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38話 ダンジョンに単独潜入でございます!
しおりを挟む私は何故か入りやすいように土が盛り上がっている、いかにも入り口だと言わんばかりの場所の奥をどんどんと進んでいく。
どうやら、地下に降りてるみたい。
道が下り坂になってる。
この洞窟内は光源がないはずなのに何故か明るい。
やっぱりここがダンジョンであってるみたいだね。少し不安だったんだ。
こういうの、ファンタジックで心がエキサイトするよね。
それにしても、道幅が中々にひろい。
だいたい、大人の男の人が両手を広げて5人並列に並んでいるぐらいの幅はある。
縦幅は大々3メートルくらいかな?
入ってまだ20秒くらいたったころ、私は魔物がいないか大探知を使ってみた。
お、いるいる。
………だけど反応的に見てもFランク1匹か。
大したお金と経験値にならないね。
私はその反応がある場所を目指し、この一本道を再び歩き始める。
ほんの少し進んだところで、魔物が居た。
キチィィィ_____!
勿論、自然界に相手が構えるのを待つとか、そんな概念は存在しない。
そのFランクであろう魔物は、私めがけて飛んできた。
その飛んできた魔物を、私はこのダンジョンに入ると同時にもとの大きさに戻らせた身体を仰け反り、回避して掴んだ。
その掴んだ何かをそのまま地面に叩きつける。
【ヒュージレディバを倒した! 経験値11を手に入れた】
そのように、文字が頭の中に浮かんでくる。
ヒュージレディバ、高さ60cmほどの、でかいてんとう虫だ。
地球と同じように、この世界のてんとう虫も羽根の模様は綺麗で丈夫だから、ヒュージレディバの羽はFランクの上にしては高く売れる。
なーるほど、だから天の道のダンジョンか。
てんとう虫は漢字で天道虫と書くから、天の道ね。
なんか強そうな名前だから、変に心を構えちゃったじゃん。
ヒュージレディバの事だったんだね。
地面に打ち付けたヒュージレディバの死体を拾って袋に入れ、再び歩き始める。
すると、今度は奥からヒュージレディバ3匹が飛んでくる反応が!
飛んできたヒュージレディバ3匹に、『魔流極波』を放ち、撃ち落とした。
『魔流極波』とは、魔流波の進化系みたいなもので、従来の魔流極波ならば撃ったら直線的に飛んでいくだけだったけど、この魔流極波はなんと敵を追尾するんだ。
いわゆるホーミング弾だね。
撃ち落としたヒュージレディバをさっさと回収し、また奥へと進む。
ダンジョンに入ってから、すでに20分は経過したかな?
すでに合計7匹のヒュージレディバを倒して回収してる。
お値段にしておおよそ18200ストン。
うはははー! ボロ儲け。
でも全然、武器を2つも買うには足りないんだけどね。
頭の中でほくそ笑んでいると、大探知にヒュージレディバとは違う反応が引っかかった。
大体、Eランクか。
私は特に姿を確認せず、魔流真砲を放ちそのEランクの魔物を撃墜した。
……ん? ちょっと生きてる。
でもほぼ瀕死みたいだし、私はその撃墜した魔物の元へと歩いて行った。
そこに居たのは、縦85cmほどの黄色いヒュージレディバ。
確か、こいつの名前はポイズナレディバだったっけ? Eランクの中の魔物だね。
何か強い衝撃を与えると、黄色い液体を噴出する。
その液体には毒が含まれてるんだよね。
案の定、そのポイズナレディバは身体のお尻にあたる部分からドロッとした黄色い液体を噴出していた。
私が毒になることはないけれど、なんかバッチいからその黄色い液体に触れないように気をつけながらとどめを刺して、袋に放り込んでおいた。
その後も特に大きな問題もなく一本道をひたすら進んでいく。
ダンジョンに入って1時間半。
ここまで倒したのはヒュージレディバ計31匹、ポイズナレディバ計5匹。
それと、ファイレディバという炎魔法を使うEランク上のレディバが2匹。
ここまでのおおよその合計金額は推定110000ストンって言ったところかな?
110000ストンあるならば、今のリンネちゃんの剣よりは、いい剣が2本買える。
それにしても……そろそろ袋が満タンなんだよねぇ……。
しょうがない、帰ろう。
来た道を戻るのは、3時間もかからない。
なぜなら私は、本来ならば30分程度で進める距離を、3時間もかけて進んでたからね。
すこし、恐る恐る進みすぎたみたい。
どっちにせよ、次この地点に来るまでに30分掛かることは確か。
転移魔法陣と、袋をもう一つ欲しいものだね。
転移魔法陣とは、自分がまた来たい場所に貼り付ければ、いつでもそこにワープできてその場から冒険を再開できる便利アイテムの事。
お値段は2枚セットで60000ストン以上もする。ものによるけど。
さらには2枚以上貼れない。
3枚目を貼ると、1枚目の効果がなくなっちゃう。
ただ、転移魔法陣は3回までなら、貼った人ならだったら剥がして再利用できるんだよね。
それに、貼った人に触れているものであれば一緒に転移できるし、貼った転移魔法陣は貼った本人以外には見えない。
因みにスペーカウの袋は、容量にもよるけど最低で10000ストンで買える。
それに、スペーカウの袋を他のスペーカウの袋に入れるとその入れたスペーカウの袋の分、入れられたスペーカウの袋の容量は増える。
私の推測だと、ウォルクおじいさんが私にくれたスペーカウの袋は40000ストンのもの。
だから私はそれと同じ40000ストン分のスペーカウの袋が欲しい。
………結局は今回、手に入れた分のお金全部を使っちゃうことになると思う。
思わず舌打ちしたくなっちゃうね。
それは明日また稼げば良いとして、売却はどうしようかな…。
魔物のお使いに応じてくれる冒険者っているかしらん?
