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53話 お二人にばれたのでございます…

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 私達がEランクの冒険者となってから1週間がたった。
 大会まであと数日。
 お金は順調にたまっていて、今は3000万ストンはある。

 レベルの方は……なんだか、すごく進むのが遅い。
 と言っても、あと4レベルで進化できるというところまで来てるんだけどね。

 ロモンちゃんとリンネちゃん達の仕事は超順調!
 毎日Dランクの依頼をあっという間にこなしてる。余裕のある日はその仕事が終わったあとに、F、Eランクの依頼もやってるの。

 そうそう、ジエダちゃんは3日前、冒険者に復帰できたんだって。
 ギルドマスターと私は、まだ早いんじゃないかって言ったんだけど、私の回復魔法がよく効いてるから大丈夫だと彼女は言っていた。因みにジエダちゃんは単独の冒険者で、Eランクらしい。

 そして最近、私はロモンちゃんとリンネちゃんに対し、始めた事がある。それは_____
 


「うぁー! イタタタ……。気持ちいよーアイリスちゃん」
【そうですか、それは良かったです】
「流石、アイリスちゃんだよね。えーっとセイタイ…だっけ、これ。痛気持ちいね」
【ええ、そうでしょう?】


 そう、整体マッサージ。
 ある依頼遂行中に、リンネちゃんが無理してすごく思い岩を退かそうとして、その時に腰を変な風にやっちゃったんだ。
 回復魔法をして、その腰自体は治ったんだけど、肩こりが起きちゃったみたいで…。それが発端で私は整体マッサージを二人にやり始めの。

 なんで整体を覚えてるんだろ、私。前世なんだったの?
 本当にさ。


「んーっ! 良かったよ! ありがとね、アイリスちゃん」 


 ロモンちゃんは私の頭を撫でる。
 そう、これも最近二人の中でブームらしい。
 二人曰く、これで嬉しがっている私が可愛いのだとか。

 撫でられたりするとつい、目を薄めて首を少し左右に少しだけ動かしちゃうんだよね。

 私が嬉しがっていると、何やらロモンちゃんがリンネちゃんに相談事を始めた。


「ね、ね、この間ね、お姉ちゃん」
「どうしたの?」
「この前ね、魔物のほっぺにキスしてる魔物使いさん見たんだけど、私もやってみていいかな?」


 ウゥォッシヤァッキタァァアアァァッッ!! 来い、来い、いや、来て、おねがいっ! お願いします!
 キスミープリーズですよ!


「いいね~」
「でしょー! アイリスちゃん、いつもありがと」


 そう言いながら、ロモンちゃんは私の頬にキスをする。
柔らかい唇が、私の固い皮膚に触れた。
 感覚なんてほとんどわかんない。けど、確かに柔らかかったです! やった、天にも昇る気持ち。


「…ぼくもいい?」
「いいんじゃないかな?」
「えへ、では…アイリスちゃん、ありがとね」


 今度はリンネちゃんが私の別の頬にキスをした。感触はほぼロモンちゃんと同じ。
 ふへへ、この2人のチューは破壊力が高いね。ミスリルである私が溶けそうになる。


「どうかな? アイリスちゃん、動かなくなっちゃたけど」
「…喜んでるだけみたいだね」
「可愛いね、アイリスちゃん」
「ねー」


 後から聞いた話だと、その後20分間、私は硬直したままだったみたいなの。
 だから、これは今後は特別な時だけだって、ロモンちゃんに言われちゃった………。グスン。


◆◆◆


 夜、私はいつも通りに惜しみつつもリンネちゃんの抱きつき拘束から抜け出して、冒険者の店でテントウムシを売ってから天の道のダンジョンへと向かった。

 ところで、こんなに私がテントウムシを持ってきてテントウムシの価値が下がらないのか、と、店主さんに聞いみたところ、テントウムシは需要が高いから問題ないらしい。ふーん。

