剛柔なお前の為。

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ep 6

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畳を擦り切る音が響く。

大河は翔磨の足を自分側の前方に狩る。



翔磨は後ろに重心が揺らぐと同時に大河が一気に前進する。


翔磨が片腕で大河の右脚太ももを押さえて進行を妨害する。

翔磨 (クソ重ぇ!)

翔磨は片腕の拳で大河の顎を狙い、ショートアッパー繰り出す砕くつもりだ。


翔磨 「ウラ!」

しかし、アッパーは大河の左手で阻止されてしまった。



大河は瞬きをもせず、なんの躊躇もなく右手の掌底を下から突き上げる。


翔磨 (ヤベぇ!!)


翔磨は受け身も取らず、無理矢理後ろに倒れ込む。


翔磨「⁈!ぐぅん!、!」


直撃は免れたが顎をかすめられた。


しかし翔磨は瞬時に右足を使い、大河を巴投げする。



大河は前転し受け身をとる。


すぐさまお互い立ち上がる。



翔磨 「ハァハァハッ、あの距離でまさか首をカリにくるとは、ハァハァ、兄ちゃんびっくりだぜぇ!ハァハァ!」


大河は沈黙を保っている。

右手右足を前に左手左足は後ろに構え見つめている。


翔磨は少し距離をとり、息を整わせる。



翔磨 「大河ぁ、お前、あれか。…やっぱ俺を本気で殺るつもりだったろ?」



道場内全員の視線が大河に集まる。




大河は、ただこくりと頷いた。



翔磨 「いいぜぇ!!素直な子は大好きだ。」


翔磨も総合格闘技で培った経験と技と天性の才能がある。



弟相手だか、闘う事が好きでウズウズしてるのも事実である。



翔磨 「それじゃ、遠慮なく俺も、全力でお前を。」



大河の目がぴくっと見開く!!



翔磨 「殺る!!!」



一気に詰め寄られる大河、翔磨が怒涛の攻撃ラッシュを放つ。


左右上下どこから攻撃がくるかわからない。


翔磨のいきなりの変性攻撃に反応するのがやっとの大河。

威力をいなして弾いているが全ては回避はできない。



大河 「っく!!っー!!ハァハァハァ!」



翔磨 「大河、大河ぁ!いいぜぇ!!でも!!残念だった、っなぁ゛!!!」


翔磨はスピードに乗った裏拳と、全体重がのった回し蹴りが大河に炸裂する。



いなすことのできない打撃に両手で受けるしか方法は無く、身体が後ろに飛ばされ壁にぶち当たる。


大河 「ぅくぁ゛っ!!……」



田中以外の同伴3名が動きそうになる。

今すぐにでも止めたい一心だ。

だが、まだ田中の指示はない。

他のギャリーは耐えるしかない。



壁に背中を預け尻餅をついている大河が視線を前に向けたとき、兄である翔磨が見下ろしていた。




翔磨は大河を左手で少し持ちあげ、首に手をかけ耳元で囁く。



大河 「カハァッ!ぁぐ!!ぁ゛っ…」



翔磨 「苦しいか?苦しいよなぁ?チカチカするよなぁ?…大丈夫だ、兄ちゃんがすぐに逝かせてやるぜ。…ハァハァ」



首がさらに持ち上げられようとしたその時だった。


田中 「翔磨!離せ!!!それまでだ!!!!」


田中が大声を出す。

4人が一斉に引き剥がしにかかろうと動きだす。

「おい!終わりだ!離せって!」

「翔磨さんって!!駄目だって!!」


反対側の2人も駆け寄ってくる。



しかし、翔磨は低く誰よりも落ち着いた穏やかな声を発した。



翔磨 「…心配すんな。意識を堕とすだけだ…。」


この一言で何故か4人は止まってしまいら誰1人翔磨に触れられなかった。

あまりにも翔磨が冷静だったので、動けなかった。


大河 (ヤバイ、ほんとに墜ちそっ。。)



そして翔磨は大河だけに聞こえるよう、もう一度耳元で囁く。


翔磨 「大河ぁ。、お前の必死な顔。エロいなぁ……俺は好きだぜ。ハァハァ…墜ちろ。」



大河の意識が遠のいていくなかで、走馬灯が走った。


母の声が蘇る。



和泉 「大河っ。本当に困ったときや苦しくて辛いときは、どーするらばいいと思う?」


大河 「ンーーーー、男は黙って堪える!!」



和泉 「あっははは!!それはお父さんが教えた事ね。しっかり覚えてて偉い!」


和泉は大河の頭を愛おしそうに撫でる。


和泉 「それじゃお母さんからも、もう1つ教えようかな。それはね………。」


“ 呼吸をとめて、流されること“



翔磨 「?堕ちたか?やっとかよ、。」



翔磨は大河耳元から離れようとした瞬間だった。

フッと翔磨の顎に大河の手のひらがつく。



翔磨 「ん?…最後の可愛い抵抗がァっ?!!?!」


翔磨の巨体が少し浮き上がった。


あまり衝撃に、後ろによろける。



翔磨 (?!脚がうごかね。。!?)



大河は瞬時に後ろにまわり込み、翔磨の首元を狙う。



一瞬遅れて田中さんが声を張る。

田中 「た、大河くん!止まれ!」
田中 (間にあえ!!!!)


4人が同時に大河に覆い被さり引き剥がす。



翔磨は膝立ちしたまま動かない。
大河も座りこむ。


田中「翔磨、お、おい翔磨ぁ!」
 

急いで田中さんが生存確認をする。



田中「…はぁー。、……軽い脳震盪だ…すぐ処置するあんまり動かすなっ!!!」


「えっ!?あぁ!はい!!」


2人への安堵と心配が混同した田中が発した声は震えていた。

翔磨は仰向けに寝させられた。


大河はのそりと立ち上がる。


同伴者一同(大河くん?)


ゆっくりと翔磨の元に近づき、翔磨の耳元にうずくまり震えていた。


大河  「っ、ッ…………。」


大河は翔磨に少し濡れている頬を擦り寄せている。


翔磨 「なんで勝った奴が泣いてんだょ……」


翔磨は大河の頭を大きな手で撫でた。

「大丈夫。大丈夫」と宥めるように。


あれから2人は田中からの安静処置命令としてベットで休んだ。


同じベットで休む2人。
大河からのお願いで2人一緒に居たかったのだ。


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