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本編

それは呪いである。

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見てるわ。

「新入生諸君、入学おめでとう」

見てる見てる。

「私は今日をとても心待ちにしていた」

つーか見すぎだから。

「私は在校生代表の……」

だから


「フィリップ・ローゼバルトだ!」


こっち見んなあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!


* * *


私とアルは入学式の為、体育館のような建物に入場し、在校生に案内されて決められた席へと着席した。

……まんま体育館だな。
制作スタッフの手抜きなのか、一応学園ものだから最初から決めていたのか。なんかバドミントンしたくなってきたわ。無いだろうけど。

学園長と思われるおっさんが長々と有り難い祝辞を述べ、お次は在校生代表か。在校生代表……

嫌な予感しかしない。


「きゃあ!見て!壇上に殿下が!」

「フィリップ様ぁ!」

「なんて凛々しいお姿なの!」


や っ ぱ り お 前 か !!!!!


壇上に上がったフィリップ殿下は、新入生達を見渡した後、ある一点でピタリとその視線を止めた。

その視線の先は言わずもがな、私である。


止めてくれ。
いつも言ってるでしょ?(注・心の中でだけど)こっち見んなって!!!

既に周囲からは冷たい視線を向けられているのだ。冷たい冷たい嫉妬の眼差し。なのに、フィリップ殿下が私を見つめたりなんかしちゃったら、そしてそれを周囲に気付かれでもしたら!!
余計に嫉妬が、嫉妬の渦が、嫉妬の鳴門の渦潮があああああああああああああああああああ!!!

……くっ!見るな見るなと願っているのに、あの馬鹿はひたすらに私を見つめている。

何なの?新たなイジメ?
ほら、正面ならまだしも微妙な方に視線を固定してるから、皆が「あれ?」みたいになってきちゃったじゃんかよ。
そりゃ気付くよね。瞬きひとつしてないもんね。

………………………………………………………………………………………………………………………………………見てるこっちがドライアイになるわっ!!!
あーもー充血しちゃうから!!!こっち見ててもいいから瞬きしてよ!!!

早く祝辞終わってええええええ!!!!!



…………………………………

……………


「アリス、大丈夫?疲れた?」

「アル……」


おかしい。
ただ祝辞を聞いていただけなのに死ぬほど疲れた。
そして分かった事はただひとつ。
奴は貴族学校へ入る以前と何ひとつ変わっちゃいないって事。途中で手を振ってきた時には流石にどうしようかと思ったけど、他の女子生徒が何でか鼻血を吹いて失神した為に有耶無耶になって事なきを得た。


私はフラフラになりながらも、アルに支えてもらって教室へと向かった。何でか目が痛い。これは奴の呪いだろうか。


「…………ありがと、アル。先に行っててくれる?私、ちょっと目を…………顔を洗ってくるから」

「顔を??……ああ、もしかして具合が悪いんじゃなくて眠いの?僕も学園長の話が長過ぎてウトウトしちゃってたからね。そのせいか、いつの間にか終わってたし」


だからアルはあの馬鹿の奇行を知らないのね。


「う、うん。そうなの。心配かけちゃってごめんね!すぐに戻るから!」

「分かった。知らない人にはついて行っちゃ駄目だからね?」


いや、行く訳ないでしょ。


「アルは私を何歳だと思ってるの?じゃあ、また後で」

「ふふ。うん、また後で」


そうしてアルと別れ、お手洗いに向かった私だが、予期せぬ相手と出会してしまったのだった。


「アリス!!やっと会えたな!!」


やっぱり呪いだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!



* * *

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