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後編

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 兄さんが抱きたい人は、父さんだった。
 俺ではなかった。
 軽くショックだった。でも、逆ではダメなんだろうか。
 俺が兄さんを抱くのではダメなのか。
 だけど当然のように兄さんは、俺を押し倒してきた。
「待……っ」
「イヤか」
「そうじゃない。俺は……俺は、兄さんを抱きたい」
「えっ……?」
 兄さんは心底から驚いた顔をした。
 俺は必死だった。
「俺は、兄さんを抱きたいんだ。それじゃダメなのか?」
 兄さんの目がスッと据わった。
「ダメだ」
 兄さんが覆い被さってきて、俺を押さえ込み、唇にキスをした。
 俺は父さんとして抱かれるのか。俺が抱きたい兄さんから。
 なんとも言えない状況だった。
 どうせなら、弟として抱かれるほうがマシだった。

 身体をまさぐられ、服を脱がされる。
 互いの裸なんて、ガキの頃からさんざん見てる。
 見慣れているものなのに、なんで欲情できるんだろう。不思議だ。
 棚の上からぬいぐるみが見てる。
 ……父さんが見てる。
 息子ふたりが絡み合っているのを。
 イケナイことをしている気分になった。
「はぁ……っ」
 だんだん互いの息が荒くなってきた。
 頭の中が熱くて思考もにぶる。
 理性なんか知るか。
 もう、どうにでもなれ。
 兄さんは思ってた以上に本気で、いつどこでそんなこと覚えたんだよっとツッコミたくなるぐらい、キスも触りかたも上手かった。
 抱きたかった相手に抱かれてる。妙な気分だった。
 突っ込みたかったなぁ……兄さんの中に。
 鎖骨に噛みつくようなキスをされ、執拗なぐらい乳首いじられて、その唇に尖った乳首をはまれる。
 乳首を舐める時に覗く舌がエロかった。
 俺……兄さんに舐められてる。
 兄さんの舌が胸板からヘソへと向かう。
 下へ。どんどん下へ。
 ヘソを越えた。腹を舐められる。
 さらに下へ。
「あっ」
 声が出た。
 俺のソコはもうデカくなっていた。兄さんにこんな風に触られて、平気でいられるはずがない。
 兄さんの手に握られ、根元から先っぽまで撫でられ、覗く舌が唇が、竿全体を舐めまくってくる。
 こんな風にされて、平気でいられるはずがない。
 見たかった。俺の勃ったモノを咥えてしゃぶる兄さんを。
 その瞬間の兄さんの顔を。
 俺は腕を床に着き、上半身を少し浮かせた。
 兄さんが俺を頬張っている。
 大きく口を開いて、口の中いっぱいに俺を挿れている。
 頭が上下に動いて、俺のが出たり入ったりしている。
 ぞくぞくした。身体が震えた。
 すでにデカくなっていたけど、ぐんとさらにデカくなった。
 こんなに育ってるのに、兄さんの中に突っ込めないなんて。
 俺、可哀想すぎるだろ……。
 ジュプジュプと濡れた音を立てながら、兄さんが美味しそうに俺を頬張る。
 出したい。
 兄さんの口の中に出したい。
 そんな欲求で頭の中がいっぱいになった。
「うぅっ……」
 うめき声と同時に、尿道を精液が駆け抜けていった。
 頭の中が強烈な快感でスパークする。
「んっ」
 兄さんの口の中にヒットした。
 俺の先っぽから出た白いものが、兄さんの口を、舌を汚している。
 腰の辺りから、ぞくぞくと何かが這い上がってきた。優越感だろうか。征服感だろうか。
 兄さんは喉を鳴らして、俺の精液を飲んでいる。
 舌先が覗き、唇に残る白いものを舐め取った。
 エッロい……。
 俺の頭の中はもう、煮えたようになっていた。
 熱でぐらぐらとして、ロクに思考が働かない。
 兄さんが急に、俺の足を左右に広げた。
「えっ」
「忘れてんじゃねぇよ。俺がおまえに突っ込むんだよ」
 兄さんはそう言うと、俺の尻に顔を近づけた。
「あっ」
 普段は出すことにしか使ったことのない孔を、兄さんの舌が舐めた。
 ぐりぐりと強引に舌をねじ込んでくる。
「うっ、あっ」
 気持ちよかった。
 舌で抜き差しされる。
「あっ……あっ……」
 変な気分だった。
 そんな汚い場所を兄さんが舐めている。
 兄さんの舌が出入りしている。
 ぞくぞくした。興奮する。
 舌が消えたらすぐに、指が入ってきた。
 ナカを撫でられる。粘膜の壁面に指を這わせ、俺の感じる場所を探している。
 グチュグチュと指が出入りする。
 兄さんの指が。
「知ってるか。ここに前立腺があるんだ」
 兄さんはそう言いながら、俺のナカを指の腹でぐいぐいと押した。
「うっ、あっ、あぁっ」
 たちまちイキそうになる。
 なんだこれは。たまらない。
 気持ちいい。
 イク前に兄さんの指が消えた。
 代わりに入ってきたのは、兄さんの先っぽだった。
 完全に挿れるのではなく、途中まで挿れる。鈴口の半分ぐらい。
「えっ」
 ナカに出された。
 精液を。
 ドクッドクッと脈打ちながら俺のナカに注ぎ込んでくる。
 兄さんはその精液の滑りを利用して、グッと押し込んできた。
 カリまで入ると、後は楽に根元まで入った。
 腹が苦しい。尻がじんじんする。
 ここに兄さんが入っている。
 そう思うと、いろんなことがどうでもよくなった。
 俺が兄さんを抱きたかったこととかも。
 兄さんの腰が動き出した。
 初めは気遣うようにゆっくりだったのに、次第に我慢できなくなったように、速度をあげてきた。
 俺はまるで女のように、身じろぎ、喘いだ。
 兄さんが抱きたかったのは、俺じゃなくて父さんだ。
 腰を振る兄さんの目には、俺が父さんに見えているのだろう。
 ……父さんにこんなこと、したかったのか。
 変態だな、と思った。

