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本編
アリスお嬢様の好み*ニールside*
しおりを挟むおかしい。
騎士団長の件を解決した翌日。私は魔法実習の授業で、ある異変に気付いた。
「今日の魔法実習は隣のクラスとの合同授業になります。各自二人一組になって下さい」
アリスお嬢様への報告は、今日の放課後にしよう。そう思いながら今日の実習で、私は自分の目を疑った。
「マックス!よ、良かったら私と組みませんか?」
「アリス!俺なんかが相手で良いのですか?」
「ま、マックスの身体強化を是非とも間近で見学したくて……!」
「間近で??特に他の方と変わらないと思いますが……って、すみません、アリス!女性の方から声をかけさせてしまうなんて。次からは俺から声をかけますね」
「ありがとう、マックス!」
…………あ……アリスお嬢様?!
いつもなら弟君であるアルフォンス様かエルオット殿下と組むのに、これは一体どういう事ですか?
あれは、ラジアーネ伯爵家のマクシミリアン??
「マクシミリアン!いつの間にこんな可愛い令嬢と知り合ったんだ?紹介してくれよ!」
「俺も俺も!」
?!!
アリスお嬢様に虫が集っている?!
隣のクラスだからか、無頓着だからか、あまりアリスお嬢様の噂を知らないのかもしれませんね。女性ならともかく、これはいただけない。
虫除けの殿下達は一体何を……
ん?……アリスお嬢様が何かに驚いたようだ。一体何を見ているのか。
「…………彼女は先日友人になった、リトフォード侯爵家のアリス嬢だ。アリス、彼らは俺と同じ魔法騎士志望のカイルとベルマン」
「アリス・リトフォードです。よろしくお願い致します」
「俺はオルコット子爵家のカイルです!」
「俺はベルマンだ!平民だから姓はない。気軽に呼んでくれ!」
「………………」
「アリス?どうかしましたか?」
「え?!いえ、なんでもないです!オルコット卿にベルマン様、仲良くして下さいね。私の事は、名前でお呼び下さい」
「ああ。こちらこそ、アリス嬢」
「よろしくな!」
……やはり、アリスお嬢様は何かを気にしている。カイル……いや、ベルマンか?
ベルマンの……………………
上腕二頭筋ばかり見ているような……
……アリスお嬢様??
まさか、アリスお嬢様はああいった者がお好みなのか?
よく見ればマクシミリアンもベルマンも魔法騎士志望なだけあって、ゴリゴリではないが体格が良い方だ。
成程。
少し意外ですが、アリスお嬢様がそういったご趣味であるなら、私も鍛えてみせましょう!!お望みとあらば、私はすぐにでも魔法騎士に転職します!!!
……おや?
アリスお嬢様が今度は私を見ている?私に何かご用でしょうか?
「コドウェル先生、授業を進めて下さい。今日はこれまでの復習の他に、何をするのですか?」
はっ!アリスお嬢様に気を取られて説明していませんでした!一応仕事ですからね。お仕事はきちんとせねば。特にアリスお嬢様の前では。
「申し訳ありません、アリスお嬢様。ついついボーっとしておりました」
「先生にしては珍しいですね」
「今日の魔法実習はこれまでの復習と防御魔法です。一人は防御魔法を展開し、もう一人はその防御魔法を攻撃して、防御魔法の強度を確認します。最初の攻撃方法は一番弱い攻撃魔法、もしくは武器を使用して下さい。皆さん、分かりましたか?」
「「はいっ」」
皆さん分かってくれたようで何よりです。ちゃんと話を聞いている時点で騎士団長よりマシですね。皆さんにはミジンコからアリ程度まで進化してくれるよう、頑張ってもらいたいものです。
「ふぎゃ?!」
「こ、コドウェル先生!!私達、ちょっと分からない所があるのです。是非、個別で教えて下さい!」
何故個別で??
というか、今アリスお嬢様を押し退けましたね?……何を期待しているのか分かりませんが、アリスお嬢様は既に女神の域ですからね??貴女達のようなミジンコには到底辿り着けませんから。少し分からせてあげた方がいいですね。
っと、その前にアリスお嬢様は……マクシミリアンが受け止めたようですね。
くっ!なんて羨ましいっ!!!
「あの、コドウェル先生?」
「……良いですよ。では個別で指導しましょう」
「きゃあ!ありがとうございます!」
魔法ではなく、己の身の程をね。
今の私はすこぶる機嫌が悪いので覚悟して下さい。
……そう思っていた時、突然訓練場にフィリップ殿下とエルオット殿下がやって来ました。後ろにジードリッヒも居ますね。
フィリップ殿下は学年が違うし、エルオット殿下は何故今まで授業に居なかったんですか?何かあったのでしょうか?
「授業中に申し訳ない。コドウェル先生に急ぎの用があってね。なので、今日の魔法実習は前任のジードリッヒ先生がこのまま引き継ぐ」
なんだって?
アリスお嬢様が、また私以外の者から魔法を教わると??
「皆さん、宜しくお願い致します」
「エルオット、後は頼んだよ」
「はい、兄上!承知致しました!」
「コドウェル先生、宜しいですか?」
「宜しくないですね。急ぎの用とはなんですか?」
「…………コドウェル先生、ちょっと此方に」
「?」
フィリップ殿下の傍へ歩み寄ると、遮音魔法が展開されました。アリスお嬢様との内緒話ならいくらでも戴きたいですが、フィリップ殿下と内緒話だなんて気が進みません。
本当に一体何なんですか?
「コドウェル先生。流石に今回の件は父上も卒倒寸前だったのですが?」
「国王陛下が?それは一大事でしたね。何かの病でしょうか?」
「違います!!昨夜、騎士団長を氷漬けにした件ですよ!!自分で始末書を陛下へ送ったでしょう?!」
「え?もしかして、それで卒倒しそうになったんですか??」
「それ以外に理由があると思います?!」
「軟弱だから?」
「父上を愚弄するな!!……とりあえず、騎士団長の氷を早く溶かすようにとの命令です。城までご同行下さい、コドウェル先生」
「ふ、貴方は相変わらず陛下が好きですね」
「……コドウェル先生こそ、問題ばかり起こすのは止めて下さい。父上の寿命が縮まります」
「あの騎士団長は役に立たないと思いますけど?早々に爵位を引き継がせて、レジナルドを当主にしてしまえばいい。ユーニーリアには引退して領地に引っ込んでもらいましょう」
「…………その話は私ではなく父上にして下さい。行きますよ」
「分かりました」
やれやれです。
仕方ないので、アリスお嬢様への報告は手紙に致しましょう。
以前、『もしまた何か困った事が起こりましたら、是非私にご相談下さい。今度こそ、私が解決してみせます』と約束してしまった手前、ご褒美のおねだりは図々しいかとも思いましたが……
今回はやはり、何か戴きたいところですね。報告の手紙に書いておきましょう。
アリスお嬢様が私へのご褒美で悩むだなんて、それだけで美味し過ぎますがね。
嗚呼、とても楽しみだ。
* * *
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