 それはともかく、こんとこ、あんまりランクB以上が見つからないんだよね。
 その代わりなのか、最近、私は魔流の気をさらなる段階へと進めることに成功したの。それは手を作り出すこと。
 私の本来の手が命令によって別行動してる間、魔流の気で一時的に手を作り出すんだよね。
 まだ、不完全なんだけど…仮に完成したら新たにスキル認定されるんじゃないかな? そんな気がする。

 それにしてもこのダンジョンは私にとってあまりにも簡単なものになっちゃって、最初の高揚感とかはもう既にないんだよね。
 レベルが大分上がったから……っていうのもあるんだろうけど、大体の敵の最適な攻撃手順とかを把握しちゃったからかな、一番の理由は。

 まあ、そもそもここにはお宝目的とか地位名誉目的とかでいるわけじゃないし、別に構わないんだけどさ。

 それと……たまに他の冒険者とも会うね、最近。

 と言っても、大抵の人は既に知り合いの冒険者さんだったから、私が襲われる事とかはなかった。
 そういえば『紅のヘリオトロープ』の一行もこの1週間で2回も会ったね。
 あれだけのことがあったのに、まあ、よくトラウマにならずに済むもんだよ。

 ……と、今日も大量だね。

 そろそろ家に帰ろう。私はワープして城下町戻ってきた。そして、いつもの手順で隠密を使って街の中に入ると。

 で…宿の前まできたんだけど……思わず、目を見張ってしまった。ほぼ目が無いようなものだけど、私。

 私達の部屋の明かりが灯ってる……!?

 ど、泥棒でも入ったかな? いや、入ったとしてもあの2人が気づかないわけ無いし……もしかして、暴漢目的? いや、なら尚更、2人は強いからそう簡単には……。
 いや、でも、もしこれが格上だったり、催眠の技を持っているタイプの人だったら…。

 もし、なんでもなかったにせよ、私が居ないってことがバレて_____。

 そう考えてたんだけど、私は窓からカーテンの隙間から外を覗いたリンネちゃんと目があった。
 良かった、何にもなかったみたい……。あの2人にはね。


◆◆◆


「で? なんで私達に何も言わずに外に出てたの?」
【……ごめんなさい】


 私は今、怒られています。ロモンちゃんに。
 ロモンちゃん、怒ると怖いです。
 

「謝って欲しいんじゃないんだよ、アイリスちゃん。私はね、なんで何も言わずに外に出てたかを訊いてるの」


 やばい、怖い。マジ怖い。
 なんだか母親に怒られてる気分だ。
 理由…理由…そうだな、お金のことは言えないから……単純にレベル上げがしたかった事にしよう。


【その…レベル上げをしようかと思いまして】
「あー、通りで最近、ぼくたちのレベルが勝手に上がってたんだね…。お仕事頑張ってるからだと思ってたけど、アイリスちゃんだったのか」
【滅相もない】

 
 私はただひたすらに謝った。
 
 ちなみに、なんで私が居ないかわかったかというと、リンネちゃんがトイレをするために起きちゃったらしい。
 それだけでなく、ロモンちゃんは前々からなんか怪しいと思ってたんだって。
 
 ロモンちゃんは勘が鋭いからともかく、トイレは計算に入れてなかった。しくじった。

 そして、なんとか、お金に関することは訊かれずに済んだけれど、ついにはロモンちゃんは泣き出してしまった。


「ひぅっ…ぐすっ…本当に心配したんだよ?」
【はい、申し訳ございませんでした】
「これからは、出かける時は前もって一言、ぼく達に言ってね、アイリスちゃん」
【はい、そうします】


 私が何回目かわからないくらいの、ごめなさいを言った時、ロモンちゃんとリンネちゃんは私に抱きついてきた。


「むぅ…罰として、大会が終わるまで深夜の外出はダメだからね」
「そうそう、アイリスちゃん」
【はい、了解しました】


 大会が終わるまで深夜の外出は禁止になっちゃった。
 まぁ…でも……私ってば、愛されてるなあ。ふへへ。



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