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本編

事件の後には、また事件。

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危なかった。
危うく私はチョロインになりかけたわ。

侮りがたし、乙女ゲーム。これはハマるわ。あんなイケメンに迫られたら瞬殺だよ。あれだけ馬鹿だ馬鹿だと思ってた殿下に、めちゃめちゃ心が揺れ動いたからね。


「あれは反則でしょ……」


未だ、抱き締められて首筋にキスされた感覚が消えない。

あれはもうただの馬鹿で残念なイケメンじゃない。油断すると絆されてしまう、乙女ゲームのイケメンだ!!

今後、二人きりという状況は極力避けねば……!!


『……大丈夫、結婚前に食べたりしないから』


あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!本当に!!本当に何言っちゃってんの?!!
イケボで止めろよもおおおおおおおおお!!!!!

しかも婚約者になってくれるならって、まだ諦めてなかったの?!一途にも程があるでしょ?!いや、確かに想われるなら一途な方がいいけども!!

とにかく、落ち着け私。もう考えちゃ駄目。思い出してはいけない。
あの後だいぶ遅れて教室に行ったから、アルにも心配かけちゃったし。
ちなみに、遅れた理由は体調不良という事になっている。あの時、去り際に何故だか殿下が、保健室の在室証明書を渡してきて……


『いつも数枚隠し持ってるんだ。アリスもこれを使って、上手く誤魔化すといい。……他の人には内緒だよ。私とアリスだけの秘密だ』


ぐはっ!!!(吐血)

くうぅっ!!明日からは知ってる人にもついて行かない!!……今日のは不可抗力だったけどね。明日から授業があるし、殿下は二年生だからそうそう会う機会も無い筈。アル以外の他の攻略対象には接触するべからず!!

目標は授業についていく事と、クラスに馴染み、女友達ゲット!!

頑張るぞー!!



……こうして意気込んだ私だったが、その翌日。またしても事件が起きてしまった。


* * *


「アリス様、ちょっと宜しいかしら?」


あれ。
なんか既視感デジャブ


「貴女は……」


それは翌日の朝。
アルと一緒に登校して、教室に入る前に起こった。


「私を覚えていらして?」

「はい。パルティンヌ公爵家のマリアーノ様、ご機嫌麗しゅう存じます」


私がそう言って挨拶と礼をすると、マリアーノ様はにこりと笑った。
その笑顔があまりにも不自然で、一瞬目の前に居る人が本当に・・・マリアーノ様なのか分からなくなった。


「あら?おかしいですわね。もう私の事なんて、お忘れになっていると思っておりましたわ。だってそうでしょ?相変わらず私のフィー・・・・・に媚を売っているのだから」

「……っ」


―――違う。

この人は違う。

悪役令嬢のマリアーノ様は、確かにゲームでヒロインに文句を言ったりしてたけど、礼節を重んじる方だった。何より、王族に対して多大なる敬意を持つ方が、こんな公衆の面前で『私のフィー』だなんて言う筈がない。

この人は……


「貴女は、『誰』なの……?」



* * *

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