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本編
それは狂おしい程に*フィリップside*
しおりを挟む今日は待ちに待った特別な日。
そう、私の可愛いアリスが学園へ入学する日だ。
ああ、やっとアリスに逢える!
こんなに長い間、全く逢えなくなるとは思ってもみなかった。まさかアリスが違う貴族学校へ通うだなんて……
しかし、今日からは毎日学園で逢えるのだ。魔法学園万歳。今度私の私財から寄付しよう。
さて、一番好ましいのは天使のように清らかな内面だが、きっと見目も更に美しく成長したに違いない。楽しみだ。祝辞の時にでも、アリスを探してみるとしよう。
* * *
―――なんて事だ。
アリスは私の想像以上に、片時も目が離せないくらい、美しく成長していた。ずっと天使だと思っていたが、今の彼女はもはや美の女神だ。神様だ。
長くふわりとした桜色の髪に、見る者全てを魅了しそうなアメジストの瞳。陶器のような白い肌。ああ―――
触れたい。
……今ならアリスに逢えるだろうか。一目でもいい。逢いたい。彼女に。
そうして私はアリスと出逢った。
数年ぶりの再会。私は思わずアリスを抱き締めてしまった。
(や、柔らかっ……?!)
あまりの抱き心地の良さに驚いた。これでは手放す事など出来ない。優しい彼女が、私を心配してくれる。こんなところを誰かに見られたらマズイと。
確かに、今は誰にも邪魔されたくない。
だから私は、彼女を抱き上げて空き教室へと移動した。鍵もかけておこう。ああ、アリス。アリス。やっと君と二人きりだ。
私はアリスを抱き締め、綺麗な桜色の髪に顔を寄せた。
「ふふ、アリスは良い匂いがする」
「ちょ、嗅がないで下さい!」
「少しだけ」
「~~~~?!!」
アリスの耳辺りから首筋まで、スンスンと匂いを嗅ぐと、それだけでアリスは真っ赤になっていて。それが何とも可愛くて愛おしい。
私の心臓がドクドクと、早く早く脈打って、私の中に何かがじわりと拡がっていく。
欲しくて堪らない。これは独占欲。
私は白く美しい彼女の首筋に、堪らず唇を寄せた。
「う、ひゃ?!」
ビクッとその身を震わせてから、アリスが可愛い声を上げた。
(ああ、クセになりそうだ)
その声がもっと聞きたくて、私は何度も何度もアリスの首筋に口付けを落としていく。
「大丈夫、痕なんてつけない。本当はつけたいけど。……アリスは私のものだと印をつけられたなら、どれだけ幸せか」
「や、やめて下さい、殿下」
またその呼び名か。
「……愛称で呼んでくれたら、今日はもう解放しよう」
「な……」
痕をつけたい。
アリスは私のものだと、身体中に印をつけたい。
アリス、アリス。早く私を好きになってくれ。苦しくて死にそうだ。君が欲しい。君だけが欲しい。
君が傍に居てくれるなら、私はきっと何でも出来る。
「フィ……フィー」
「!……アリス、もう1回」
「フィー」
「もう1回」
「っ!……フィー、もう止めて下さい!」
潤んだ瞳で、アリスは初めて私を愛称で呼んでくれた。
私はなんと単純な男なのだろう。それだけで馬鹿みたいに嬉しくて、泣きそうなくらい幸せだ。
「ああ、アリス!君が愛おしすぎて死にそうだ!!」
本当だよ、アリス。
初めて君と出会った時、誰に何を言われても怯まずに真っ直ぐ相手を見据えていた君に。
品位を落としかねないから自分には近付くなと、そう言った君に。
私は恋をしたんだ。
近付くなと言われたのは初めてだった。私は国を、民を愛しているけど、普段私と接する者達は、私を利用しようとするものばかり。
皆、私を見ずに『王子』という肩書きだけを見る。
なのに、アリスは最初から『私』を見ていた。私の王子としての立場を慮って、本当の言葉を口にした。
だから私は君が好きなんだ。
アリス、私のアリス。
お願いだから、私だけを見てくれ。
君しかいらない。
君だけが欲しい。
胸が痛い。狂おしい程に。
お願いだ。
早く早く、私を好きになってくれ。
* * *
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