリンを…まだ幼体化はできないのか、肩を組みながらやってきた。
 ロモンちゃんは自分が振りまく魅力に気付いてないのか、安易にその人に声をかける。


「お疲れ様でした!」
「おっ…おお!? お疲れ様……。頑張って」
「はいっ!」


 アナウンスで入場しろと言われたから、私達は入場を始めた。
 グリテとか言う人は私達がコロシアムに出るまでずっとロモンちゃんを見つめてたのは小石視点で見ていた。
 見る分には、まだいい。

 ……と、対戦、対戦っと。
 


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