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第3話 攻防戦
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ラムティスの腰の上に跨ったまま、ガルドが言い放つ。
「おまえが王子という証拠はない。そして、たとえ本当に王子だったとしても、俺には何の利害もない」
「なっ……」
「どうせ、こんな誰も知らない得体の知れないダンジョンの中だ。捜す者がいたとしても、辿り着けないだろう。半年もこんな場所にいたんだろう? おまえが死のうが生きようが、誰も気づかないだろう。俺が玩具にしても構わないってことだ」
「なっ……」
屈辱だった。見ず知らずの初対面の男にこんな風に言われて、許せるはずがない。
「俺もご無沙汰でな。前にやったのは十日ほど前だ。自慰はしないことにしているから、だいぶ溜まってる。ちょうどよかった」
「ちょうどよくない! 勝手に話を進めるな!」
じたばたともがいたが、びくともしなかった。
「おまえも楽しめばいいだろ」
「いやだっ!」
グッと背中の布をまくられた。ラムティスの喉がひくりと鳴る。素肌の上をガルドの手のひらが這う。ざわざわと全身の肌が粟立った。
「い、やだ……っ」
こんなところで知らない男にいきなり犯されるのか? 冗談ではない。
「い、や……っ」
「観念しろ。気持ちよくしてやる」
ガルドに譲歩する気はなさそうだった。身を屈めると、ラムティスの背中に口づける。
「ひっ……」
ガルドの唇から舌先が覗き、ラムティスの背中をなめた。
「やっ……めっ……」
ガルドの手の力が少し緩む。背中でねじられていた腕が、ようやく動いた。
「炎!」
ラムティスが叫ぶと、手首のリングから炎があがった。
「うおっと」
ガルドが驚きの声をあげた。反射的にラムティスの腰からどいて、後ろへ跳ぶ。
「なにしやがる」
「それはこちらのセリフだ」
「ちっ、魔法が使えるのか」
ガルドが残念そうに舌打ちした。
「まあいい、そのうち隙を見て犯してやる」
「その前に、俺が逃げるか、おまえを殺す」
ラムティスは本気だった。こんな場所で慰み者にされるぐらいなら、刺し違えてでもガルドを殺す。
互いの間に距離ができたので、ラムティスは急いで駆け出した。別の部屋に逃げ込もうと思ったのだ。
扉を開け、閉める。そしてさらに別の部屋に。
ガチャ。
今閉めたばかりの扉が開いた。ぎょっとして振り向くと、ガルドがいた。
(逃げられない……!)
どうしてガルドは追ってくるのだろう。このままはぐれてしまいたいのに。
どうしてガルドは追ってこれるのだろう。他の人間とは出会わないのに。
さらに別の部屋へ。またさらに別の部屋へ。
もうどこをさまよっているのか、ラムティスにもわからない。とにかく闇雲に逃げた。
ご馳走部屋に出た。空腹だったが、構わず走った。扉を開ける。
「キイイイイイイイイッ」
モンスターの吠える声がした。ラムティスに飛びかかってくる。
「うわあっ」
右腕を噛まれた。
巨大なコウモリのモンスターだった。
尻もちをつく。
「うっ」
しかも吸血だ。
(……飲んでる……)
右腕の血を巨大なコウモリが吸っている。ラムティスは青ざめた。
ザクッ。
巨大コウモリが一刀両断された。
ボトッと床に落ちる。
ラムティスが見上げると、ガルドが立っていた。険しい眼差しで、ラムティスを見おろしている。
(……逃げられない……)
終わったと思った。
「立て。治療する」
「……は?」
ラムティスがぽかんとしていると、怪我している腕をつかまれた。したたる血が床に染みを作る。
「いっ……! 痛いっ、いたっ……いっ……」
引っ張られる。ガルドが扉を開けた。新しい部屋だ。
(……寝室……!)
