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4話 女の子を虐めるのは許さない
しおりを挟む恐る恐るその声がする所に近づいて、木の後ろから私はその現場を見てみたんだ。
緑色の服を着た髭面で長身男の人と、茶色いジャケットを着たオールバックの男の人……あとそれと長い水色の髪が綺麗な、可愛い女の子か。
それと女の子の横には、青っぽい犬みたいなのが居る。
髭面男とオールバック男が二人で並んで、女の子に何か言いながら、ゆっくりと迫ってるね…。
女の子は"イヤイヤ"と首を振りながらたどたどしく、足を震わせながら後ずさりしてる。
あ、その女の子を守るように、青い犬が髭面に飛びかかった!
それで、髭面はポケットからナイフを取り出して飛びかかってきた犬の頭を素早く地面に押さえつけて……犬の背中にナイフを刺した。
血がどくどくと湧き水のように出てる。
「いやーーっ!? ケルっ! ケルっー!?」
女の子が泣いちゃったよ…ケルってのは多分あの刺された犬の名前だよね。
というか私、この国の言葉理解できたのね。
……その様子を男二人はなにが面白いのか、ニヤニヤしながら泣き叫ぶ少女を見ている。
んで、オールバックの男の人が、女の子を近くの木に無理に押し付けて……あ、あの人もナイフを懐から取りだしたよ。
それで、オールバックが片手で女の子の口を塞ぎながら髭面が女の子の服をナイフでビリビリビリって……。
そして、オールバックが首筋を舐めようとして口を近づけて、髭面が胸をまさぐろうと手をわきわきさせて……………。
あぁ、もう見てられないわー。
こんな現場見せられて無視できるほど私はクズじゃないし。
まだ人間の心残ってるし。
私は気づいていたら、自分の持っていた棍棒を昨夜の練習通りに、ブーメランのように、オールバックにめがけて全力で投げていた。
ブーメランは私が期待した通りの軌道でオールバックめがけて回転しながら飛んでいき_____
オールバックのこめかみに、ドゴッといい音がするほどにクリーンヒットした。
そこから血を吹き出してオールバックは倒れた。
まぁ、威力は加減したし、死んではいないでしょう。
女の子は目を見開いてこちらの様子を、髭面は口をポカーンと開けて驚きながらこっちを見ているね。
「こ、棍棒? だ、誰だ? 出てこい!」
私はそう言われたからお望み通り、木の後ろから出てきてあげたよ。
さっきのゴブリンコンビから奪った棍棒を持ってねー。
また投げれるように。
ちなみに投げたやつは、昨日最初に手に入れた棍棒だよ。
でもなんでだろ、お望み通り出てきてあげたのに、二人ともさらに驚いた顔してる。
おっかしいなー? なんでだろなー?
「トゥ、トゥ……トゥーンゴーレムだとぉっ!?あの棍棒を投げたのはトゥーンゴーレムだと言うのか!? んなバカな。トゥーンゴーレムは知能がほとんどないはずだ。 まさか、お前の仲間か?」
髭面にそう言われたからか、ブンブンと女の子は首を振った。
てか、知能低いってヒド。まるでこっちが聞こえてないみたいに言うんだね。
私のプライドは酷く傷ついたぞ? ゲス野郎よ。
「はは、だよな……普通あんなことできるわけないもんな……おい、誰か居るんだろ? 出てこいってのっ!」
まだ変なこと叫んでるよ…。
だからそれ投げたの私なの、もう一つ棍棒見せてあげれば信用するかな?
私は持っている棍棒を自分の頭の上に、見せびらかすように掲げた。
「なんで棍棒を掲げ……やっぱりこのトゥーンゴーレムが棍棒を投げたのか……!? はは、ド低ランクのモンスターめ、ぶっ殺してやる。この経験値だけ落とす土塊め。…魔物は駆逐しねぇとな」
なるほど、それがトゥーンゴーレムの共通認識なのね。
通りで魔物がよく襲ってくるわけだ、納得。
髭面はナイフを構えながら私に近づいてきた。
かくいう私も棍棒を剣のように構える。
「はっ! 土塊が、経験値の肥やしになりな!」
そう言って、おそらく彼の射程範囲からナイフを私に振り下ろしてきた。
私はそのナイフを持っている手をタイミングを合わせて棍棒でナイフを弾くように意識しつつ殴り飛ばす。
「っー……なんだこいつ!? 本当にトゥーンゴーレムか?」
そんなこと言ってる余裕、お前にはあるの?
