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旧ver(※書籍化本編の続きではありません)
幸せの形㉔やや★
しおりを挟む――あの後、私は皆に食べられた。
フィルとナハトに限界まで、下手したらそれ以上貪られて。やっと終わったと思ったら、今度はルカ先生とアスモデウスに。…そうして、食べ尽くされた私から、必要以上に増えていた淫魔の力は、全て吸い尽くされた。
「…リア…」
耳に届く、優しい声音。…エリック様。
次いで、ジルとアベル、レオンにも名前を呼ばれて、あの日を思い出した。私の魔力が枯渇し、飢餓状態になってしまった時のことを。
指一本動かすことさえ出来ない身体に、じんわりと広がっていく、甘やかな快楽。よく知っている精気の味。
瞼を上げることさえ億劫で。だけど、決して離れたくなくて。
「傍に…」
必死に言葉を紡げば、より一層快楽が強くなった。怠くて動かせない身体が、次第にビクビクと反応するようになって、背中が仰け反り、堪らずに腰を揺らめかせる。
「……あぁっ♡♡」
横になっていた筈の身体が宙に浮き、誰かに持ち上げられたのだと分かった。そして、身体中にゾクゾクとした衝撃と快楽が走り抜ける。
「リア、気持ち良い?意識が朦朧としていても、リアの舌のお口は欲しがりなままだね」
「…後ろの蜜穴も、とても気持ちが良いですよ」
「ヴィクトリアの身体は、いつ見ても綺麗だ」
「同感だ。…それに柔らかくて、温かくて、堪らない」
前と後ろ、二つの蜜穴に太くて硬い熱杭を穿たれて、身体中を余すことなく丁寧に愛撫していく大きな手と唇、そしてピンと勃ち上がってしまっている双丘を揉みしだき、その頂を捏ね繰り回す指と舌。気持ち良過ぎて、何も考えられない。目を瞑ったままだからなのか、いつもより敏感に反応し、恥ずかしい程に蜜を溢れさせてしまう。絶妙なタイミングで抽挿され、堪らない快楽に抗えず、時間をかけてゆっくりと絶頂へ導かれる。そうして、私が達し、挿入していたエリック様とジルもそれぞれ達すると、今度はアベルとレオンが挿入する側へ交代する。やがて、四人での責めが落ち着くと、今度は二人ずつであったり、一人であったりと、責め方を変えながら彼らは私に精気を惜しみなく与えていく。私は、ただただ気持ち良くて。ひたすら溺れて、それを受け入れ続けた。
――私の存在は、彼らにとって負担ではないのだろうか?
いつもいつも不安が付きまとう。私は優しい彼らに甘えてばかり。
私にできることで、少しずつでも、貰った分だけ返していきたい。
彼らから貰った想いの分だけ、どんな方法でも構わない。彼らに喜んでもらえるような何かを――……
***
「…それで?私と取引を交わしたいと?」
そう言って悪魔であるアスモデウスは、ベッドへと腰かけ、抱き潰されて眠り姫となってしまったヴィクトリアの髪を一房掬ってキスを落とす。眠るヴィクトリアは未だ頬が火照っていて、しっとりと濡れた肌や唇、悩ましく眉尻の下がった姿が何とも煽情的で美しい。
「そうだ。…僕たちは、愛しいリアと同じ時を生きたい。その為であれば、どんな条件であっても呑もう」
エリックはほんの少しだけ、自身の唇を噛みしめる。
本当は、もっと自分たちに有利な形となるよう、どれだけ時間が掛かったとしても沢山の資料を集めて、検討し、考え抜いた上でこの話を切り出すつもりだった。けれど、今回の件でそんな悠長な時間は残されていないのだと悟った。
今回は何とか対処出来たけれど、恐らくこれで終わりではない。年月と共に増えていく魔物の魔力のことを思えば、今後も同じことが何度も起こるだろう。そうして理解した。人間である自分たちには、次に同じことが起こった時、今回と同じ様に対処できないであろうということが。
「リア…様の魔力の総量は元々平均並みです。魔物のなった今も極端に増えているということはないと思われます。ですので、今回のようなことが起こるのは、推察するに数十年単位。エリック様とリア様がご結婚されてから約二十年ですので、恐らくはそれ位のスパンで繰り返されるものと思われます」
ジルベールがそう伝えれば、この場で人間である者たちは皆苦々しい顔をした。エリックはそれ以外でもジルベールに対し、苛立つことを感じたようだが、今は一睨みする程度で追及はしなかった。
