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組合のどデカい建物が見える。色は茶色で地味にしてあるんだけど。
「できれば難しい依頼を受けたいもんだね」
「そうね」
(どうしてスパイが依頼を受けようとするんだ?その意図は?)
依頼主がスパイ団のボスとか。いやぁ、それはなさそうだ。みんなが見る場所に暗号文を置くやつもいないだろう。横に文字が並んだ依頼を縦読みすれば集合場所になった、なーんてことがあったら面白そうだけど。
(あるとすれば、カモフラージュか?)
いや、それ以外考えられない。依頼をこなす間に色々、例えば地形やらなんやらをチェックするとか。……用心しておこう。
カズヤがガラス戸に手をかざすと、体内エネルギーが伝わって開いた。
直接触れるタイプのドアだったら、「他の衆が触りまくってるなんてバッチィですわ!」と貴婦人がプリプリ怒りだすかもしれない。だから手をかざすタイプなんだな。アッタマ良いね!
依頼掲示板の前には既に結構な人が溢れていた。
「ここら辺からでも文字は読めるだろ?」
「かろうじてね」
カズヤはここから依頼を選ぶつもりらしい。両手を望遠鏡みたいにして向こうの文字を眺めている。
……あのぅ、何歳でいらっしゃいますか?俺もやったことあるけど、それはずいぶん昔の時分だ。
「えーとね、ここからじゃ詳細欄の小さな文字は見えないな。とりあえず、受付に行って『一番難しい依頼をくれ』って言ったらなんとかなるだろ」
「そうだな。じゃ、早速行こう!」
依頼を受領するためには、受付に行ってやりたい仕事の番号を言わなければならない。その番号というのは依頼の紙の右上に記されているのだが、まぁ、一番難しい仕事って言うのも構わないだろう。
「あの!バリムズの仕事をくれ!」
カズヤの行動は素早かった。ちょっとオットリした奴だと思ってたんだけど、違ったみたいだ。俺が一歩踏み出すまでに、もう受付に着いている。
「ば、バリムズ?」
受付の人は首をかしげた。
「バリバリ難しいってことだよ!最難関の依頼はねぇのか?!」
「あっ、そういうことですか。少々お待ちください……」
受付の人は急いでパソコンをいじった。
「あー、最も報酬が高いもの、で、よろしいですか?」
「オーケーオーケー」
「それなら、28番の、『ロティア採取』が………」
「あっ、じゃあ、それはパスで」
「えええっ??!」
最も報酬額の多い依頼を聞いておきながら、さっさと否定するカズヤに受付の人はついていけないようだ。
「だから、それはパスで。バカらしいから」
「は、はい?」
「バカらしいの。ロティアを摘んでくるのが」
受付の女の人、困ってるなぁ。シャチソウの回復薬のこと知らないもんだから、当然だろう。
「……ほら、これが最新の回復薬の姿よ」
フミもどうだとばかりに実物を差し出す。
「こ、これは……?」
「聞こえなかった?最新の回復薬よっ!」
胸を張っているところ済まないとは思ったが、俺もその話に介入させてもらった。
「おい、フミっ!」
「なによ、売ってくれたじゃん。これ、私の物よ」
「いや、そうじゃなくて………。使わなかったのか?」
「使うわけないじゃん。転売してお金儲けするの」
(コンニャロォ!)
最初からそのつもりだったのか!くそっ!騙されたぞ!!
「できれば難しい依頼を受けたいもんだね」
「そうね」
(どうしてスパイが依頼を受けようとするんだ?その意図は?)
依頼主がスパイ団のボスとか。いやぁ、それはなさそうだ。みんなが見る場所に暗号文を置くやつもいないだろう。横に文字が並んだ依頼を縦読みすれば集合場所になった、なーんてことがあったら面白そうだけど。
(あるとすれば、カモフラージュか?)
いや、それ以外考えられない。依頼をこなす間に色々、例えば地形やらなんやらをチェックするとか。……用心しておこう。
カズヤがガラス戸に手をかざすと、体内エネルギーが伝わって開いた。
直接触れるタイプのドアだったら、「他の衆が触りまくってるなんてバッチィですわ!」と貴婦人がプリプリ怒りだすかもしれない。だから手をかざすタイプなんだな。アッタマ良いね!
依頼掲示板の前には既に結構な人が溢れていた。
「ここら辺からでも文字は読めるだろ?」
「かろうじてね」
カズヤはここから依頼を選ぶつもりらしい。両手を望遠鏡みたいにして向こうの文字を眺めている。
……あのぅ、何歳でいらっしゃいますか?俺もやったことあるけど、それはずいぶん昔の時分だ。
「えーとね、ここからじゃ詳細欄の小さな文字は見えないな。とりあえず、受付に行って『一番難しい依頼をくれ』って言ったらなんとかなるだろ」
「そうだな。じゃ、早速行こう!」
依頼を受領するためには、受付に行ってやりたい仕事の番号を言わなければならない。その番号というのは依頼の紙の右上に記されているのだが、まぁ、一番難しい仕事って言うのも構わないだろう。
「あの!バリムズの仕事をくれ!」
カズヤの行動は素早かった。ちょっとオットリした奴だと思ってたんだけど、違ったみたいだ。俺が一歩踏み出すまでに、もう受付に着いている。
「ば、バリムズ?」
受付の人は首をかしげた。
「バリバリ難しいってことだよ!最難関の依頼はねぇのか?!」
「あっ、そういうことですか。少々お待ちください……」
受付の人は急いでパソコンをいじった。
「あー、最も報酬が高いもの、で、よろしいですか?」
「オーケーオーケー」
「それなら、28番の、『ロティア採取』が………」
「あっ、じゃあ、それはパスで」
「えええっ??!」
最も報酬額の多い依頼を聞いておきながら、さっさと否定するカズヤに受付の人はついていけないようだ。
「だから、それはパスで。バカらしいから」
「は、はい?」
「バカらしいの。ロティアを摘んでくるのが」
受付の女の人、困ってるなぁ。シャチソウの回復薬のこと知らないもんだから、当然だろう。
「……ほら、これが最新の回復薬の姿よ」
フミもどうだとばかりに実物を差し出す。
「こ、これは……?」
「聞こえなかった?最新の回復薬よっ!」
胸を張っているところ済まないとは思ったが、俺もその話に介入させてもらった。
「おい、フミっ!」
「なによ、売ってくれたじゃん。これ、私の物よ」
「いや、そうじゃなくて………。使わなかったのか?」
「使うわけないじゃん。転売してお金儲けするの」
(コンニャロォ!)
最初からそのつもりだったのか!くそっ!騙されたぞ!!
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