剛柔なお前の為。

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ep 3

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大河はやっと朝食にありつけると、思いながら食事を開始する。


だが、三人の野獣どもは大食感だ。


山盛りのご飯がみるみるうちに消えていく。


3人の食べている顔をすっと見ると、全員が美味しそうに口いっぱいに頬張っている。


作り甲斐があるとはこの事につきる、と思う大河である。



そしてお代わりの連鎖がはじまる。


翔座 「……ん!」


翔座は大河に茶碗をだしおかわりをおねだりしている。


大河は何も言わずに茶碗を受け取りご飯をよそう。


大河 「ぁいよ…」


大河はお代わりをよそい、コトっと茶碗をおくと、翔座はニカッと笑いまた食べてはじめる。



そして兄弟揃って「「おかわりっ!」」とおねだりされたが、ここは甘やかさず自分でやらせた。


隣から翔吾の「ちっ、」と、いじけている舌打ちが聞こえる。


大河は大黒柱である父親にしかお代わり受け付けしないのだ。


亭主関白ではない。


これは亡き母(和泉)がよくやっていた事であり、自然と大河の目についていたのだ。
 


そして大河以外の人間は今、卵かけご飯に夢中なのである。


翔磨 「おぃ、翔吾ぉ!早く醤油よこせ!」


翔吾 「ちょっと、まてって!今俺がとったんだから!」


翔座 「いいから、はよ回せ!時間がねーんだこっちは!」


大河 「皆わかったから、飯飛ばすな!!」

慌ただしい朝食はあっという間に終了する。

げふぅっ、と満腹になった野獣ども三人がいる中大河は片付けに入った。


自分の食器は流しに持っていくのが決まりなので洗い物はさほど大変ではない。


これも母の教えである。


翔座がスーツを羽織り、身支度を整える。

翔座 「んじゃ、いってくるなー! あぁ!大河!今日遅くなるから晩飯はいらんぞー!」


大河の「はーい」の返事と同時に「じゃなー」と翔座は出勤した。



洗い物をしながら時計の時間を見てトイレにいる翔吾に呼びかける。


大河 「翔吾ぉ!洗い物したらすぐ出るから!!準備しとけぇー!遅刻できんぞー!」


翔吾 「うぃーすー……」

 

坂鬼家は家は広いが、自宅兼 兄翔磨の総合格闘技ジムで設立されている。

ゆえに翔磨は基本家にいる。


大河と翔吾は学生であり大河は高校3年生、翔吾は2年生で同じ学校に通っている。


兄の翔磨も同じ学校の卒業生であり、翔磨が3年生とき大河が1年で入学してきた。


さほど頭は良くない高校だが武闘派が多い強豪高校である。


厳しい競争に勝てない人間が荒くれ者になる事も事実少なくはなかった。


そして大河は兄が不良になるのを恐れて、わざと自身のランクを落として、入学したのだ。


大河はその事は誰にも言っていない。



父親である翔座は、大河の進学意思に対して何も反対はせずに、ただ「そうかっ。」と笑い深くは追求しなかった。


そして、大河を追うように翔吾も入学を希望して現在に至る。

大河は洗い物を終わらせる。


大河 「ごめん兄貴、洗濯物だけお願い!」



翔磨 「ぇーーーだりーな。」


大河 「頼む!!!よろしく! 翔吾ぉ先行くぞー!!」


翔吾 「兄ちゃん!ちょっ、まてってー!」


翔吾は情けない声出しながら大河を追いかける。


翔磨は2人を見送る。



翔磨 「へいへーい、いってらっさーい」


と呟いた。



---------所少し飛んで学校より--------



翔吾と大河は毎朝、一緒に登校する。

2人は校門まで着くと校門前に立っている生徒指導部体育教師(鬼)の、担任山口教師に挨拶をされた。


山口教師 「よっ!坂鬼兄弟。愛も変わらず仲良しだなぁー!」


がははっと笑う教師は「いい事っいい事っ」などと言っている。


しかし、なぜだかあまり、坂鬼兄弟は好きにはなれないようだ。


大河 「おはようございますっ」
翔磨 「ござまーす。」


そそくさと、逃げるように進む2人に山口教師が話しかける。


山口教師「あっ!坂鬼大河!昼休みおれの所に来い!進路相談の件だー!!」

山口教師は慌てて叫んでいる。


大河 「わかりましたーっ!」


大河は少し恥ずかしそうに返事をして下駄箱に向かう。


しかし、兄弟をみる教師の目線は何か熱いものだったが、誰もまだ気付いていない。


大河は下駄箱につくなり色んな奴らに挨拶される。

「おーーぃ、大河!はよー。」

「大河先輩おはございます!」

「お、坂鬼兄。おはよう!」 

「翔吾の兄さん!また手合わせお願いします」

「今度、大河さんの柔術を……」



大半は大河目当てに来るものだらけだ。

気さくに大河は振る舞っている。


制服もあまり着崩さず普通にしているがはやり凛々しい顔付きと肉体美から放たれるオーラのせいなのだろうか。
自然と人が集まってくるようだ。


翔吾 「んじゃな。兄貴…」

大河 「おー。しっかり勉強やってこーい。」


翔吾はぶすくれながら大河とわかれた。


それを見た翔吾の友人達が話しかける。



友人 a「よーー、翔吾ぉ!!今日も大河さんめっちゃかっこいいなーぁ!!流石、全日本柔道大会優勝者」


大河は柔術家であるが故に、無差別級で翔吾と対戦し圧勝したのだ。



翔吾 「………」

翔吾は苛々しているようだ。


友人 b「そりゃそうだろ!大河さんはマスタークラスだぜ?本当は柔道じゃなくて、柔術らしいけど。ってなーにイライラしてんだよ、顔こえーぞ、いつもだけど。」



翔吾 「いつもは余計だぁ!クソっ、行くぞォラ!」


友人 c「なーんで怒ってんだよー、いつもだけど!!!……」


翔吾 (クソっ!、毎日毎日胸くそわりぃー、おめーらの兄ちゃんじゃねーんだぞ!!)


翔磨は心の中でぼやきつつズカズカと教室に向かう翔吾を友人達が後を追う。

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