「二十年か。人間にとって、決して短くない時間だ。二十年の時が経てば、もうお前たちには糧としての価値がなくなるだろう。今回のように自分たちの精気を惜しみなく与えたとしても、ヴィクトリアを完全に回復させるには足りなくなる。それに人間は脆い。避けられぬ事故に遭遇したり、病に掛かって思いがけず命を落とすやもしれん。この国がずっと平和とも限らないしな」
「…ああ。いざその時になってからでは遅い。人間のままでは、ずっと一緒にいることが出来ないんだ。リアを守り続けることも、精気を与え続けることも出来なくなる。だから…っ」
言い掛けて、思わずその場にいる者たちは口を噤んだ。アスモデウスから放たれる禍々しいオーラ。あまりの威圧感に、身体が震えそうになってしまう。アベルがエリックを庇うように前に立った。彼が己の全てを捧げたい貴婦人はヴィクトリアだが、エリックが主であることも変わらない。アスモデウスを睨みながら臨戦態勢をとる。
「お前たちは勘違いしている。何故私がわざわざお前らと契約を結ばねばならない?人間の変わりなど、いくらでもいる。精気が必要であれば、人間を狩ってくれば済む話だ。それに、お前たちを失って悲しむヴィクトリアを慰めれば、私だけを愛してくれるかもしれぬのだぞ?」
「貴様…!」
「彼女の悲しみにつけ込もうだなんて!」
アベルとレオンハルトが激昂する中、エリックが片手を上げてそれを制する。
「皆、ちょっと黙っていて欲しい」
「エリック?!」
「でも、アイツは…!」
「アベル、レオンも黙って下さい。今はエリック様に従うべきです」
「……っ」
「…分かった」
アベルとレオンハルトが退くと、エリックはアスモデウスに一歩近づき、にこりと微笑んだ。アスモデウスはその様子を訝しむように瞳を細めると、再び口を開いたエリックの言葉に、思わず瞠目する。
「まるでその気がないみたいに話すのは止して欲しい。こんなの時間の無駄だ。そう思わないか?」
「!」
「いつも腹立たしく貴方を見ていた。突然現れたと思ったら、まるで当然のように入り込んで、リアに頼られて。本当に貴方の存在が忌々しいよ。…だけど、僕は知っている。貴方だよね?ただ一人を選べずに悩むリアへ、平等に愛してやればいいって言ったのは」
「「?!」」
他の三人が驚きで目を見開く。アスモデウスは淡々と「だから何だ?」と答えるも、心なしか、先程の禍々しいオーラがほんの少し薄らいだように思える。
「何だかんだとそれらしいことを言いつつも、結局今の貴方は僕たちと同じ。リアを愛するただの男だ。…本当に彼女の悲しむ顔が見たいのか?それならどうして、今まで僕たちを殺さなかった?貴方であれば簡単だろう?人間である僕たちを消し去ることなんて」
「……」
「しかし、貴方がやったことといえば、思い悩むリアの憂いを払い、自らも彼女の夫の一人として支えることだけ。…だからこそ、リアは目に見えて貴方を頼っている。……悪魔である貴方を。」
エリックが口にした通り、アスモデウスはいつだってその気になれば手を下せた。だが、それを実行しなかったのは、ただ面倒だったからではない。ヴィクトリアの為だった。エリックの話を聞いて、禍々しいオーラをすっかり霧散させた彼は、その口元に悪魔らしい妖艶な笑みを浮かべる。
「…そうだ。不思議なことに、私はヴィクトリアの悲しむ顔を見たくない。昔から人間とは愚かな存在だ。愛する男が複数いたり、淫魔の眷属になったり、そういった女は沢山見てきた。だが、ヴィクトリアとその女たちとでは、決定的に違うものがある」
「……決定的に違うもの?」
弧を描いた口元が、愉しげに嗤う。
「――覚悟だ。自身の懐に入れた者たちへの覚悟。従魔を救う為に純潔を散らしたように、ヴィクトリアは己が大事にしている者の為なら、どんなものでも躊躇いなく差し出す覚悟がある。自分自身の命でさえも。……家族の為、恋人の為、仲間の為に同じ様な覚悟をして悪魔を召喚した人間は何人もいた。だからこそ私には分かる。ヴィクトリアはそういった類の人間で、愛する者の為なら、どこまででも堕ちていける人間だと。…そんな女から愛されるだなんて、堪らないと思わないか?」
「…っ」
アスモデウスの赤が入り混じった金色の瞳が妖しく光を放ち、ゾクリとした悪寒が背筋を走る。
アスモデウスの求めるものが何なのか、何故その相手がヴィクトリアなのか、その理由の一端が視えた瞬間だった。
「それに、無欲なヴィクトリアが貪欲に欲するものが快楽なのだ。正しく、“色欲の悪魔”である私の為に生まれたかのような女だろう?」
***
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