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本編

マックス救出作戦③

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「アリスお嬢様!エミリーナ魔法学園では知っての通り、授業以外での魔法の使用は禁止です」

「……はい」


マックスを救出するべく情報収集に勤しんでいた私の元へ、何故だかニールたんがやって来ました。

いや、どの道ニールたんにも連絡しなくちゃとは思ってたよ?
思ってたけどさ……
急にこのノリで来られるのは心の準備が必要っていうか。どうしてこのタイミングで来たんですか??


「あの、コドウェル先生は何故このタイミングで私の部屋にいらしたのですか?」


私が疑問を口にすると、ニールたんはキョトンとした顔をして、然も当然だと言わんばかりに平然と答えた。


「アリスお嬢様の魔力を感知したからですよ。一瞬でしたが、闇魔法の安らぎの理想郷オーバースリーピングを使用なさったでしょう?」

「え?!……あ、あの一瞬の魔法で……?」

「ええ。しかも使用された魔法は自分ではない『誰か』を眠らせる魔法でしたからね。アリスお嬢様に何かあったのだと思い、急いで馳せ参じた次第です」

「…………」


うん。
魔力感知ね。成程成程。
言ってる事は分かったけど………………

いや、もう何も言うまい。
ニールたんが規格外なのは分かっていた事だしね。
平常心。平常心よ、アリス。


「そうですか。ありがとうございます、コドウェル先生。実は、先生にもご助力願おうと、連絡しようとしていたところだったのです。来て下さって助かりました」


そう言って私がにこりと笑ったら、ニールたんは目を見開いた後、鼻を押さえた。

まさかまた鼻血か。


「コドウェル先生、どうかしましたか?」

「アリスお嬢様自ら私に連絡を取ろうとして下さっていたなんて!!私はなんて惜しい事をしたのか……今すぐ時間を巻き戻したいっ!!!」


そこかよっ!!!
確かに私の方から連絡した事ってほとんどないけども!!!


「申し訳ありません、アリスお嬢様。学園の研究室に戻りますので、やり直させていただいても宜しいでしょうか?」


何言ってんだ、この馬鹿野郎。

アッー
お、思わず本音が…………
私、声に出してないよね?大丈夫だよね?
ちょ、クロ!!肩震わせて笑わないっ!!!


「ゴホンッ!!いえ、コドウェル先生。時間が勿体無いので、やり直しはしない方向でお願いします」

「~~~っ?!!」


いやいや、どんだけショック受けてるの。
言葉になりません、みたいなの止めれ。


「マックス……隣のクラスの、マクシミリアン・ラジアーネの事なのです。実は……………………」


ニールたんの状態にはお構い無しで、私は話を進めた。これまでの事を話し、今後どうしたらいいのかニールたんに意見を求める。

すると、ニールたんは話を聞く内に頭を切り替えてくれたようで、真剣な顔で何か考え始めた。


「成程。とりあえず、アリスお嬢様のお望みは拘束されているラジアーネ親子の解放ですか。フィリップ殿下が何とかすると言ったなら、恐らく本当に何とかしてくれるでしょう。彼は愚直だが、無能ではないですから。王城にレジナルドも居るなら、問題はないでしょう」

「レジーが居れば大丈夫なんですか?」

「…………いつの間にレジナルドを愛称呼びするように…………いえ、なんでもありません。フィリップ殿下だけではパルティンヌ公にしてやられる可能性がありますが、レジナルドがいればそうはならない。彼は剣の腕も優秀だが、どちらかと言えば宰相向きです。腹黒ですからね」


腹黒=宰相、の方程式が成り立っているみたいだけど、その認識ってどうなの。


「では、コドウェル先生は殿下の言う通り、何もせずに待っていた方がいいと……?」

「まさか。それこそ時間が勿体無いですよ。アリスお嬢様は今から学園にある転移魔法陣を使用してリトフォード侯爵領へ向かい、リトフォード卿と会ってきて下さい」


え?
お父様に??

私は訳が分からずに首を傾げると、ニールたんがまた鼻を少し押さえた。何なんだ。


「必要書類のリストを渡します。それらを全て揃えたら、私に持ってきて下さいね。私の方はアリスお嬢様の憂いを無くすために、殿下の加勢をして参りましょう。それから、アリスお嬢様」

「はい?」

なんでしょう??

「光の最高位魔法を使えるようにしておいて下さいね」

え?
今、なんて?……最高位魔法??

「……高位ではなく、最高位ですか?」

「ええ。アリスお嬢様のこれまでの成果と魔力量ならば使えると思いますので」


…………いやいやいや!!!
成果って何?!そもそも魔法自体、自主練と魔法の授業でしか使った事ないし、授業でも中位までだったよ?!高位ですら自主練の時に試しで一度唱えただけだしっ!!


「な、なんで最高位なんですか?それに、成功するかも分からないですし!!」

「成功しますよ」

「ニールた……」

「アリスお嬢様は私の一番の教え子・・・・・・・・
ですから」


刹那。
ニールたんの纏う空気が変わった。

今の時期。夏が近くて、暑くなり始めた頃だが……
窓の外に見える太陽は燦々と輝いているのに、私達の居る室内は、ひんやり冷たい。

ニールたんの瞳と、髪が、何故だか一瞬だけアイスブルーに見えた。
不適に笑うニールたんが、『先生』の顔をした。


「期待していますよ、リトフォード侯爵令嬢・・・・・・・・・・


まるで『失望させるな』と言われた気がした。

そうしてニールたんは、いつ書いたのか必要書類のリストを机に置いて、私の部屋から去って行った。


……………………

…………



ど う し て こ う な っ た。


あかん。
これあかんやつ。
というか、本当になんで最高位魔法??いつ使うん??
最高位魔法ってどんな効果だったっけ?

それと、クロ。
いつまで笑ってんの?!!


「あはっ。ごめんね、アリス。やっぱり人間は面白いなあって思ってさ」

私は全然面白くないんですけど?!

「まぁ仕方ないよ。アリスは罪作りな女の子だからね」

はぁ?!
何ソレどーゆう事?!!
さっぱり分からんっ!!!

「ふふ、僕はそんなアリスも好きだよ。さぁ、早く動いた方がいいんじゃない?時間は有限だよ??」


確かにそうだけど!!
あーもー、本当に何なんだ!!

ニールたああああああんん?!!



* * *

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