上 下
78 / 121
本編

俺は煩悩なんかに負けない!!*マクシミリアンside*

しおりを挟む


婚約式を行ってから数日。
あれから特に何の問題もなく、平和な学園生活を送っている。
あの後、俺としてはリトフォード卿とアルに対する言い訳が何も思い浮かばなくてかなり焦りはしたが。

何故なら、原因は偏に、俺の堪え性が無いのが問題だからだ。

世の男達はどんな鋼の精神を持っているのだろうか?俺は我慢しようと思っても、あまりにアリスが可愛すぎて、すぐに触れたくなってしまう。


「マックス?どうしたの?」


今では昼休憩となると、すっかり俺とアリスの定番となってしまった訓練場の裏手。そこで弁当を広げながら、アリスが可愛らしく小首を傾げて俺をじっと見つめる。

それだけで、馬鹿な俺はドキッとしてしまう。かなり重症だ。


「……アリスが今日も可愛いなと思って、つい見惚れてました」


俺は何だか恥ずかしくて、けれど嬉しくて、微笑みながらそう答える。
すると、アリスは顔を赤く染めて、俺から目を逸らした。


「またそんな事ばっかり言って……でも、その、嬉しいです」


顔を赤くしたアリスも、凄く可愛い。こんなアリスと婚約出来たなんて、まるで夢みたいだ。

アリスが、またチラリと俺の方を見て、くすっと笑いながらハンカチで俺の口元を拭ってくれる。


「マックスって、たまに子供みたい。口元についてましたよ」


……今日の俺の昼食は、学園の購買で買ったサンドイッチだ。普通の貴族の令嬢は、口元に食べかすをつけてしまうような、行儀の悪い男は好きじゃないだろう。
だけど、アリスは笑ってくれる。何の躊躇いもなく、拭ってくれる。

そんな彼女の表情や行動のひとつひとつが、俺には堪らなく愛おしくて、毎日毎日募っていく。
アリスへの、愛おしい想いが。


「……アリス」

「なあに?」

「普段は我慢します。絶対に我慢しますから。だから……」

「??」

「今、少しだけ…………」


?!
今、俺は何を口走ろうとしている?
堪え性の無いのが駄目だと分かっているのに、今また少しだけアリスに触れようとしていた!!

こんなんじゃ駄目だ。
煩悩を捨てろ、マクシミリアン。
今日の鍛練で素振りを500回追加しよう。


「マックス??少しってなあに?」

「いえ、なんでもありません」

「そうなの??」

「はい」


俺は何とか誤魔化して、昼食のサンドイッチを食べ終えた。昼食の後は、いつも少しだけ他愛の無いお喋りを楽しんで、それから互いの教室へと戻る。

アリスと同じクラスだったら良かったのに、この時の別れが何故だか無性に寂しくて辛い。
俺がそんな事を考えていたせいか分からないが、アリスが何か言い難そうに、俺の方をチラチラと見てくる。

なんだ?


「アリス?」

「あのね、マックス。その、ひとつお願いが……」

「なんでしょう?」


俺はまたドキッと胸を高鳴らせる。
アリスが頬を染めて、何かお願い事をしてくるなんて珍しい。


「俺に出来る事なら何でも……」

「その、少しでいいからぎゅっとしてもらってもいいですか?」

?!
アリス?

「はしたない事を言ってるって、分かってるけど、昼休憩ってすぐ終わっちゃうし……」

……もしかして、アリスも寂しいと思ってくれているのだろうか。

「……駄目ですか?」


全然駄目じゃない。

駄目じゃない、が……
いいのか?
これはいいのか?アリスから言ってきてくれたのをいいことに、結局俺は己の煩悩に負けてしまっているんじゃないのか??

アリスにも俺の堪え性を改善させる為に、協力してもらった方がいいかもしれない。
アリスには悪いが、このままでは俺の理性が危うい。騎士道的にも、もっと己に厳しく―――


「マックス……?」

「……っ」



気付いたら、俺はアリスを抱き締めていた。


「アリス。……涙まで溜めるのは反則です」

「だって、はしたない事を言ってしまったから、マックスに嫌われちゃったのかと……」

「嫌いになんかなりません。……なる訳ない。好き過ぎて、いつもおかしくなりそうなんですから」

「ひえっ」

「……アリスが不安になるなら、いくらでも抱き締めます。色々考えてましたが、アリスを不安にさせるくらいなら、抱き締めたって己を律してみせます」

「つまりどうゆう事??」

「……アリスは何も心配しなくて良いという事です。ただ、前にも言いましたけどあまり無防備なのは駄目ですからね」

「え?!あ、色々って……!ああ、うん、はい。わ、分かりました」

「……まだ学園生活が2年以上残っていますからね」

「ふふ」

「アリス?」

「マックスがあんまりにも真剣な顔で言うから面白くて」

「……俺にとっては大きな問題ですよ。正直言うと、今もキスしたくて堪りません」

「?!」

「ですが、今は我慢します。一番大事なのは、アリスですから」


男とは悲しい生き物だ。
どうしても求めてしまう、馬鹿で愚かな生き物だ。
それが分かったからこそ、俺はそれに抗わなければならない。

俺は俺の腕の中に居る愛しい人を、加減しつつもぎゅうぎゅうと抱き締める手に力を籠めた。


「俺は煩悩なんかに負けない……!」


思わず俺がそう口走ると、アリスは可愛らしく笑って、俺の頬にちゅっとキスをした。


「頑張るマックスにご褒美」

「~~~くっ!!」


頑張れ、俺の理性!!
俺は煩悩なんかに負けない……!!



* * *
 
                                                                                                     
しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...