ラムティスはさらに青ざめた。
よりにもよって寝室に出てしまった。
「あっ」
寝台の上に突き飛ばされる。
どこから取り出したのか、ガルドの手には縄があった。
ぐるぐるに巻かれ、ベッドに縛りつけられる。
「よし」
パンッと両手の埃を払うような仕草をして、ガルドが一息ついた。
寝台にくくりつけられた状態で、ラムティスがもがく。
「……くっ、はずせ」
「断る」
ガルドが寝台の端に腰掛けた。ラムティスの血まみれの腕を眺める。
「モンスターに噛まれ、血を飲まれた。解毒して治癒しないと死ぬぞ」
「…………」
ラムティスは絶句し、呆然とガルドを見上げた。
「おまえが王子という証拠はない。そして、たとえ本当に王子だったとしても、俺には何の利害もない」
「なっ……」
「どうせ、こんな誰も知らない得体の知れないダンジョンの中だ。捜す者がいたとしても、辿り着けないだろう。半年もこんな場所にいたんだろう? おまえが死のうが生きようが、誰も気づかないだろう。俺が玩具にしても構わないってことだ」
「なっ……」
屈辱だった。見ず知らずの初対面の男にこんな風に言われて、許せるはずがない。
「俺もご無沙汰でな。前にやったのは十日ほど前だ。自慰はしないことにしているから、だいぶ溜まってる。ちょうどよかった」
「ちょうどよくない! 勝手に話を進めるな!」
じたばたともがいたが、びくともしなかった。
「おまえも楽しめばいいだろ」
「いやだっ!」
グッと背中の布をまくられた。ラムティスの喉がひくりと鳴る。素肌の上をガルドの手のひらが這う。ざわざわと全身の肌が粟立った。
「い、やだ……っ」
こんなところで知らない男にいきなり犯されるのか? 冗談ではない。
「い、や……っ」
「観念しろ。気持ちよくしてやる」
ガルドに譲歩する気はなさそうだった。身を屈めると、ラムティスの背中に口づける。
「ひっ……」
ガルドの唇から舌先が覗き、ラムティスの背中をなめた。
「やっ……めっ……」
ガルドの手の力が少し緩む。背中でねじられていた腕が、ようやく動いた。
「炎!」
ラムティスが叫ぶと、手首のリングから炎があがった。
「うおっと」
ガルドが驚きの声をあげた。反射的にラムティスの腰からどいて、後ろへ跳ぶ。
「なにしやがる」
「それはこちらのセリフだ」
「ちっ、魔法が使えるのか」
ガルドが残念そうに舌打ちした。
「まあいい、そのうち隙を見て犯してやる」
「その前に、俺が逃げるか、おまえを殺す」
ラムティスは本気だった。こんな場所で慰み者にされるぐらいなら、刺し違えてでもガルドを殺す。
互いの間に距離ができたので、ラムティスは急いで駆け出した。別の部屋に逃げ込もうと思ったのだ。
扉を開け、閉める。そしてさらに別の部屋に。
ガチャ。
今閉めたばかりの扉が開いた。ぎょっとして振り向くと、ガルドがいた。
(逃げられない……!)
どうしてガルドは追ってくるのだろう。このままはぐれてしまいたいのに。
どうしてガルドは追ってこれるのだろう。他の人間とは出会わないのに。
さらに別の部屋へ。またさらに別の部屋へ。
もうどこをさまよっているのか、ラムティスにもわからない。とにかく闇雲に逃げた。
ご馳走部屋に出た。空腹だったが、構わず走った。扉を開ける。
「キイイイイイイイイッ」
モンスターの吠える声がした。ラムティスに飛びかかってくる。
「うわあっ」
右腕を噛まれた。
巨大なコウモリのモンスターだった。
尻もちをつく。
「うっ」
しかも吸血だ。
(……飲んでる……)
右腕の血を巨大なコウモリが吸っている。ラムティスは青ざめた。
ザクッ。
巨大コウモリが一刀両断された。
ボトッと床に落ちる。
ラムティスが見上げると、ガルドが立っていた。険しい眼差しで、ラムティスを見おろしている。
(……逃げられない……)
終わったと思った。
「立て。治療する」
「……は?」
ラムティスがぽかんとしていると、怪我している腕をつかまれた。したたる血が床に染みを作る。
「いっ……! 痛いっ、いたっ……いっ……」
引っ張られる。ガルドが扉を開けた。新しい部屋だ。
(……寝室……!)
ラムティスはさらに青ざめた。
よりにもよって寝室に出てしまった。
「あっ」
寝台の上に突き飛ばされる。
どこから取り出したのか、ガルドの手には縄があった。
ぐるぐるに巻かれ、ベッドに縛りつけられる。
「よし」
パンッと両手の埃を払うような仕草をして、ガルドが一息ついた。
寝台にくくりつけられた状態で、ラムティスがもがく。
「……くっ、はずせ」
「断る」
ガルドが寝台の端に腰掛けた。ラムティスの血まみれの腕を眺める。
「モンスターに噛まれ、血を飲まれた。解毒して治癒しないと死ぬぞ」
「…………」
ラムティスは絶句し、呆然とガルドを見上げた。
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