23 / 121
本編
耳がああああ!!!
しおりを挟むまず結果を言うならば、私の唇は何とか無事に死守出来た。
しかし。
引き換えに私の耳が死んだ……!!
* * *
パーティー会場近くの休憩室と思われる部屋。何故かそこで迫られていた私は、自身の両手で唇を覆い隠し、迫ってくる相手―――レジナルド様もとい思春期野郎を必死に睨み付けた。
「……魅了の魔法なんてものを使うくらいだ。いいカモには喜んで唇を差し出すと思ったんだが」
人をビッチみたいに言うな!!!
大体今世の年齢はまだ10歳なんですけど?!
「成程。確かに、何か事情があるようだ」
分かったのなら、とっとと離れて!!
「だが、それなら尚更味見がしたい」
私は料理じゃありません!!
味見って何?!というか、この人魅了の魔法にかかってないんだよね?!
魅了の魔法にかかってない奴が一番恐いってどうゆう事?!!
「……そのままじっとしていろ」
「?!」
ペロリ。
次の瞬間、私はぞわぞわする感覚に全身が粟立った。
ぎゃあああああああああ!!!!!
こ、こ、こいつっ
耳っ私の耳があああああ!!!!
「うぐっ!」
「震えている。……アリス嬢は本当に可愛いな」
やばい。
このままでは色々な事がやばい。
騎士団長の息子とかテンプレ的に堅物かと思ってたのに、僅か11歳にしてとんでもないエロガキだった!!
騙されたっ!!!
未だ震える私を見て、レジナルド様の瞳に獰猛な熱が宿りかけた、その時―――
バァン!!
扉が勢いよく開いた。
「アリス姉さま!!」
「アル?!」
「ちょ、アルフォンス君?!そんなに急がなくても……」
「フィリップ殿下!」
部屋に入ってきたのは、私の天使アルフォンスとフィリップ殿下だった。アルはその勢いのまま私に駆け寄り、ヒシッと私を抱き締めてくれた。
あ、フィリップ殿下が固まってる。
「ごめんなさい、アリス姉さま!!無事でしたか?誰かに変なことされませんでしたか?!」
「アル……私のこと、捜しに来てくれたの?」
「当たり前じゃないですか!!」
くぅ!
魅了の魔法の効果だと分かっていても嬉しく思ってしまう!!なんて優しい天使なの!!
「レジー、私はすぐに戻ると言った筈だ。なのに、何故待たなかった?何かあったのか?」
「…………」
思春期野郎が一瞬チラリと私の方を見た。やばい。こいつから殿下にバラされたら、処刑台一直線じゃね?
お願いだから黙ってて!!もう二度と思春期野郎なんて言わないから!!
私がヒヤヒヤハラハラしていると、レジナルド様は少し目を細めてから、にっこりと爽やかに微笑んだ。
「申し訳ありません、殿下。会場の熱気に当てられたのか、アリス嬢の気分が優れず、別室にて休憩していたのです」
私は急いで首を縦に振った。
なんかよく分からんが、今は黙っててくれるらしい!素直に乗っかっとこ!!
「そうだったのか。レジー、疑うような事を言ってすまないな。アリス、体調の方はもう大丈夫かい?」
「は、はい!もう全然なんと、むぐ?!」
ちょ、天使?!
何故私の口を塞ぐ?!
「アリス姉さまはまだ気分が優れないようなので、僕達は今日はもう帰らせてもらいますね!!」
成程!!
流石私のアル!!賢過ぎ!!
「で、では、私達はこれで御前を失礼致します」
「あ、アリス……!」
フィリップ殿下の悲痛な声が聞こえるけれど、今はさっさとこの場を去りたい。アルと一緒に、そそくさと部屋から退室しようとした所で、私の腕が軽く掴まれた。
掴んできたのは、やっぱりレジナルド様で、私にだけ聞こえるように耳元で小さく囁いた。
「後日、事情を伺いに参ります。宜しければまた、二人きりで」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………宜しいわけあるかあああああああああ!!!!!
* * *
20
お気に入りに追加
2,888
あなたにおすすめの小説
[R18]引きこもりの男爵令嬢〜美貌公爵様の溺愛っぷりについていけません〜
くみ
恋愛
R18作品です。
18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。
男爵家の令嬢エリーナ・ネーディブは身体が弱くほとんどを屋敷の中で過ごす引きこもり令嬢だ。
そのせいか極度の人見知り。
ある時父からいきなりカール・フォード公爵が婚姻をご所望だと聞かされる。
あっという間に婚約話が進み、フォード家へ嫁ぐことに。
内気で初心な令嬢は、美貌の公爵に甘く激しく愛されてー?
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
騎士団長との淫らな秘めごと~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~
二階堂まや
恋愛
リクスハーゲン王国の第三王女ルイーセは過保護な姉二人に囲まれて育った所謂''箱入り王女''であった。彼女は王立騎士団長のウェンデと結婚するが、獅子のように逞しく威風堂々とした風貌の彼とどう接したら良いか分からず、遠慮のある関係が続いていた。
そんなある日ルイーセはいつものように森に散歩に行くと、ウェンデが放尿している姿を偶然目撃してしまう。何故だかルイーセはその光景が忘れられず、それは彼女にとって性の目覚めのきっかけとなるのだった。さあ、官能的で楽しい夫婦生活の始まり始まり。
+性的に目覚めたヒロインを器の大きい旦那様(騎士団長)が受け入れて溺愛らぶえっちに至るというエロに振り切った作品なので、気軽にお楽しみいただければと思います。
+R18シーン有り→章名♡マーク
+関連作
「親友の断罪回避に奔走したら断罪されました~悪女の友人は旦那様の溺愛ルートに入ったようで~」
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる