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オカマコンテスト

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衛兵に連れられ、魔物討伐部隊の宿舎へと放り出された私は、トボトボと0部隊の宿舎へと向かっていた。
この足を止められるものなら止めてやりたい。でも、出来ないのだ。
隷属の腕輪の効力により私の足は強制的に0部隊の宿舎へと向かう。

やけに頑丈に作られた宿舎のドアを開けると、筋骨隆々の三人の男もとい、オカマの視線が一気に私のもとへと向かった。

今すぐにでも回れ右をして去ってしまいたかったが恨めしい事に体が勝手に動き、綺麗なカーテシーをする。

「本日付で三年間0部隊に兵役する事となりました、イザベラ・フォーリーにございます。どうぞよろしくお願い致します」

その言葉を聞いたオカマたち三人は互いの顔を見合わせて「そんな話聞いた?」「聞いてないわ」と呟いている。
本来なら部隊長ぐらいには誰が配属されるか連絡が通っている筈なんだけれど。
話通ってなかったのね・・・。
一癖も二癖もあるオカマ3人に今回の事を説明できるだけの猛者は居なかったらしい。

そんな中、三人のうちの誰かが「チッ女かよ」と文句を言った。

悪かったわね!女で。と言いたいところだが、この場合は女で良かったと思うべきなのかもしれない。
もし、私が男だったら・・・なんて想像しただけでも恐ろしい。

そうこうしていると、黒髪赤目の、三人の中でも一番ガタイの良いオカマが近づいてくる。
何を言ってくるのかしらと身構えていると、仁王立ちをしながら

「あんたが噂のフォーリー公爵家の女王様?・・・まあまあね。でもあたしの悩殺セクシーショットの足元にも及ばないわ!」

ばあああん!と効果音が付きそうなほど胸を張って自慢・・・なのであろう胸筋を見せつけてくる。
その勢いたるや、ある意味悩殺だわ。
そのオカマの姿を見ながら私は自身の体を見やる。
負けて・・・無いわきっと。相手は男だもの。いくら私の胸がその・・・ささやかだからと言って、まだ負けてはいない・・・きっと。

「モンスターの間違いじゃないの?」

未だに胸を張り続けているオカマに、今度は茶髪に緑目の瞳のオカマは「ふっ」と黒髪赤目のオカマを鼻で笑った。
貴方もいい勝負だけれどね!

その言葉を聞いた黒髪赤目のオカマ・・・言いにくいのでオカマ1としよう。の目がキッと吊り上がる。

「何よアンタ!あたしのヴォディにケチ付けようっての!?」
「アンタより、私の方が美人なのよ!」
「寝言は寝てから言いなさい、このすっとこどっこい!」

怒りに満ちたオカマ1は茶髪のオカマ・・・オカマ2の方を思い切り突き飛ばす。
二人が座っていた椅子がガタンと音を立てて倒れる。
よくよく見るとこの椅子も扉同様に頑丈に鉄で作られている。
倒れた椅子を輪切りに突き飛ばされたオカマ2はオカマ1と取っ組み合いの喧嘩を始めた。


残りのオカマ3・・・金髪おさげに青い瞳のオカマは我関せずと言った様子で黙々と編み物を編んでいる。

な、なんなのこの混沌とした空間は!
コントで言う所の「ツッコミ」のいないボケだけの状態だ。
かと言って私が突っ込みに回るのだけは勘弁願いたい。

しかし、この状況は・・・とカーテシーをしたまま固まっていると、どんどんオカマ1と2のボルテージが上がっていく。
掴み合いが激しくなった所で、オカマ3が私の手を引っ張った。
その瞬間オカマ1と2がなだれ込んでくる。

「危ないわよ。あたし、モニカ。あの黒髪がアイリスでこの0部隊の部隊長、茶髪の方がジェシカ。副隊長よ。あの二人、いつもああやって喧嘩してるの。気にしないでね」
「気にしない方が無理があるわよ!!」

ああ、思わず突っ込んでしまった。
モニカは編み物の手を止めることなく言ったが、目の前では相変わらずオカマ二人が組み合っている。気にしない方が無理がある。あれを日常にされてなど堪るものか。
とは言え、隷属の腕輪で魔力も制限されている今、筋骨隆々のオカマ二人の喧嘩を止める術が無い。

部屋の諸々の備品が頑丈に作られているのはこの二人が喧嘩の度に備品を壊しまくった結果なのかもしれない。いや多分じゃなくそうなのだろう。
モニカもモニカで呑気に編み物をせずに二人を止めるぐらい・・・出来ないか。
モニカは三人のオカマの中で最も小柄だった。

