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14. Happening!落ちた2人の雨宿り!

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「いった…」

 身体中を打ち付けたものの、落ち葉がクッションとなって、最悪の状態になることは避けられた。
 不幸中の幸いというべきだろうか…私は体を起こして、近くにいた桜城くんに声をかける。

「桜城くん、大丈夫ですか?」

「な、なんとか…」

「落ち葉がクッションになって良かったですね」

「そうだな……でも、これからどうすれば……」

「まずは、雨を凌げる場所に行きましょう」

 私達は辺りを見渡して、雨が凌げそうな場所を探す。

「あ、雪月!向こうに小屋みたいなのがあるぞ!」

「小屋……なるほど、桜城くんお手柄です。ひとまずそこへ行きましょう。立てますか?」

「おう!大丈夫……っ!」

 立ち上がろうとした桜城くんが顔を顰めて体勢を崩した。
 失礼します、と私は桜城くんの足を確認すると、左の足首が腫れていた。

「さっき捻ったのかもしれませんね……」

「で、でも、大丈夫だ。これくらいなら何とか……」

「無理をしないでください。悪化してしまいます。私の肩を貸しますので、支えにしてください」

「……ありがとう」

 私は微笑んで、さ、行きますよ。と桜城くんに肩を貸し、小屋まで歩くのだった。




 小屋は長年使われていないもので古びていたが、雨は凌げるので、中で小雨になるのを待つことにした。
 ふと桜城くんを見ると、小さく震えていた。

「桜城くん、寒いですか?」

「ん……ちょっとな。雨で体が冷えたのかも」

「……私のジャージを着てください。濡れてはいますが、何も無いよりはマシでしょう」

「え、でも、それだと雪月が……」

「私は大丈夫ですので、ご心配なく」

 そう言って、私は桜城くんに長袖のジャージを羽織らせる。桜城くんは小さくありがとうと言ってジャージに腕を通した。
 いやぁ、桜城くんと体型が似てて良かった。もし私が桜城くんより小さかったら、貸すことが出来なかったから。

「……雪月、ごめんな。俺のせいで……」

 膝を抱え、落ち込んだ様子でそう言った桜城くんに、私は言った。

「そうですね、雨の時の山道は滑りやすくなって危険だと言おうと思ったのに、桜城くんはそのまま突っ走ってしまいましたからね」

 桜城くんは、ウッ、と痛いところを突かれて何も言えなくなっている。

「でも、私も追いかけながらでも言えばよかったので、私にもほんのちょっとですが、非はあります。すみません」

「雪月は悪くない!悪いのは俺だから……」

「まあ、過去のことを嘆いても仕方ありませんし。私もそんなに怒ってないので、大丈夫ですよ。それに、桜城くんが見つけたこの小屋、ここからなら、何となく帰り道が分かります」

「本当か!あ、でも、俺足手まといになるんじゃ……」

「大丈夫です。私、そんなヤワじゃないので!」

 ドヤッと胸を張って答えると、桜城くんの顔に少し笑顔が戻った。
 私は微笑み、桜城くんと共に壁を背に座り、雨音をBGMに雑談に興じるのだった。

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