BL学園の姫になってしまいました!

内田ぴえろ

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22. Departure!いざ、リゾート地旅行へ!

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 憂鬱なテストも終わりの開放感に包まれるようにしてやってきた夏休み。その一週間が過ぎた頃、私は今、空港にいる。隣には凪もいる。そして、生徒会、桜城くん、岩水くん、鮫島くん、獅子戸先輩も周りにいる。
 そう、今からレクリエーションで獲得したリゾート地旅行へ出発するのだ。

「楽しみだな!誠也、智紀!」

「ああ!蓮、誘ってくれてありがとな!」

「皆で楽しみたかったんだ!2人とも来てくれてありがとう!」

 嬉しそうに笑う岩水くんと反対に、そっぽを向く鮫島くん。しかし、ここに来ているので、やはり桜城くんには甘いなと思う。

「全員いるな?行くぞ」

 有栖川先輩がそう言い、スタスタと歩いていく。その後ろを桜城くん達がついて行く。私と凪は1番後ろをついて歩いていった。


 まず驚いたのは、今日使う飛行機が普通の飛行機ではなく、有栖川先輩が私有するプライベートジェットだということだ。

「プライベートジェット持ってる高校生って、なかなか居ませんよね……」

「高校生どころか、大人でもあんまり居ないだろ」

 唖然として立ち止まる私達や桜城くん達。生徒会の人達は慣れた様子で有栖川先輩について行く。

「何やってんのー?」

「早くしないと、置いてくよー?」

 月瀬兄弟の言葉に、桜城くん達は慌てて追いつこうと動き出す。私達は、その後ろを慌てずに追いかけた。

 プライベートジェットの中は、2席ずつ並んでいて、座席と座席の間隔に余裕のある座席だった。広々としていて、長旅でも快適に過ごせるようになっていた。キャビンアテンダントさんもいて、特に不自由なく旅ができそうだ。

 座席は自由とのことだったので、私は窓際の座席に座った。凪が私の隣にやってきた時、ふと剣崎くんが1人でオロオロしているのが見えた。どうやら、どこに座ればいいか迷っているようだ。そんな剣崎くんに声をかける人はいない。
 私は訴えかけるように凪の目をじっと見つめる。凪が首を傾げたのを見て、目線を剣崎くんの方に向ける。凪は剣崎くんの方を見て、私を見た。
 そんな凪にグッとサムズアップすると、凪は私の意図を察したのだろう、眉をしかめて、はあ、と溜息をつき、剣崎くんの方へ歩いていった。そして、一言二言話して、私よりずっと前の座席へ座った。

 よっしゃ!やってやったぜ!!凪と剣崎くんの距離を縮めさせよう作戦!作戦はさっき思いついたのだけれども!!しかし、欲を言うなら、私の前の座席に来て欲しかった!!!

 私は1人で凪と剣崎くんがどんな話をするのかを妄想することにしよう。と心に決めて、ワクワクしていると、隣に誰かの気配がした。

「よ、白川。ここいいか?」

 ニパッとした笑顔で訊ねてきたのは、岩水くんだった。なぜ彼が?と思いながらも、返事をする。

「ええ、構いませんよ」

「ありがとな!」

 お礼を言いながら、岩水くんは隣の席に座った。

「しかし、なぜ私の隣に?桜城くんや鮫島くんのお隣でなくて良いんですか?」

「ああ、桜城は会長と副会長が取り合いになって、結局副会長が隣に座ることになってな。鮫島は1人でいいって言ってそのまま行っちまったんだ」

「なるほど、それで1人だった私に目をつけたと言うわけですね」

「まあ、そんな感じだな!あと、白川と1回話してみたかったんだ」

 私と?と聞き返すと、そうだ。と答えた岩水くん。なんでだろう?と思うも、それを訊ねる前に、飛行機が離陸するというアナウンスが流れたため、話を中断し、シートベルトを着用する。
 飛行機が離陸して、機体が安定した頃。私は岩水くんに訊ねることにした。