私はそのまま数本進み、相手が動揺している間に、足のスネを思いっきり棍棒でぶっ叩く。
「ぐあっ」
そう、小さくつぶやき髭面はよろける。
その隙に私は股下まで移動して、棍棒を男性特有の弱点にめがけて思いっきり上に振り上げる。
そういえば男性特有の急所をやられたら妊娠の10倍痛いって言ってた人がいたっけ?
女じゃないから妊娠も経験したことないし、男じゃないから痛みもわかんないんだけどね。
髭面は泡を吹いてぶっ倒れた。弱い。
【人間を二匹気絶させ、合計で経験値70を取得】
【攻撃・器用・素早が上がりやすくなった】
【レベルが2上がり、7となった!】
殺してないのに判定くれるの?
気絶でもオーケーなんだね!
ありがとー。レベルが7に上がったよ!
まぁ、こんなものかなー。
そうそう女の子助けて、。あのペットらしき犬の傷も塞がなきゃ。
私ははたき落とした髭面のナイフを手に取り、髭面の緑の服を包帯状に切り裂いた。
そしてさっきの犬のところに向かう。
「な……なにを……」
そう女の子は言った。
犬は鋭い眼差しでこちらをまるで敵を見るかのような目で睨んでいる。
でも元気はなさそうな淀んだ目だから、早く傷を塞いであげないと。
私はナイフを地面に突き立て、服を記憶を頼りに包帯のようにその犬に巻いていく。
犬はこちらを睨みながらも抵抗しないようだ。
いや、多分できないんだね。
【器用・素早さが上がりやすくなった】
どもどもー。
そしてナイフを回収し、今度はオールバック気絶しているところに向かう。
女の子の破けた服の代わりにこいつのジャケットを頂戴してやろうという魂胆よ。
私はそのオールバックから茶色いジャケットを剥ぎ、オールバックが手に握っていたナイフを回収。
棍棒はナイフを手に入れれたから別に回収しなくていいよね。もう一本手元に棍棒あるし。
そしてナイフはちゃんと、二人のクズから探し出した鞘にしまって、脇に挟み、ジャケットを持ったまま、女の子と接触してみる。
女の子は身を私から少し遠ざけようとしている。怖がってるのかな? それとも状況が飲み込めない?
多分後者だね。
そしてジャケットを突き出してやる。
「それ……それわた……」
そこまで言いかけて何かに気がついたように話すのを止め、口を閉じ、こちらを見つめてきた。
ん? 何かあったのかな?
【それ、私に?】
こいつ……直接脳内に……!?
まぁ、この場にこの娘しかいないから、テレパシーを送ってきてるのはこの娘でしょうね。
私は首をコクコクと頷いてみせた。
すこし驚いたわ~。
【あ……ありがと……】
そう言って、彼女は私の手からジャケットを受け取り、羽織った。
うーん、口で直接言えばいいのにね?
まあ、それはさて置き私はまだやることがある。
こいつらを縛らなきゃ。
起きて逃げちゃうかもしれない。
私は二人に近づいて、それぞれの着ているズボンを切り裂いて紐を作り、今、女の子がもたれかかっている木とはまた別の木に手足胴体を頑丈に縛り付けた。
これでそうやすやすとは逃げれまい。
因みにその他、身ぐるみは、そばに畳んで置いといた。
お金とかあるかもだけど、さすがに奪うわけにはいかないもの。
そして、私は犬のそばに行き、そっと犬をお姫様だっこするように、かつお腹を下にして背中に負担をかけないようにそっと抱きかかえた。
犬はもう、私を睨むのはやめている。
【え…ケル…その子をどうするの?】
そう言われましてもなぁ…。
私はとりあえず、この犬の傷を刺激しない程度で女の子の周りを回ってみせた。
わざと歩くのを強調するような感じで。
伝わるといいんだけれども。
【ケルを介抱してくれるの?】
私は肯定のつもりでゆっくり頷く。
【ありがと……私の村についてきてくれる?】
私は再度、ゆっくり頷く。
【ありがと、本当に】
そう言って女の子はすくっと立ち上がり、私のえっちらおっちらな歩幅に合わせて歩き始めた。
きっとこの娘の住んでる村とやらに向かっているんでしょうね。
人と接触しないって決めたのに、もう接触することになるなんてね。
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