『観察眼』は便利

Nick Robertson

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「それでも、その近くには人が住んでんだろ?」
「そう。そこを守るために」
「じゃ、やっぱ安全じゃん」

守り人が全員何かしら支障をきたしていたら、それはそれで問題だろうけど、まさかそんなことはないだろうし。

「溢れ出さないように閉じ込められてるんだよ。すごい頑丈な扉に」
「へー。頑丈な扉がありゃ大人しくなるくらいのエネルギーか。思ったより大したことないな」
「違ーう!すっごい知識を持ってて、しかもすっごい術を使いこなせてたある老人が、自分の命を犠牲にして造ったって言われてる!!」
「ふーん。でもさ、その老人の名前って、どうせ知られてないんだろ?じゃあ嘘だな。それか、もしその老人がいたとしても、死んだのは寿命のせいだろ」

俺が言うと、少年は額を手で押さえてため息をつく。

「で、いつ着くんだ?そこ」
運転手へ気楽に尋ねた。
「あと5分もかからないだろうな」
彼の面持ちがどこか緊迫しているように見える……のは気のせいか。さっきまでもこんなだったな。

「やめといたら?とにかく良いことにはならないもん」
「でも、スパイが狙ってる可能性が高いんだろ?って言うか、普通そこを狙うわな。この街はそれを守るためにあるんだから、この街に攻め込む理由ってのはそれしかないだろ」

それはそうだろうけど、と男の子は頬を膨らませる。

「……でも、やっぱり行くべきじゃないんだ。あんなトコ。それよりも、スパイを捕まえた方が…」
「あいつらは、遅かれ早かれほぼ確実にその場所に向かうんだろ?じゃ、待ち伏せとくのが得策じゃないか。捜索は難航してるんだから」
「………。でも、もう既に僕らより優秀な人達がね、数十人体制で四六時中見張ってるから…」
「つべこべ言うなよ。そいつらに『観察眼』なんていう便利な術を持ってる奴がいるか?」
「…、…………」

ほーら、何も言い返せない。
けど、どうやって『観察眼』を使えば良いんだろうなぁ。エネルギーって調べられるものなのか?

「とにかく、俺はそこで見張りをするぞ」
「でもね、警備もビックリするくらい厳重で……」
「ふふ、そのくらいの方が燃えるってもんだ」

偉そうなことを言ってはいるが、俺はこれに賭けているのだ。
賭けたモノは自分の命。ひゃー、恐ろしぃ。

「見えてきたぞ。あそこの建物の地下だ」
「???どれのこと言ってんだよ」
「えーとな、瓦屋根なんだが、分かるか?」
「そんなの、そこらじゅうにあるじゃねぇか」

街を外れた小さな集落地のようだった。古そうな家が並んでいる。集合住宅街かな?

「よし、到着だ。思ったより早かったな」

車が停まる。
少年はカタカタと震えているようだが、俺は呆れてしまった。

「なーにが危険地帯だよ。別になんのことはない古民家みたいな場所じゃん」
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