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本編
拘束*マクシミリアンside*
しおりを挟む結果を言えば、父上には無事に会えた。
エルオット殿下の言った通り、フィリップ殿下の部屋には近衛騎士団副団長である俺の父上が入って来た。
『……誰か居るのか?』
『私です、ネルファス副団長』
『エルオット殿下?!一体どうし……』
『貴殿に急ぎの用がある者がおりまして』
『私に……?』
『俺です、父上!』
『マックス?!何故ここにいるのだ?!』
……………………
…………
こうして何とか無事に父上と会えた俺は、ここへ来た事情を説明した。俺の付き合っている相手は公爵家のマリアーノ様ではなく侯爵家のアリスだと伝え、父上に会う為にエルオット殿下がここまで連れてきてくれたのだと。
最初は城に潜り込んだ事で怒っていた父上だったが、俺の話を聞くなり、一気に青褪めて慌てて俺に謝ってきた。すぐにパルティンヌ公にも事情を話すと約束してくれた。
俺はホッと安堵の息を漏らし、やっと不安が消えたと思った。さっさと来た道を戻り、学園へ帰ろう。
そう思った時だった。
『エルオット殿下……?』
俺達の話の邪魔にならないように、わざわざ隅の方で待ってくれていたエルオット殿下の様子がおかしい。
俺だけじゃなく、当然父上もその事に気付いて、急いで殿下の元へ駆け寄る。
『……父上、これは……?』
エルオット殿下はソファーに凭れ掛かり、目を瞑ってヒューヒューと呼吸を繰り返していた。その呼吸音を聞いた瞬間、父上が目を見開いて眉間にシワを寄せた。
『……発作だ!』
『発作?!』
『なんて事だ!すぐに医師を連れて来なければ……!』
そう言って父上が扉を開けると、そこには数人の近衛騎士達が居た。恐らくフィリップ殿下の部屋を調べる為に中へ入った、父上の様子を見に来たのだろうと予想したのだが……
『これはどういう事ですかな?ネルファス副団長』
何故だか、近衛騎士達の後ろに、本来であればここに居る筈の無い人物がソコに居た。
『パルティンヌ公?何故貴方がここに……』
『意外なところから情報が入ってね。半信半疑だったのだが、想像以上に面白くなりそうだ。……エルオット殿下を保護し、ネルファス副団長及びその息子を拘束しろ』
パルティンヌ公の言葉を聞いて、近衛騎士達に動揺が走る。
『……副団長を拘束でありますか?』
『そんな……』
『貴様らは何を躊躇っている?エルオット殿下のこの状況に、入城許可の無い者までここに居るのだぞ。怪しい事この上ないではないか』
パルティンヌ公がそう言って口角を上げた。
すると、自身の胸の辺りをギュッと抑えていたエルオット殿下が、息も絶え絶えに抗議の言葉を口をした。
『違う!……この者は、私の……友人……私が招い…………っ!』
必死な殿下の訴えに、パルティンヌ公は目を細めつつ、再び命令した。
『友人ですか。詳しい話は後程聞きましょう。今はとにかく、殿下を保護する方が先だ。ネルファス副団長とその息子殿は別室へ連れていけ。話を聞くまでは、一歩も部屋から出すな』
『……申し訳ありません、副団長』
ここで逃げたりすれば、余計に怪しまれる。それに、エルオット殿下を放っていく事は出来ない。
今は大人しく、拘束されるしかない。
『すみません、エルオット殿下。父上。俺のせいで……』
思わず俺が小声でそう呟くと、父上も小声で答えてくれた。
『元はと言えば、私のせいだからな。今は早くエルオット殿下を医師に診てもらわねば』
『はい』
そうして俺は、父上と共に拘束されてしまったのだった。
* * *
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