『観察眼』は便利

Nick Robertson

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「おい、寝過ぎだぞ、お前」
「え…………」

俺が肩を揺すると、カズヤはしだいに目を大きく開け始めた。

「ごっ、ごめんっ!!」
「あ?」
「ほら、俺、この頃カッとしちゃうことがあって………。こんなに大変なことをしたのは初めてなんだけど……。いや、こんなこと言い訳にならないよな。とにかく済まなかった!!」
(この頃?何かあったのか?)

ワケありらしいな。気になるぞ。

「おっ、おっ、お前、どこか切ってるじゃねぇか!大丈夫なのか?!」
「え、なんかついてる?」
「唇の下に血が………」
「ああ、拭えてなかったのか」

人差し指でさすると、固まった血がパラパラ落ちた。

「うわあああ!俺は何てことを!!」
「大げさだな」
「どう落とし前をつけりゃ良いんだ?殴り返し……たくはないよな、お前のことだから。じゃ、何すりゃ…」

一人で騒いでろよ。その間に、俺はお前の体に何が起きているのかを調べてやる。

『通常能力 雷撃 中
                封印』

「………」
「どうした?」
横からナギに聞かれた。

「いや、どーでも良いことさ」
「?そうか?変な顔してたけど」

…今日は不思議能力のオンパレードなのか。『封印』ってなんだよ。通常能力って扱いなのに、上中下のどこにも属さないなんて。上手いとか下手とか関係ない技なんて、聞いたことないぞ。変な顔になって当然だ。

(まっ、さらに詳しく見てやるだけだもんねー)
俺は早速その『封印』とやらに焦点を合わせる。

『封印
自分の体内エネルギーを1%に抑える。その間、精神状態が不安定になりやすい』

(え?どういうことだ?こいつは自分の能力をほとんど仕舞い込んでるのか?なぜ……)

また新たに要注意人物を発見してしまったようだ。
こいつが全力を出せば、今の能力の100倍のパワーが出るってことか。

(もしや………)
俺はある考えが頭をよぎったが、隣にはナギとフミもいたので、話せなかった。スパイからすれば、これほど怖い情報も滅多にないだろうな。

「じゃ、そろそろ次の依頼に取り掛からない?」
「え、もう受諾したの」

やっとカズヤが動きを止め、そう質問した。

「うん。二人がゴタゴタしてる時に、ちゃっかり」
「そんな暇があるんなら、俺を止めてくれよー」

チラリ、と何かが視界の端に映った。
………おじさんだ。
俺はそれを俯いてやり過ごした。
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