「大丈夫。もうそろそろしたら・・・」

とモニカが言った所でアイリスとジェシカの動きが止まる。

「いいわ!こうなったら、誰が一番美しいか決着つけてやろうじゃないの!」
「望むところよ!」

「「第十回!オカマコンテストの開催よ!!!」」

アイリスとジェシカが部屋中に響き渡る大声で宣言する。

「オ、オカマコンテスト!?」

そんなコンテスト聞いた事無いわよ!という私を他所にオカマ1こと、アイリスが部屋の奥から魔装具を持ってくる。
それに聞き間違いじゃなければ第十回とか言わなかった?何回このコンテストをやっているんだ。一回目で決着は付いてるんじゃないのとか。言いたいことは山ほどある。

「いい、ルールは簡単。この魔道具の前でセクシーポーズを取って魔道具が判定した数字が最も多い女子が優勝よ」
「女子!!?・・・いいえ、何も言っていません」

自身をあくまでも女子と言い切るアイリスに私が驚きの声を上げると、アイリスに「ここに女子以外がどこに居るっていうのよ!」ジェシカに「そうよ!男を隠しているなら出しなさい!!」と睨まれた。そして私を指差し、「あんたも強制参加だからね!」とアイリスが言う。

ものすごーーーく嫌だけれど、部隊長の命令には従うよう隷属の腕輪に登録されている。

「今日は私から行かせてもらうわ」

ジェシカがツンと顎を上げながらしゃなりしゃなりと魔道具の前まで歩いていく。
彼・・・嫌、彼女の名誉のために言っておくけれども、筋骨隆々の彼女がつま先立ちでバレリーナの様に歩く様は白鳥のよう・・・にはとても見えないわ。残念だけれど。

そうして奇妙な歩き方で魔道具の前まで歩いて行ったジェシカはセクシーポーズ、ではなく明らかにマッスルポーズであろうボーズを取る。
カシャリと写真を撮る様な音が鳴ったかと思えば、魔道具に「85」と数字が表れる。

「85点。まあまあね」

この間より5点上がったわとジェシカは喜んでいる。
喜んでいるのは良いのだけれど、ジェシカが喜び、飛び跳ねる度に床が揺れて振動を立てている。
この床、抜けたりしないわよね。

「どきなさい!次はあたしの番よ」

魔道具の前で喜んでいるジェシカを押しのけると、今度はアイリスがジェシカ同様つま先で奇妙に歩き出す。そして魔道具の前でポーズを決めた。

カシャ!

「95!やっぱりあたしの方が美人じゃない!!」
「く、悔しい!」

豪快に大口を開けて笑うアイリスに、ジェシカは何処から出したのかわからないハンカチを悔しそうに噛み締めてきー!と叫んでいる。
な、なんなのこの茶番は。

まあ、でもアイリスとジェシカの勝負も終わったことだし、このコンテストも終わり。挨拶も終わったことだし、今日はもうお暇しようとこっそり後退しているとモニカが「まだ、イザベラが残っているわ」と余計な事を言い始めた。

「そうだったわ!」
「忘れるところだったわね」

とあと少しでドアノブに手が届きそうだったのにアイリスとジェシカに魔道具の前へと連れ出される。

「出来るだけセクシーに歩くのよ!」

要らぬアドバイスを飛ばすアイリスを無視して普通に歩いて魔道具の前へと向かう。
点数が高くても嫌だし、一応唯一女の体を持つ私の点数が低くてもなんだかムカつく。と言うか、「全てにおいて一番を取れ」と言うフォーリー公爵家の家訓を破ってしまう。
やりたくないけれど仕方がない。せめての抵抗でやる気なく魔道具の前に立つ。
取り合えず適当にポーズを取るとカシャリと魔道具が鳴った。

「結果は!?」

オカマ3人が身を乗り出して魔道具を見つめる。
魔道具には何の数字も書かれていなかった。その代わりに書かれていたのは・・・・


「胸無・・・男です!!」

オカマ3人が可哀想な物を見る目で私を見つめた。
胸無。男・・・その文字を見た瞬間私の堪忍袋の緒が切れる。

「だあれが!貧乳ですって!!!!!」

溢れ出した魔力が隷属の腕輪の魔力量を超える。そして気付いた時には私は宿舎を吹き飛ばしていた。
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