 四つん這いにされた。
 背後から腰をつかまれ、激しくガツガツと突かれる。
「うっ、あっ、あっ、あぅっ、うっ、あぁっ、あっ」
 兄さんは前立腺ばかり狙ってきたかと思うと、急に奥を狙ってきたりする。
 俺の尻はもうトロトロで、なにをどうされても気持ちよかった。
 口の端からよだれが垂れる。
 涙も溢れてきて、俺の顔はもうぐちゃぐちゃだ。
 もう何回ナカに出されただろう。
 そんなに絶倫なら、絶倫って最初に教えといてくれよ。
 俺だって、何回イッたのかもうわからない。
 初めのうちは射精してたけど、だんだん出なくなって、空イキするようになった。
 でも、空イキとは違う、変な感じもあった。
「ドライだよ。ドライオーガズム」
 まるで俺の心を読んだように、兄さんが耳元で囁いた。
「おまえのナカが気持ちよくなりすぎて、何度もイッちゃうんだ。メスイキとも言う」
 メ……メスイキ……。
 か、空イキとは違うの……?
「開発すれば、乳首でもイケるようになる」
 兄さんはそう言うと、指先で俺の乳首をつまんだ。
「うぁっ、あっ、あんっ……」
「いいね。今ので締まった」
 パチュパチュと背後から腰を叩きつけられた。
「身体が持つなら、ずっとこうしてたい。おまえのナカにずっといたい」
「……お、れも……っ」
 身体が平気なら、ずっとこうしていたい。
 腹の奥をずんずんと突かれていたい。
 兄さんと一体になっていたい。
「あぁっ、んっ、うぁ……っ、あっ、くっ、あぁっ、あっ」
 何度も何度も絶頂を迎える。
 その度に兄さんを締めつける。
 まるでずっと昔から、こうされていたような気がした。

「なぁ、兄さん。俺たち、一緒に暮らさない?」
「……考えとくよ」
「なんで即答じゃないんだよ」
「ここから会社は少し遠いんだ」
「だったら俺がそっちに転がり込むから」
「大学から遠くなるだろ」
「遠くなっても通学頑張るからさ」
 俺は兄さんの顔をちらっと眺めた。
「いつかさ。いつかでいいからさ、俺も兄さんのこと抱き……」
「却下だ」
「えっ、なんでだよ。俺にだってイチモツついてんだぞ」
「俺にはケツに突っ込まれるような趣味はない」
「ざっけんな。俺にもねぇわ」
 兄さんが笑った。
 兄さんがそんな風に素直に笑う姿を、しばらく見てなかったことに気づいた。
 いつもどこか遠くを眺め、少し険しい表情をしていた。
 ぬいぐるみを床に投げ、踏みつけていたあの時のように。
 兄さんが、父さんの面影を追うことはもうなくなるのだろうか。
 それとも、永遠に追い続けるのだろうか。
 見つからないままのあの人の幻影を。
 俺にできるのは、兄さんを癒すことだけだ。
 幼少時になにかを置き去りにしてきた、兄さんの心の傷を癒すことだけだ。
 大好きだから。
 愛しているから。
 ぬいぐるみを抱きしめて眠る兄さんに、抱きついて眠っていたあの頃から。
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