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ep 157 友達の為
しおりを挟む大河は一通り、相良の肉体を観察し触り終わると解説をしだした。
大河 「相良、今のお前の状態は、下半身は上手く出来上がっている。現に俺を抱えてダッシュが出来るんだからそれが証拠だ。
……だけど、相良は引手に関わる筋肉が少し足りていない。主に前腕の筋力。……長期戦になると握力が無くなったり、相手を引き寄せる力が弱くなったりしてねーか?」
相良 「す、すげぇ。見ただけでわかんのかよ。…じゃー!握力をあげればいいのか?」
大河は相良の腕を持ち上げた。
大河 「ただ筋肉を増やせば良いってわけじゃない、無駄な所につけるとかえって動きが悪くなるし、無駄な時間もかかる。」
相良 「どうしたらいい?」
大河は更衣室に置いてある、和太鼓を見た。
大河 「これ、使ってる??撥はあるか?」
相良 「あぁー。ある!!何か山口先生が試合や組み手するときに、たまに使ってる。」
大河 「んじゃ、これ2発叩いてみて…」
相良 「え??ああ。。」
相良 (何か必ず意味があるはずだ)
相良は撥を握りしめ、和太鼓を力いっぱい叩く。
どぉぉん。どぉぉん。
更衣室の外にいる人間は何事かと思うが、更衣室に入る勇気がない。
相良 「こ、これで良いのか?」
大河 「んじゃ、俺の聴いて。…すっ。」
翔吾は咄嗟に耳を塞いだ。
ドゥーン!!ドゥーーン!!
地響きと、共に壁が振動する。
相良 「うるさっ!!……え?」
大河 「俺、あんまり力入れてないし、振りかぶってもないよ…」
すると、ガチャりと更衣室のドアが開く。
山口教師 「どーした?!更衣室で何やって……え?/////」
相良 「お疲れ様です!すいません、今指導を受けておりまして!」
山口教師はだいぶ混乱していたが、相良が全てを話して説明した。
山口教師 「な、なるほど。だから大河がいるのか……いきなり太鼓の音が聞こえてきたからびっくりしたぞ…相良はパンツ一丁だし。」
翔吾 「先生も音聞いたんですね、どうでした?最初と最後の音。」
山口教師 「ん??音か??最初の2発はボンヤリとしか聞こえて来なかったが、最後の2発はハッキリ聞こえたな。爆音だった。」
相良 「大河!!俺もお前みたいな音を出せたら、引き手が強くなれるのか?!」
勘のいい相良はこの意味を気付く。
大河 「そうだ!厳密には前腕の強化だな。太鼓で1番音が出る為に重要な事は面に当たる瞬間にしっかりと締めること。この動作で使う筋肉は瞬発力と持久力を高めてくれる。」
三人は大河の説明に食い入って聞いている。
山口教師 「……引き手の強化……なる程、確かに締める動作で握力も前腕も鍛えられるし一石三鳥って所だな。」
大河 「ポイントは触れる瞬間にキュっ!と握り締める事だ。家で練習したいのなら、腕をベットに寝かせて、ダンベルを持って、手首だけで動かす。これだけでもだいぶ鍛えられる」
相良 「すげーー……大河。ホントにありがとうっ。」
相良はパンツ一丁のまま、大河の肩を掴む。
大河 「まだ、簡単な方法しか教えてない。相良、ちゃんと内容教えてくれよ! ……よしっ、それじゃ失礼しますっ!!」
大河は荷物を持って帰宅しようとする。
同時に相良も道着に着替えている。
山口教師 「大河、本当に入部する気は無いか?今ならまだ間に合う!!…どーだ?」
山口教師は大河の存在が欲しくてたまらないのである。
勿論、彼が個人的に大河を大好きだという理由もある。
大河 「……すいません。俺は家を守りたいので。…その代わり翔吾をしっかりと使ってください!!」
翔吾 「おい!!俺は良いのかよ!!」
大河は翔吾の背中を押して山口教師に差し出した。
大河 「後で、何んでも言う事聞いてやるから……」
大河は翔吾にささやいて、お辞儀をするとそそくさと更衣室を後にした。
大河が出てきて、他の部員が気付く。
大河 「お邪魔しましたっ。」
大河は会釈をしながら歩いていく。
「大河さーーん!またてきて下さーーい!!」
と大河の背後から声をかけられる。
軽く手を振りながら、大河は柔道場を後にした。
山口教師 「相良。いい友達を持ったなw 翔吾も、すげー兄貴何だぞあれはw」
相良 「そりゃ、タイガーですから!w」
翔吾 「知ってますよw」
三人は大河の優しさと鬼才に興味が絶えないのである。
---------------兄-------------------------
大河は暑いなか、アイスを食べながら帰宅していた。
アブラゼミや、ミンミンゼミがより暑さと湿度を上げていく。
ガチャりと玄関のドアをあけて、真っ先に冷房を入れて着替える。
大河 (汗ぐっしょり…先にシャワー浴びよっかな…)
大河は夕飯の支度をする前にシャワーをあびる。
翔磨 「大河かー?帰ったのかー?」
翔磨の声がリビングに響くが大河はシャワーの音で全く聞こえない。
翔吾はリビングに向かい、見渡すが大河の姿はない。
ほんのり香るお風呂の匂いに翔磨は気付いた。
翔磨 (風呂か………いい事思い付いたw)
翔磨は音を立てずにゆっくりと、風呂場のドアをあける。
大河は頭を洗っている為、背後が確認できない。
翔磨は抜き足、差し足、忍び足を使って確実に大河に近づくそして大河がシャワーを止めた瞬間驚かそうとした。
しかし、大河はついでに風呂掃除もしようと思い、不意に振り向いてしまった。
そして案の定、2人は絶叫してしまった。
大河 「ぅわっぁ゛ー!?!?!!」
翔磨 「だぁっあ゛ー?!!!?!」
風呂場に奇声が響き渡った。
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