26 / 132
26
しおりを挟む
「で、依頼の場所はどこなんだ?それに、報酬とか」
「ローンっていう金持ちの邸宅よ。お金の件は………、分かるでしょ?」
「たんまりってわけか」
「そうそう」
俺の気持ちはよそに、カズヤとフミはベラベラ喋る。見つかったらどうすんだっつーの。
「でも、どうして探偵を雇わなかったんだろう。まさか『探偵』と『探検』を間違えたわけもないだろうし」
「それは行ってみないと、どうにも言えないことなんだけどね」
「そっか。ともかく依頼主と会わなくちゃ」
おじさんはそのまま向こうに消えて行った。俺は溜めていた息を吐き出す。
「おーい。話はまとまったぜ?」
「オッケ。俺も後からすぐ行く」
「『後から』?一緒に行かないのか?」
「ああ。ちょっとやらなきゃいけないことがある」
試しに言ってみた。突然で、怪し過ぎる行動だが、致し方ない。一旦頭の中を整理する時間が必要なのだ。
「んー、どうしても?」
「まぁ、そうだ」
「ダメ」
「やっぱりか」
「当然でしょ。チームなんだよ?」
簡単には帰してくれねぇよな。だったら、自分で行くしかない、か。『体内エネルギー上昇』を使われても逃げ切れるくらいの余裕がないとな。
「行くよ、リョウタも」
「…分かったよ」
「え、こんなので折れてくれるの?切羽詰まった用事でもなかったんだね?」
フミに刺すような目を向けられる。
………明日、葬式かもしれん。
俺は眉間を指でつまんで、「すまん。確かに急用じゃないんだ」と言った。なるべく声の調子を変えないようにしたかったのだが、少し震えてしまった。……さりげなく『威圧』してやがるな。
「結局、行くわけだな?それじゃ、ローンの所へ行くぞ。街の中心にあるらしいから」
(ちゅ、中心だと?!)
俺は思わず顔を上げた。
「なんだ、おかしいか?」
「…………」
…行動を、開始するつもりだ!!俺の、目の前で!!!
「リョータ」
フミが耳元で囁いた。
「?!」
カズヤを見ると、ナギに何か質問をされていた。
………他愛もない話で気をそらせている!!
「あなた、今の状況分かってるの?」
「!!!」
決定的だ。決定的な発言をされた。こいつらは、やっぱりスパイなんだ!!
「ねぇ、私達は二人よ。攻撃もできる。あなたには無理なんでしょ?表示板の反応なかったもんね。今まで『観察眼』だけでのうのうと暮らしてきたんでしょ?」
「…………」
「お仲間がどれだけ周りにいたって無駄だからね。私達はあなたを逃がしはしない。いざとなったら人質に取る。………私は脅しがそんなに好きじゃなくてね。気が早まって殺しちゃうかもしれないよ?」
ゾワリ、と背筋が下から上へ動く。
「どう?分かった?」
「……何が狙いなんだ」
「ふふ。言うわけないでしょ。このおバカ」
コツン、と胸板を突かれた。
(そうか。今まで俺を放っておいたのは、人質にするためだったんだ!)
こりゃ、終わったな……。駆けつけてくれる仲間なんていないけどさ。
「ローンっていう金持ちの邸宅よ。お金の件は………、分かるでしょ?」
「たんまりってわけか」
「そうそう」
俺の気持ちはよそに、カズヤとフミはベラベラ喋る。見つかったらどうすんだっつーの。
「でも、どうして探偵を雇わなかったんだろう。まさか『探偵』と『探検』を間違えたわけもないだろうし」
「それは行ってみないと、どうにも言えないことなんだけどね」
「そっか。ともかく依頼主と会わなくちゃ」
おじさんはそのまま向こうに消えて行った。俺は溜めていた息を吐き出す。
「おーい。話はまとまったぜ?」
「オッケ。俺も後からすぐ行く」
「『後から』?一緒に行かないのか?」
「ああ。ちょっとやらなきゃいけないことがある」
試しに言ってみた。突然で、怪し過ぎる行動だが、致し方ない。一旦頭の中を整理する時間が必要なのだ。
「んー、どうしても?」
「まぁ、そうだ」
「ダメ」
「やっぱりか」
「当然でしょ。チームなんだよ?」
簡単には帰してくれねぇよな。だったら、自分で行くしかない、か。『体内エネルギー上昇』を使われても逃げ切れるくらいの余裕がないとな。
「行くよ、リョウタも」
「…分かったよ」
「え、こんなので折れてくれるの?切羽詰まった用事でもなかったんだね?」
フミに刺すような目を向けられる。
………明日、葬式かもしれん。
俺は眉間を指でつまんで、「すまん。確かに急用じゃないんだ」と言った。なるべく声の調子を変えないようにしたかったのだが、少し震えてしまった。……さりげなく『威圧』してやがるな。
「結局、行くわけだな?それじゃ、ローンの所へ行くぞ。街の中心にあるらしいから」
(ちゅ、中心だと?!)
俺は思わず顔を上げた。
「なんだ、おかしいか?」
「…………」
…行動を、開始するつもりだ!!俺の、目の前で!!!
「リョータ」
フミが耳元で囁いた。
「?!」
カズヤを見ると、ナギに何か質問をされていた。
………他愛もない話で気をそらせている!!
「あなた、今の状況分かってるの?」
「!!!」
決定的だ。決定的な発言をされた。こいつらは、やっぱりスパイなんだ!!
「ねぇ、私達は二人よ。攻撃もできる。あなたには無理なんでしょ?表示板の反応なかったもんね。今まで『観察眼』だけでのうのうと暮らしてきたんでしょ?」
「…………」
「お仲間がどれだけ周りにいたって無駄だからね。私達はあなたを逃がしはしない。いざとなったら人質に取る。………私は脅しがそんなに好きじゃなくてね。気が早まって殺しちゃうかもしれないよ?」
ゾワリ、と背筋が下から上へ動く。
「どう?分かった?」
「……何が狙いなんだ」
「ふふ。言うわけないでしょ。このおバカ」
コツン、と胸板を突かれた。
(そうか。今まで俺を放っておいたのは、人質にするためだったんだ!)
こりゃ、終わったな……。駆けつけてくれる仲間なんていないけどさ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?
石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。
彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。
夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。
一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。
愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる