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10. Let's go! 風紀委員室へ!
しおりを挟むその翌日の放課後。
私はとある場所へ向かおうとしていると、桜城くんに捕まった。今日に限って、鮫島くんも岩水くんも傍におらず、桜城くんは1人だった。
「あ、雪月!どこ行くんだ?」
「桜城くん。えっと、風紀委員室へ行こうと思いまして」
「風紀委員室?雪月、何か悪い事でもしたのか?」
「いいえ、ある人に渡す物があるだけです」
「へー……あ!なぁ、俺も一緒に行っていいか?」
私は桜城くんからの思ってもみなかった言葉にパチクリと瞬きをした。そして、一緒に?と桜城くんの言葉を反芻した。
「……やっぱダメか?」
先程の明るい様子とは打って変わって不安そうな表情で私を見る桜城くん。
まぁ、一緒に行ってダメな理由も特にないし、いいか。と思い、誘ってみることにした。
「……大した用事ではないのですが、それでもよろしければ、ご一緒しますか?」
「いいのか?!ありがとう!」
「ええ。それでは、行きましょうか。人を待たせていますので」
おう!と元気よく返事をする桜城くんに、私は元気がいいなーと脳内で苦笑を漏らし、2人で風紀委員室へと向かうのだった。
主に桜城くんの質問に答えるように駄弁って歩いていると、風紀委員室に着いた。
私が扉をノックすると、中から、どうぞ。と返事が来たため、失礼します、と言いながら中に入る。
中には、扉の向かい側にある机で作業をしていたであろう、風紀委員長の氷川 涼(ひかわ りょう)がいた。
「おや、白川さんですか。何のご用で?」
「はい、桃山くんに渡すものがあったのですが……」
「ああ、桃山には先程資料を取りに行ってもらいました。直に帰ってくるでしょう。ところで……」
そちらの方は?と隣にいる桜城くんの事を見ながら氷川先輩が言ったため、私は簡単に紹介する。
「彼は桜城 蓮くん。最近私のクラスに転入してきたんです。」
「さ、桜城 蓮です!」
「ああ、有栖川だけでなく、生徒会が執着してるって噂の」
「噂!?た、確かに龍也達とは良く話すけど……」
照れくさそうに言った桜城くんに、私はいつの間に有栖川先輩を下の名前で呼ぶようになったのか、問い質したくなったがグッと我慢した。
「……精々、食堂の時みたいな騒ぎや問題を起こさないように」
氷川先輩はメガネを人差し指で持ち上げてから蔑むように言う。
その言葉に桜城くんは顔を顰め、感情的に反論した。
「俺は龍也や雅達とただ普通に話しただけだ!騒ぎは起こしてないだろ!?」
「……ただ普通に話しただけ、ですか」
嘲笑を浮かべて言った氷川に、そうだ!と返す桜城くん。
桜城くんに近づき、冷淡に言葉を紡ぐ氷川先輩。
「憧れの的である生徒会の方々と普通に話せる人はそれほど多くありません。ましてや、彼らから話しかけられることなど、以ての外。そんな中、ぽっと出の貴方が彼らと仲良さげに話しているのを見て、周りの生徒達はどう思うでしょうか?」
「そ、それは……」
「貴方が事の発端を作り、そのせいで問題が起きる。それでも、自分は騒ぎを起こしていないと言えますか?」
「っ、でも、それなら、皆生徒会の人と普通に話せばいいだろ!あいつらも、俺らと同じ人間なんだ!」
桜城くんの言葉に固まった氷川先輩だったけれど、気を取り直すようにメガネを持ち上げ、突き放すように言う。
「……貴方のような考え方ができる人は殆どいないでしょう。何せ、彼らは一般生徒から見れば雲の上の存在なのですから。もう一度言います、騒ぎや問題を起こさないでください。この学園で、平穏に過ごしたいのでしたら」
グッと、言葉に詰まる桜城くんに、氷川先輩は、ああ、それと。と言葉を続けた。
「言葉遣いに気をつけて下さい。私は一応貴方よりも先輩なので」
何も言い返せなくなった桜城くんは悔しそうに下唇を噛んだ。
「……ごめん、雪月。俺、先帰る」
桜城くんは一言そう言うと、私が引き止める前にそのまま風紀委員室を去っていった。
伸ばして行き場をなくした手を降ろし、氷川先輩をじっと見る。
「……なんだ、その目は」
桜城くんが居なくなって砕けた口調になり、素を見せる氷川先輩。
居心地悪そうにする姿を見て、フッと微笑む。
「桜城くんが心配なだけだと、本人が分かるように伝えればいいものを……」
「別に俺が何をどう言っても同じだ。先程の俺の言葉を受けて尚、彼が生徒会と連むならば、優しく言っても無駄だろう」
難儀な人だなぁ、と私は思いながら肩を竦める。
その時、タイミングを図ったかのように、私の目的の人……高等部1年にして風紀副委員長という役職を持つ、桃山 咲弥(ももやま さくや)が風紀委員室に入ってきた。
「委員長~資料持ってきました~……あ!白川様!」
「こんにちは、桃山くん」
「ちょっと待ってて~!委員長、これどこに置けばいいですか?」
「そこの机の上に置いてくれ」
桃山くんは、分かりました~!と返事をして、机の上に資料を置いた。
「お待たせしてごめんなさ~い」
「いえ、時間はあるので構いませんよ。資料運び、お疲れ様です」
私の言葉に、えへへ~と照れたように笑う桃山くん。しかしすぐに、あっ、と声を上げる。
「お茶淹れてきま~す。ストレートで良いですか?」
「俺のはミルクを入れてくれ」
「あ、私もお手伝いします」
桃山くんは氷川先輩に、分かりました~と返事をし、私達は簡易キッチンの方へ行った。
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