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本編

初めての友達

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「マックス!」


マクシミリアン・ラジアーネ。
この乙女ゲームの攻略対象の一人。

かつてみーこに、ゲーム画面に映っていた彼の事を聞いた。


『そのレジーって人の隣にいる人は?』

『あーマックスね。一応攻略対象だけど、私は断然ニールたんとレジーかな』


みーこ。君がクール系と強引な人好きって事はよく分かった。まぁニールたんが見た目通り中身までクールかと言ったら些か疑問ではあるが。
そして私は……頼れる騎士タイプが好きである。ゴリマッチョではなくソフトマッチョ希望。


「マリアーノ嬢。本来であれば他の貴族令嬢の模範となるべき公爵令嬢である貴女が、元平民だからと平気で人に暴力を振るおうとするなんて……」

「ま、マックス!違うの!これは……」

「申し訳ないが、勝手に愛称で呼ぶのはお控えいただきたい。……今回のことは目を瞑ります。ですが、もし繰り返すようならば、それ相応のお覚悟を。」

「……っ!」


マリアーノ様はまるで『覚えてなさいよ!』と、悪役のような顔をして走り去って行った。
こらこら、貴族令嬢は走っちゃ駄目でしょ。それとも公の場じゃないからいいのかな??


はっ!そうだ!
マリアーノ様の平手をパシッと掴んで止めてくれたマクシミリアン様にお礼を言わねば!!マジでビビったので助かりましたよ!!


「あの!助けていただき、ありがとうございました!」

「いえ。大丈夫でしたか?」

「はい。申し遅れました。私はリトフォード侯爵家の娘、アリスと申します」

「っ!リトフォード侯爵家のご令嬢でしたか。俺はラジアーネ伯爵家のマクシミリアンと申します。マクシミリアンとお呼び下さい」


初めて侯爵令嬢として扱われた?!


「え、あ……では、私の事もアリスとお呼び下さい」

「ありがとうございます。………どうかされましたか?」

「その、少しびっくりして。貴族の方は私を侯爵令嬢として見ませんから……」

「では先程の、マリアーノ嬢にされたような事が何度もあったと?」

「いえ、直接的なのはマリアーノ様くらいですよ。他の方々はちょっと目が恐いくらいで何も……」


私がそう言って両手をパタパタと振って見せると、マクシミリアン様は急に黙り込んだ。そして視線だけを、私の背後にある切り株へと向ける。そこには購買で購入した、サンドイッチ等が入っている紙袋が置いてある。

あ、お昼だしお腹空いてるのかな?
一緒に食べる??


「こんな所で、お一人で食べる予定だったのですか?」


うぐっ!
痛いところを突かれたっ!!


「は、恥ずかしながら……」

「…………」


止めてくれ!そんな目で私を見ないで!!余計に傷口が拡がるっ!!


「……俺は騒がしい所が苦手でして、休憩時間などには、よくここへ来るのです。ですので、宜しければお昼をご一緒致しませんか?」


な、なんだと?!
これはまさか!!


「宜しいのですか?私なんかと……」

「貴女さえ良ければ、是非。それに、私なんか、等とあまり己を卑下なさらない方がいいですよ」


お昼ご飯友達ゲットォォォォ!!!
きっと同情からだろうけど、ボッチよりマシ!!いつも心配かけちゃうアルにも友達出来たって言えれば、少しは安心してくれるだろうし!!


「で、では、私とマクシミリアン様は友達ですね!!」

「!」

「あ、す、すみません。ご迷惑でしたか?」


ここまで期待させといて、友達になるのは嫌だ、とか言わないよね?ここは美少女な見た目を活かして泣き落としでもする?

しかし、私が泣き落としをする前に、マクシミリアン様は優しげに目元を綻ばせた。チョコレートブラウンの、少し癖っ毛な髪が風にふわりと揺れる。


「迷惑だなんてとんでもない。是非、友達になりましょう。これから宜しくお願い致します」


やったあああああ!!!
マクシミリアン様、超いい人!!!


「では、堅苦しい話し方はお互い止めませんか?友達ですからね!言質取りましたから、撤回は無しですよ?」

「分かりました。その方が俺も助かります。……色々と噂は聞いていましたが、思っていたよりも話しやすい人なんですね」


なんだって?!話しやすくて可愛いとな?可愛いまでは言われてないか。でも照れるなあ。くふふ。

それにそれに、制服の上からでも分かるよ!!パツパツではないけど、かなりしっかりした君の体躯がね!!それに私はゲーム画面を見ているから知っているのだ!!
君があのモブ君同様に、ステキな筋肉をしているとね!!!


「マクシミリアン様」

「長いからマックスでいいですよ」

「ではマックス!あの、今度鍛練している所を見に行ってもいいですか?」

「構わないですよ」

「やったあ!!」

「アリス嬢は変わった人ですね。……あれ?俺、鍛練の話なんて……」

「あ、私の事も呼び捨てでいいですよ!友達ですからね!!」

「それは…………」


どうしたのマックス。
まさか私の身分を気にしているのかい?公の場じゃなければ無問題だよ!!


「駄目ですか……?」

「?!」


あれ。なんかマックスの目元、ほんのり赤くない?


「駄目では、ない。……友達ですからね。アリス」

「嬉しい!!そしてお腹空いちゃいました!早く食べましょう??」

「そうしましょう」

「わあい!!」


学園に入学して、そろそろ1ヶ月。
お友達が出来ました!!!
アル!お姉ちゃんやったよ!!マックスが鍛練するとこ、早く見たい~~~~!!

私とマックスは切り株のイスに座り、私は満面の笑顔でサンドイッチにかぶりついた。


誰かと一緒に食べるご飯って、やっぱり美味しいよね!!



* * *

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