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本編
貴女の受けるべき罰
しおりを挟む一線は越えておりません。
学生の本分は勉強ですから!!
なんて、説得力、ないよね。
いくら一線は越えてなくても、マックスとあんなに甘い夜を過ごしてしまったのだから……!!
キスマークつけるの難し過ぎでしょ!!もうもう、恥ずかし過ぎるっ!!
ベッドでマックスに抱き締められながら、私は顔を真っ赤にして、昨夜の事を思い出していた。
まさかこんな展開になるなんて!
でも、ずっと寂しかったし、一晩中ずっと一緒に居られるなんて凄く嬉しい。
私は寝ているマックスに頬擦りをして、「幸せ」と呟いた。
「……っ」
あれ?
マックスの顔がみるみる赤く染まっていく。待って。という事はつまり……
「ま、マックス、起きてる?」
「…………すみません。起きてます」
「~~~っ?!」
お、起きてるなら起きてるって言ってよおおおおおおおお!!!
めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですかっ!!!
私は顔を両手で隠し、恥ずかしさ故に僅かに身体を震わせた。
しかし、マックスにぎゅっとされて、額や瞼にキスを落とされて、私はすぐに満たされた気持ちになってしまう。
「……アリスはどうして、そんなに可愛いのですか?」
「へ?」
私が不思議そうな顔をして首を傾げると、マックスは殊更嬉しそうに瞳を細めた。
「ああ、アリスが俺のものだという証が綺麗についてる。制服ならちゃんと隠れる部分ですが、休日、普段着の時は気をつけて下さいね」
「うん……」
……………………
…………
確かに状況が状況だったので、無理矢理襲われかけた私を、婚約者であるマックスが保護し、一緒に居てくれたのはマズイ事ではないと思う。
けれど。
これって立派な無断外泊な訳です。
だけど、学園の方は大丈夫でした。なかなか戻ってこない私を心配したライラがアルに連絡を取り、アルが機転を利かせて、『アリス・リトフォードは体調不良の為に休ませます』と担任に連絡してくれていたからだ。
しかし、転移魔法陣には誰が何時、何処へ転移したのか記録が残る仕様となっており、学園に戻った私とマックスは早々に呼び出された。
青筋を浮かべて冷ややかに笑う、ニールたんに。
こんなニールたん、初めて見ました。恐い。かなり恐い。
部屋の中、温度低っ!!!
「転移魔法陣の記録は私の方で消しておきました。ですから、アリスお嬢様が学園長や担任に呼び出される事はないでしょう」
「は、はい。ご面倒をお掛けして申し訳ありません。ありがとうございます…………」
「コドウェル先生、ありがとうございます」
私とマックスが頭を下げてお礼を口にするけれど、室内の温度はどんどん下がっていく一方で、思わず身体が震えてしまいそうだ。
そう思っていると、顔色ひとつ変えていないマックスが、上着を脱いで私に掛けてくれた。
マックスも寒い筈なのに……!
「コドウェル先生。俺が罰を受けます」
「ほう?」
「言い訳はしません。アリスを学園の外に連れ出し、外泊させたのは俺です。どんな罰でも受けます」
「……言い訳はしない、ですか。成程。一応我慢はしたみたいですね」
「…………」
「勿論、マクシミリアンには罰を受けて貰います。流石に転移魔法陣の記録を弄るのは大変でしたからね」
「はい。申し訳ありませんでした」
「でも、今回はアリスお嬢様にも罰を受けて貰います」
「?!」
マックスが驚いた顔でニールたんを見る。私も少し驚いたけれど、最初からマックスだけに押し付けるつもりはなかったから。
襲われたとはいえ、その後マックスと一晩過ごしたのは私の意志でもあるんだし。私は真っ直ぐにニールたんを見つめて、「お願いします」と言った。
「今回の事は、私にも責任があります。私にも罰を受けさせて下さい」
私がそう言うと、ニールたんがにこりと笑みを浮かべたが、瞳は笑っていなかった。ゾクリとした悪寒が背筋を走っていく。
「流石は私のアリスお嬢様。その殊勝な態度は非常に好感が持てます。けれど、1つ間違っている事があります」
―――間違っている事?
「今回の件は、ほとんどアリスお嬢様の責任です。原因は、貴女が弱いからです」
「?!」
「コドウェル先生、そんな……っ!」
「マクシミリアンは黙っていて下さい」
ニールたんの髪や瞳が、青く揺らめいた。前にも一瞬だけ見た、氷のように綺麗で冷たい色―――
「私と特訓致しましょう。例え貴女が一人で居たとしても、無力なままで終わらぬように。これが貴女の受けるべき罰です、アリスお嬢様」
* * *
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