報酬はどのくらいが良いのかなぁ…。
とりあえず、城下町に帰ってみなくちゃわからないか。
30分かけてダンジョンを出て、10分かけて城下町前へとやってくる。
その後、隠密を使って、誰にもばれずに静かに街内に進入することができた。
私は隠密を使ったまま、ギルドを目指して歩き、着いたからそのまま隠密状態で入る。
今は午前12時前後。
だけど酒やらなんやらを飲み食いしている冒険者や、依頼掲示板を覗いている冒険者も居る。
あらまぁ、まだ10歳くらいのお使い冒険者も居るじゃん。
大丈夫なのかな? こんな時間に外に出歩いて……。
それに周りの冒険者は皆、黙認してるみたいだし、受付のお姉さんも心配そうな眼差しでその子を見ているものの、注意はしようとしない。
なにか理由があるのかなぁ?
そんな他人事は私が介入したところで、どうにかできる訳じゃないんだし、ここは気になるのをグッとこらえて、私がすべきことを遂行しよう。
私は金髪の受付嬢の目の前よりすこし離れた場所に立つ。
あ、よく見てみると、昼間とは違う女の人だね。
それにしても、なかなか気づかれない。
隠密ってすごいね。
でも気づかれなきゃ依頼もできないし、さっさと念話で話かけよう。
【あの……依頼をしたいのですが……】
私が受付嬢に向かって念話を送ると、受付嬢はかなり驚いた眼差しで私を見つめてきた。
「なっ! なんでこんなところにゴーレムでいやがるっ」
「は、ゴーレムだって? いつのまに」
「うわ、本当だ」
念話をした途端に隠密が解けて、食事をしていた冒険者達に気づかれちゃったみたいで、みーんな敵意丸出しで私の周りを半径4メートルくらいの円で囲んだ。
中には既に武器を構えている冒険者も居る。
【……私は依頼をしに来ただけなのですが……なんでこんなに敵意をむき出しにされるのでしょうか? 魔物が依頼したことがあると訊いたのですが?】
そう、全体に行き渡るように強く念話をしてみたところ、私を囲んでいたおよそ12名程の冒険者は目を丸くして、驚いた様子で私の方をじって見ている。
そうだった、私ってばゴーレムどころか魔物の中でも異様に流暢に念話ができるんだったね。
驚かれるのも無理はないか。
しばらくの沈黙の後、受付嬢が念話で私に話しかけてきた。
【ご依頼……でしょう……か……?】
【あ、私は言葉がわかるので、念話をわざわざお使いにならなくても結構ですよ? MPが無駄になります】
受付嬢はさらに目を大きく見開いている。
周りの冒険者達もからも驚愕しているようだ。
「ほ、本当にわかるのですか?」
【ええ、わかりますよ】
そんな疑いの言葉に、即答してあげた。
すると、受付嬢は軽く私に頭を下げてきた。
「…お客様、申し訳ございませんでした」
【いえいえ、慣れてますから。そんなことより、依頼は私でも受けられるのですよね?】
いかにもこちらの機嫌を探っているよつな、そんな心配そうな顔をしている受付嬢を落ち着かせるために、私は手で『お構いなく』という意味のジェスチャーをする。
興奮気味だった受付嬢は、一呼吸を置き、私の問いに答えてくれた。
「はい、大丈夫です……ご依頼内容は?」
【お使いです。私は見ての通り魔物ですから、物の取引が難しいのです。ゆえに隣の『冒険の店』で買ってほしい物と、売ってほしい物がございます。売ってほしい物を売却した値の五分を報酬として払いますので、どなたか受けてくださる方はおりませんでしょうか?】
再度、ここにいる冒険者全員に伝わるように、強く念話をする。
しかし、誰からも返事が返ってこない。
おかしいな……。
「そ……その、お客様、五分とは一体……」
あ、そうか。
忘れてた、この世界で"ぶ"って数字の単位は数術専門の学者しか使わないんだった。
ロモンちゃん達とは普通に使ってたから、ついついいつもの感覚で話してしまった。
【五分とは、20分の1のことでございます】
「に…20分の1!? えっと…ええっと……」
【10分の1のさらに半分の事ですよ。"100"だったら"5"ですね】
冒険者の皆さんから、さらに『おぉ~』という声が聞こえてくる。
なんとか理解してもらえたみたいだね。
【どなたか…お願いできませんか?】
「はい…僕いきます」
手を挙げたのはなんと、先程の10歳の子供じゃないか。
私としては子供でも構わないんだけど、やっぱりなんでこんな時間に子供が出歩いてるか気になる。
【ええ、お願いします……が、何故このような時間に子供が……危なくないのですか?】
「……いや、この子にはどうしても金を稼がなきゃならん理由があるんだ。ゴーレムさんよ、そこはあまり触れてやんねぇでくれねぇか?」
今昼、私達に話しかけてきたおじさんではないか。
その人が男の子のかわりにそう答えた。
触れないほうがいいならば、触れないでおこう。
【……わかりました。そのことは不問としましょう。坊や、お願いしますね?】
「うん!」
私はその子を連れて、冒険者ギルドを出ようとした。
でも、一つ言わなきゃいけないことがあるから、私はドアの前で立ち止まり、また強く念話をしてこう喋った。
【あ、そうそう。どうか、私のことも不問でお願いします。また、ここで見聞きしたことは他者には話さないこと、仮に私を昼間に見かけても話しかけないこと。よろしいですね? お願いしますよ、皆様】
そう、威圧感たっぷりで。
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