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《分岐》バルトロ・グレイヴィズ
愛称呼び
しおりを挟む「――――僕は、貴女の名前が知りたいのです。教えて下さい」
私の名前?
どうして?バルトロは一体何を考えているの??
私がバルトロの言葉に戸惑っていると、バルトロは綺麗な若葉色の瞳を細めて、そっと優しく私の頬に触れた。
「……抵抗があるなら、ファミリーネームは言わなくていいですよ。何なら、愛称だけでも構いません」
「愛称だけでも?……それって、バルトロにとって、何のメリットにもならないのでは……?」
「そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。……貴女の名前は?」
どうして、そんな熱っぽい瞳で私を見るの?
私の気のせい?……でも、何故だかその熱っぽい瞳に見つめられると、ただでさえ熱い身体が、更に熱く感じて――――
胸がきゅうっと苦しくなる。
「駄目ですか?」
「いえ。……本当に、魔導具を返してもらえるのですか?」
「ええ。約束しましょう」
「……分かりました」
もしかしたら、バルトロにはもう私がどこの誰だかバレてしまっているのだろうか?だとしたら、これはその確認??
(例えそうだとしても、私は……)
バルトロの瞳から、目を離す事が出来ない。互いにじっと見つめ合ったまま、私は自分の名前を口にしていた。本当の名前を。
「……ロゼリア」
「!」
「私の名前は、ロゼリアです」
私が名前を告げると、バルトロは大きく目を見開いて、若葉色の瞳を輝かせた。
輝かせ…………え?
なんで?
「ロゼリア。……なら、貴女の愛称はロゼか、リア、ですか?」
「はい。身内には、ロゼと呼ばれています」
「……そうですか。では、僕もロゼと呼んでいいでしょうか」
「へ?」
「……駄目ですか?」
「い、いえ。……二人の時なら、構いませんが……」
「そうですか。では、ロゼ」
「?」
私が首を傾げると、バルトロは微妙な顔をした。
「……返事は?」
「あ、はい」
「ちゃんと返事をして下さいね」
「はい。すみません」
「では、ロゼ」
「はい」
「ロゼ」
「何でしょう?」
「ロゼ」
「…………バルトロ?」
「返事は?」
「は、はい。……あの、何なのですか?」
バルトロはどうしてしまったの??
身体もしんどいし、そろそろ治癒師のところへ行きたいのだけど。
……そう思った時。
バルトロは何か満足したようで、僅かに口元を綻ばせた。
そうして、私の耳に手を伸ばし、自ら魔導具をつけてくれた。その仕草が、驚く程優しく丁寧で、私は思わず固まってしまっていた。
「ロゼとお揃いならば、この魔導具にも価値があるかもしれませんね」
「……っ」
「そうだ。僕の事も、二人で居る時は愛称で呼んで下さい」
「ど、どうして……」
「なんとなくですよ。……ほら、呼んでみて下さい」
「い、今ですか?」
「ええ。『今』です。呼んで下さい、ロゼ」
「~~っ」
「ロゼ」
どうして?
恥ずかしい。それに、さっきよりもお腹の奥が熱い。熱くて、ジンジンする。
何だか頭がボーッとするし、私、どうしちゃったの?
「ほら、呼んで下さい。ロゼ」
バルトロの瞳が、声音が、何故だか酷く甘く感じられる。
「バル……?」
「はい」
「バル」
「ふふ、良い調子です」
「バル。あの……」
「何でしょう?ロゼ」
「私……」
『治癒師のところへ行きたいです』
私はそう口にした後、ぱたりと意識を失った。
目が覚めた時、私はやっぱりバルトロの部屋のベッドに居たけれど、その時にはお腹の熱が消えていた。
ずっと私がバルトロのベッドを占領してしまっていたのに、バルトロは何故だかとても上機嫌で――――
私は訳が分からないまま、ただひたすらに首を傾げるばかりだった。
* * *
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