上 下
35 / 121
本編

それは狂おしい程に*フィリップside*

しおりを挟む


今日は待ちに待った特別な日。
そう、私の可愛いアリスが学園へ入学する日だ。

ああ、やっとアリスに逢える!
こんなに長い間、全く逢えなくなるとは思ってもみなかった。まさかアリスが違う貴族学校へ通うだなんて……

しかし、今日からは毎日学園で逢えるのだ。魔法学園万歳。今度私の私財から寄付しよう。

さて、一番好ましいのは天使のように清らかな内面だが、きっと見目も更に美しく成長したに違いない。楽しみだ。祝辞の時にでも、アリスを探してみるとしよう。


* * *


―――なんて事だ。


アリスは私の想像以上に、片時も目が離せないくらい、美しく成長していた。ずっと天使だと思っていたが、今の彼女はもはや美の女神だ。神様だ。
長くふわりとした桜色の髪に、見る者全てを魅了しそうなアメジストの瞳。陶器のような白い肌。ああ―――



触れたい。



……今ならアリスに逢えるだろうか。一目でもいい。逢いたい。彼女に。

そうして私はアリスと出逢った。

数年ぶりの再会。私は思わずアリスを抱き締めてしまった。


(や、柔らかっ……?!)


あまりの抱き心地の良さに驚いた。これでは手放す事など出来ない。優しい彼女が、私を心配してくれる。こんなところを誰かに見られたらマズイと。

確かに、今は誰にも邪魔されたくない。

だから私は、彼女を抱き上げて空き教室へと移動した。鍵もかけておこう。ああ、アリス。アリス。やっと君と二人きりだ。

私はアリスを抱き締め、綺麗な桜色の髪に顔を寄せた。


「ふふ、アリスは良い匂いがする」

「ちょ、嗅がないで下さい!」

「少しだけ」

「~~~~?!!」


アリスの耳辺りから首筋まで、スンスンと匂いを嗅ぐと、それだけでアリスは真っ赤になっていて。それが何とも可愛くて愛おしい。
私の心臓がドクドクと、早く早く脈打って、私の中に何かがじわりと拡がっていく。

欲しくて堪らない。これは独占欲。

私は白く美しい彼女の首筋に、堪らず唇を寄せた。


「う、ひゃ?!」


ビクッとその身を震わせてから、アリスが可愛い声を上げた。


(ああ、クセになりそうだ)


その声がもっと聞きたくて、私は何度も何度もアリスの首筋に口付けを落としていく。


「大丈夫、痕なんてつけない。本当はつけたいけど。……アリスは私のものだと印をつけられたなら、どれだけ幸せか」

「や、やめて下さい、殿下」


またその呼び名か。


「……愛称で呼んでくれたら、今日はもう解放しよう」

「な……」


痕をつけたい。
アリスは私のものだと、身体中に印をつけたい。

アリス、アリス。早く私を好きになってくれ。苦しくて死にそうだ。君が欲しい。君だけが欲しい。

君が傍に居てくれるなら、私はきっと何でも出来る。


「フィ……フィー」

「!……アリス、もう1回」

「フィー」

「もう1回」

「っ!……フィー、もう止めて下さい!」


潤んだ瞳で、アリスは初めて私を愛称で呼んでくれた。
私はなんと単純な男なのだろう。それだけで馬鹿みたいに嬉しくて、泣きそうなくらい幸せだ。


「ああ、アリス!君が愛おしすぎて死にそうだ!!」


本当だよ、アリス。
初めて君と出会った時、誰に何を言われても怯まずに真っ直ぐ相手を見据えていた君に。
品位を落としかねないから自分には近付くなと、そう言った君に。

私は恋をしたんだ。


近付くなと言われたのは初めてだった。私は国を、民を愛しているけど、普段私と接する者達は、私を利用しようとするものばかり。
皆、私を見ずに『王子』という肩書きだけを見る。

なのに、アリスは最初から『私』を見ていた。私の王子としての立場を慮って、本当の言葉を口にした。


だから私は君が好きなんだ。


アリス、私のアリス。
お願いだから、私だけを見てくれ。

君しかいらない。
君だけが欲しい。

胸が痛い。狂おしい程に。


お願いだ。
早く早く、私を好きになってくれ。



* * *

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18]引きこもりの男爵令嬢〜美貌公爵様の溺愛っぷりについていけません〜

くみ
恋愛
R18作品です。 18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。 男爵家の令嬢エリーナ・ネーディブは身体が弱くほとんどを屋敷の中で過ごす引きこもり令嬢だ。 そのせいか極度の人見知り。 ある時父からいきなりカール・フォード公爵が婚姻をご所望だと聞かされる。 あっという間に婚約話が進み、フォード家へ嫁ぐことに。 内気で初心な令嬢は、美貌の公爵に甘く激しく愛されてー?

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福

ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡 〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。 完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗 ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️ ※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。

騎士団長との淫らな秘めごと~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~

二階堂まや
恋愛
リクスハーゲン王国の第三王女ルイーセは過保護な姉二人に囲まれて育った所謂''箱入り王女''であった。彼女は王立騎士団長のウェンデと結婚するが、獅子のように逞しく威風堂々とした風貌の彼とどう接したら良いか分からず、遠慮のある関係が続いていた。 そんなある日ルイーセはいつものように森に散歩に行くと、ウェンデが放尿している姿を偶然目撃してしまう。何故だかルイーセはその光景が忘れられず、それは彼女にとって性の目覚めのきっかけとなるのだった。さあ、官能的で楽しい夫婦生活の始まり始まり。 +性的に目覚めたヒロインを器の大きい旦那様(騎士団長)が受け入れて溺愛らぶえっちに至るというエロに振り切った作品なので、気軽にお楽しみいただければと思います。 +R18シーン有り→章名♡マーク +関連作 「親友の断罪回避に奔走したら断罪されました~悪女の友人は旦那様の溺愛ルートに入ったようで~」

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

処理中です...