『観察眼』は便利

Nick Robertson

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それから20分ほど経過しただろうか。やはり会話は弾まないまま、お開きになってしまった。

「…ふあーあ、疲れたなぁ。帰ったらすぐに寝よーっと」
「今日はぐっすり寝れるだろうさ」
「だろうな。悪夢にうなされなかったらの話だが」

そうは言ったものの、なかなか足が動かない。
こんな痩せた会話だけで終わらせて本当にいいのか。もっと他に話すことはないのか。

「………じゃ、お先に」
「……おう」
運転手が帰って行く。

「僕も行くよ」
「……おう」
少年は、立ち上がりかけて、俺の手をグイッと引っ張った。

「??」
「元気出して帰るよ。仕事はできたんだから。落ち込むことなんて、何もない。じゃーね」
「……」

手が離れる。そして、戸が開閉する音。
「……」
帰ろう。ここから家までは近かったはずだ。そういう店を選んでくれたんだから。
俺は、机の上に置いてあった金を集める。
みんな律儀だから、キッカリ一人分だけの料金を置いていった。
俺の財布には、まだ余裕がある。

(…遊ぼっかな……)
このまま寝て、世を明かすことは、なぜだか罪深いことのような気がした。
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