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「おい分かったか、中和っていうのはな、つまり異物を打ち消そうとお互いが譲り合うってことだ。一つの別のものに変わるのだ。人だけじゃなくて、物も、液体もこういう反応をするんだなあ。変化をなるべく求めない。ずっと均一でいられる方法を探すんだ。それがたとえ、自分を変えることでも」カンカンとチョークの音がする。
これ本当に理科の授業なのだろうか?
私は頭を揺さぶる。
幻覚ではないような、幻覚であるような、本当で嘘のような話を耳に通している。
どこで?学校に決まっている。
決まっているのだけれども、そこにみーちゃんの姿はない。
私はもっと体が透き通って、ビロードの持つ言葉の響きようになってしまうのを噛み締めながら、少し涙す。
ぐるんと回転するように私が回って、目をあげるとみーちゃんは竹ちゃんと歩いている。私はそれをずっと下から見ている。もちろんみーちゃんは笑っている。
髪の毛はショートカットになってしまって、それが笑うたびに揺れている。
そこに男子が駆けつける、高橋である。
声は無論聞こえない。
それでも何か言っていることはわかる。
口を大きく開けて、頭を下げている。
竹ちゃんは自ら少し離れる。
みーちゃんは微笑みながら何かを言っている。
目じりに少し光るものが、私にはなぜかこんなにも離れていながらありありと見える気がした。
この頃は特に夢と涙をよく意識する。
その理由は分かってはいけないし、そして理由という「型」にはめ込もうとすること自体ダメだ、と思う。
ふっと私は意識が戻った。
それでもみーちゃんは私の届かないようなはるか遠くにいる。
もうすぐ夏休みだ。
早とちりの蝉が鳴いて、みーちゃんは髪の毛を耳の後ろへ上げた。
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