「あの、なぜ私と話してみたかったのか、聞いてもいいですか?」

「ん?特に理由は無いけど……そうだな、強いて言うなら、ちゃんと話したこと無かったなと思ってな」

 なるほど、と言って、確かにこうやってちゃんと話したこと無いな。と今までの記憶を遡ってから結論付ける。
 早速、と言わんばかりに、岩水くんが話しかけてきた。

「期末テストの理科、難しくなかったか?」

「ええ、意地悪な問題が何問か出されてましたね。あと、数学も難しかったです」

「そうだよな!って言っても、俺は勉強全般、あんまり得意じゃねぇんだけどな」

「私も勉強はあまり好きではありませんね」

「でも白川は今回のテストの順位、学年で5位だっただろ?」

「ええ。理数科目は凪に教えてもらったので、点数が稼げたんです」

 私はテスト週間のことを思い出す。
 凪に理数科目を教えてもらう時、もうやりたくないです!と駄々を捏ねたら、頭をペシンッと叩かれ、やれ。と睨まれたこと。
 逆に、私が凪に英語や国語を教える時、凪は日本人なのになんで英語をやらないといけないんだ?と言っていて、私は真顔で、怒涛の如く発展していく世界に置いていかれないためです。と答えて、凪に何とも言えないような顔をされたこと。今となっては懐かしい。


「そういえば、白川は黒瀬と仲がいいよな。幼馴染とか?」

「いえ、中学からの仲です」

「中学からなのか!すげぇ仲良いから、昔から一緒にいるのかと思ってたわ」

 いや、間違っては無いんだけどね?前世からの仲ですしおすし。
 なんて言えないので、微笑みで誤魔化し、さらに岩水くんに質問をして誤魔化す。

「岩水くんには、幼馴染がいるんですか?」

「ああ、同じ部活に1人いるぜ。すっげぇ元気で、部のムードメーカーなんだ」

「そうなんですね。岩水くんは、確かサッカー部でしたよね?」

 そうそう、と頷く岩水くん。そこから、私がサッカー部のことについて訊ねて、岩水くんが答えるような会話が続いた。
 練習のことや大会のこと、部員のことなどを、時には楽しそうに、また時には呆れたように話をする岩水くん。
 表情豊かに語る岩水くんの話を、相槌を打ちながら聞いていると、岩水くんが突然我に返った様子になった。

「おっと、すまん。白川が色々聞いてくれるから、つい喋り過ぎちまった……」

「いえ。私も岩水くんのお話を聞けるのは楽しいので、大丈夫ですよ」

 若干照れながら謝る岩水くんに、私は気にしていないことを伝える。

「俺ばっかり喋るのも勿体ないからな……白川は部活何やってるんだっけ?」

「家庭科部です」

「家庭科部か。黒瀬も同じか?」

「ええ。部活動に入ってなかった凪を引き連れて家庭科部に入部したんです」

「そうなのか!黒瀬は、スポーツもできるから、運動部に入ってそうな感じだったんだが、なんか意外だなー」

「スポーツはできますが、あまり好きではないみたいです。凪はああ見えて、裁縫が好きなんですよ」

「裁縫か……あ!だから食堂で剣崎の服のボタン縫えたのか!」

「ああ、そんなこともありましたね……」

 あの時は本当に凪の言葉足らずさに呆れ果てていた。そのことを思い出し、思わず遠い目をしてしまう。

「白川も裁縫得意なのか?」

「得意という程ではありませんが、人並みにはできますよ。私はどちらかと言えば料理の方が好きです」

「へぇ、料理か。どんな料理作るんだ?」

「結構色々作りますよ。和食から洋食、中華、エスニック……あ、スイーツも作りますね」

「すげぇ!白川が作った飯、いつか食ってみたいなー!」

 キラキラとした目で私を見る岩水くんに犬っぽさを感じ、クスリと笑ってしまった。
 私は、機会があれば是非。と微笑んで答えた。




 岩水くんとの談笑に花を咲かせていると、そろそろ目的地に着くとアナウンスが流れた。
 窓の外を見ると、エメラルドグリーンの海が広がっていた。座席から身を乗り出して窓の外を見た岩水くんが、綺麗だな!と言ったので、そうですね。と相槌を打つ。


 私は外に広がる美しい景色を見ながら、これから1週間、何が起こるか楽しみだと期待に胸を躍らせたのだった。


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