呪いから始まる恋

めぐみ

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「ん、ろっ、くす…さん…」

「ン…?どうした?」

「その、私…大人のキス…教えて、欲しいです…」

彼が私のペースに合わせてくれるように私も彼のペースに歩み寄りたい。そして彼ともっと深く触れ合いたいと思うと自然とそんな言葉が口から出ていた。
ロックスさんは体を少し離して顔を向き合わせるとまた唇に軽いキスを落とした。その顔にもう怖いなんて思うことは少しも無くてそれどころか自分の気分が高揚しているのを感じる。

「じゃあ口、少し開けてくれるか?最初は君から無理に舌を絡めようとしなくてもいい…俺がとりあえずやってみるな?」

彼の言われるがまま、口を軽く開くと重なった唇の隙間からそっと舌が差し込まれた。まずは口内の手前の部分を探るように舐められて、時折呼吸の隙を与えるように唇を離してくれる。それを繰り返して少しずつ少しずつ触れ、4回目の呼吸を終えた後、ようやく私の舌に触れた。舌の裏側を根本からゆっくり舌でなぞられて腰のあたりがゾワゾワする。それを察しているのかロックスさんの腕が少し大胆になって自らに押し付けるように私の腰を引き寄せた。

(少し…硬いのが当たってる…ひゃぁ…これが男の人の…?)

太ももに当たる硬い感触はそれがなんだか分からないくらい初心ではない。先程直接見はしたが触れるとなるとそれはまた別の緊張感が走った。硬くて、熱くて…何より太くて長い…こんな大きさのものが私に入ると思うと恐怖に近い感情が生まれる。

「怖がらせたな…でも安心してくれ、君がいいと言うまで絶対無理に挿れたりしない。約束する」

私の些細な変化にも気付いて、穏やかな声色で安心させてくれる。興奮、してはくれているだろうに私最優先で気持ちを大事にしてくれるところが愛おしい。本人は自覚がないようだが、こんなに素敵な男性は他にはいないだろう。

「ん、ありがとうございます…じゃぁ…その、続きを…」

「そうだったな、じゃあ…今度はベラも舌を絡めてみるか?」

もうワンステージ進むのかと思うと背筋が伸びて、ロックスさんは喉を鳴らしてクックックと笑った。

「そう、固くならなくていい。そうだな………これを使う」

ロックスさんはベッドの下に置かれた自分の荷物から飴を一つ取り出した。そうしてそれを口に放り込むと顔を寄せてくる。

「舌の上に飴を乗せてるから…それを舌で取るって考えて俺の口内を探って奪ってくれ。取られたら俺が今度は取り返す。それを繰り返す感じだ」

一つの飴を二人の口内で奪いながら舐め合う…キスすることを意識しなくてもいいならやりやすいかもしれない。

「それなら…ぜひお願いします!」

「元気が良くて何よりだが…今からキスするんだぞ?…んじゃ、最初は簡単にスタートするか、…ン」

ロックスさんは目を閉じて舌を差し出した。よく見たら彼はまつ毛も長くて、整った顔を無防備に向けられると頭の中が真っ白になった。こんなのはレベル1でただ彼の舌から飴を舌で取ればいいだけなのに変に力が入って彼の肩の上に手を置いて向き合う。そうして恐る恐る顔を近づけて、食むように彼の舌を口に咥えて飴を舌で自分の口内に含ませる。彼の体温を感じる飴はひどく甘く感じて、きっとこれは単純な飴の甘さだけではないのだろうと思った。

「よくできました…だな。まさか舌を咥えられるとは思わなかったが…食われるかと思った。」

ロックスさんは目を開けて私の頭をヨシヨシと撫でながら私に微笑みかける。下手くそなキスだというのにこうして褒めてくれて…しかし余韻に浸る間もなく今度はロックスさんの舌が私の口内に侵入した。無意識に飴を奥の方にやってしまって、ロックスさんの舌が探るように私の口内を這った。

「ンッ…、ふ、ぁ…っ、んぅ…っ」

ただ探られてるだけのはずなのに気持ちいい。鼻で息をする余裕のない私に合わせて息継ぎのタイミングも取ってくれる。ぴちゃぴちゃと舌が絡まる音がやけに耳に焼き付いて自分でも興奮してくるのがわかった。これはただの練習なのに彼の背に腕を回して…腰に脚を絡めて…密着して肌で彼を感じたい。そう思ったところで彼から飴を奪われて甘い時間は終わってしまう。

「は、…んっ、あ…っ」

「悪い悪い、余裕無かったな…少し激しくし過ぎた。これは飴の舐め合いなのにな」

少し赤く染まった彼の頬が珍しくて思わずじっと見てしまう。いつもは余裕綽々でお兄さんみたいな態度のロックスさんの少し余裕のない部分が見られてこちらも顔が熱くなった。
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