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ep 92 極地への近づき
しおりを挟む大河 「…………あと、少しなんだ…」
大河はどこを見ているのかわからない目をしている。
何も感じない。
翔座は足元に落ちた物を蹴りながら大河にズンズンと近づき、大河のボロボロの姿をジッと見つめた。
翔座 「三つ巴………何でやった。」
大河 「……………。」
翔座 「やらないって。約束したよな?…」
大河 「……………」
翔座 「………答えろ。」
大河 「……話す事は何も無い。」
翔座 「…ッ!!!」
翔座は大河の胸ぐらを両手で掴もうとするが、大河は先に片手で翔座の胸ぐらを掴んだ。
翔吾 「?!兄ちゃん?」
翔磨 「っ?!大河?!」
翔座は大河と目を離そうとしない。
大河はハッと気付き、掴んだ翔座の胸ぐらを離してゆっくりトンッと押した。
大河 「……何も聞かないでくれ……。…もう、1人にしてくれ。」
翔座 「…何も聞かないが、1人にはさせん。怪我もしてる…」
大河 「……血は止まってる。……今は少し、1人にさせてくれ」
翔座 「……五分だけだ。…その間に片付けろ。……いくぞ、お前ら。」
翔座は強引に2人を外に連れて行き、出ていく。
翔磨 「オヤジ!どういうつもりだ!!あのままじゃあいつ!」
翔座 「大丈夫だ。……大丈夫だったんだ。…俺たちが思っているよりあいつは。…俺は信じてる。」
翔吾 「……無責任なこと言ってんじゃねーよ……」
翔吾は悲しそうに1人リビングに向かう。
大河は片付けを済ませ終えると二階に行き服を着替えている。
すると翔吾が大河の部屋に入り、薬箱を持ってきた。
翔吾 「兄ちゃん、消毒するから…」
大河 「…ありがと。」
大河は素直に翔吾の言うことを聞く。
傷の手当てを終わらせると翔吾はすぐに出ようとすると大河は翔吾の腕を掴み引き止める。
大河 「昨日、…きの、…」
翔吾 「…うん。」
大河 「昨日…兄貴と父さんが2人で俺を抱いたんだ……2人で。」
翔吾 「……それが、ショックで三つ巴を?」
大河 「…違う。…俺嫌だったのに嫌じゃなくなって……頭の中がぐちゃぐちゃなんだ!!!」
ガバッと翔吾が大河を抱きしめる。
大河 「俺、家族なのに、男なのに、欲情して、……おかしいだろ。…なんの感情か、分からないんだ……だったらいっそ…」
翔吾 「大河兄ちゃん。…何もおかしくない。兄ちゃんの感情は家族愛だ。他人への愛じゃない。……欲情するはオナニーの延長線だ。」
大河 「…そうなのか?……俺は…」
翔吾 「そうだ。兄貴はただ受け入れればいい。ただの自慰行為だ。心配はする事ない。」
翔吾は無意識にだが、大河に暗示をかけたようだ。
精神的に弱っている中、救いの道を先導してくれる。
「」そのおげか、より暗示を強くした。
大河は泣きませず、笑いもせず、ただ翔吾に包まれて安心をしたのだった。
大河ら心が正常に戻っていく。
大河 「…ありがとう。……よし!!飯作るな!!」
翔吾 「おぅ!頼む!!」
翔吾 (本当は兄ちゃんに全てを話してあげたい。でも、出来ねーんだ……分かってくれ。…兄ちゃん)
翔吾は大河が分かる筈がないのに、ただ願うしかなかった。
リビングに大河が降りてくる。
いつも通り、変わらず準備を進める。
無理はしてないのが伝わってくる。
翔座 「大河ぁ、コーヒーちょうだいw」
翔磨 「俺もー」
大河 「おけ、ちょっと待って」
翔座と翔磨は翔吾が上手く大河をケアしたのだと確信した。
翔吾 「俺も手伝うw」
大河 「おっ、やってみるか?w」
大河はコーヒーを入れつつ、翔吾に朝食の準備を手伝わせた。
目玉焼きを翔吾に任せている。
大河は2人にコーヒーを渡す。
翔吾 「兄ちゃんもう、水入れるのか?」
大河 「おー、もーいいぞー」
ジュワー!!!
水が蒸発する
翔吾 「ぅあ゛ーーー!!」
大河 「うわーじゃないw」カポっ
大河はフライパンに蓋をする。
翔座 「なんちゅー、声だよw」
翔磨 「ビビんなよw」
翔吾 「うるせーっ///意外と怖えんだぞ!」
大河 「フライパンの温度が高いときはよく跳ねるから、すぐに蓋をしろ。蒸し焼きだ」
翔吾 「な、なーる…」
そして2人は想像したより早く朝食の準備を済ませた。
4人が先に着き「いただきます。」
翔磨 「まーまー、だなw」
翔吾 「だったら食うなよw」
翔座 「なかなか上手いじゃねーかw 」
大河 「そりゃ、俺も手伝ったしw」
翔吾 「案外料理もおもしれーかも。フランベしてーw」
翔磨 「やめろ!家が無くなるだろ!」
大河 「んな大げさな。」
いつも通り賑やかな食事である。
食事が終わり片付けを始めると
翔吾 「兄ちゃんそいえば、今日浩介と遊びに行くんだろ?何時からだ?」
大河 「確か10:30からだ。向かいにきてくれるらしい」
翔座 「お、さっそくデートのお誘いだなw」
翔磨 「浩介さんもやるなw 行ってこいよ」
大河 「デートじゃないw ぼちぼち準備しよ。」
大河は家の事を済ませると部屋に行き支度を始める。
翔座は浩介にメールを打った。
《大河のケアを頼む》
するとすぐに返信がくる。
「任せてくれ。」
翔座はそのまま携帯を閉じた。
翔座 (鷹虎家の修行道具、三つ巴。……遂に大河はそこまで来たのか。…和泉ですら使うことは無いと言っていたが……。)
翔座は大河の行く末を見守る事しか出来なかった。
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