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《分岐》アレク・ユードリヒ

好意と下心*アレクside*

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「セルジュが好きだ。……俺の気持ち、無かった事にしないでくれ。好きだ、セルジュ」

こんなの矛盾してるよな。
夢だったのかもしれないけど、セルジュと鍛練していた時は、気まずくなるよりマシだと思ってたのに。
セルジュが他の男に言い寄られていると思った途端に、独占欲が湧いて出た。セルジュの腰を抱くバルトロが憎らしく思えた。
自分でも流石に驚いたよ。気付いたら、あのバルトロイカれた野郎に喧嘩を売ってたんだからな。
死ぬかと思ったわ。アイツの動きマジでやべェ。でも、俺の為に泣いてくれるセルジュを拝めたから、身体中痛くても全然平気かも。
やっぱり俺はロイに感化されたのか?自分で自分が信じられない。

「アレクの告白を、無かった事にするつもりはないよ。無いけど、今はどうしたらいいのか分からないんだ。僕、男だし」
「まぁ、そうだよな。男に好きって言われても困るよな。分かってるんだけど、俺自身も正直戸惑ってて」
「……戸惑ってるの?」
「そりゃ戸惑うだろ。ロイに影響され過ぎてんのかなとか、色々考えたけど、そうじゃないんだ」
「なんで?」
「可愛いから」
「?!」

俺は柔らかいセルジュを、ぎゅうぎゅう抱き締めた。
脇腹がクソ痛いけど、気持ちが高揚してるのが分かる。胸の内がザワザワして、落ち着かない。セルジュが俺の腕の中にいるのが、嬉しくて堪らない。

顔を真っ赤にして、困った顔をしてるセルジュが、最高に可愛い。
困らせてんのが俺だって事も嬉しい。こんなの、影響されたから、とかじゃ無理だと思う。

「可愛すぎてヤバイ。男のくせに、なんでそんなに可愛いの?」
「そ、そんなこと言われたって困るよ!それに僕は可愛くなんて……」
「めちゃくちゃ可愛い。その困った顔とか、俺を煽ってるから。下半身にくるから勘弁してよ」

俺が素直にそう言ったら、セルジュは耳から首まで真っ赤にして、身体をわなわなと震わせて怒り始めた。

「直球過ぎるよ!!殴るよ?!」
「なんでだよ。男なんだから分かるだろ?」
「分かる訳無いっ!!」
「おいおい。確かに学生の時も、皆セルジュの前ではあんまり下ネタ言わなかったけどさ、健康な男なら誰だって……」
「というか、僕をそーゆう目で見てたの?!」
「いや、好きだと思ったら下心と連動するのは男の性だから。お前、男のクセに分かんねーの?」
「あ、あ、アレクの馬鹿!!変態っ!!さっきの僕の涙を返せよ!!」
「ちょ、流石に俺も傷付くんですけど。男って皆そうだから。お前の周りにいる、例えばオリバー先輩達だって……」
「わああああ!!止めてよ!!お兄様を汚さないでっ!!」
「だから汚すとかそーゆうのじゃ……………………お兄様??」
「?!」

セルジュがピタリと叫ぶのを止めた。というか、お兄様ってどういう事だ?確か、いつも『オリバー』って呼び捨てにしていたと思うんだが。

「セルジュ?」
「ち、違う。その、今のは言い間違いで……」
「言い間違い?」
「と、とにかく!オリバーはアレクと違うから!!変な事を言うのは止め…………」
「すいませーん!!負傷した方は此方ですかー?!」

訓練場の入口付近に若草色の制服を着た若い男が立っていた。恐らくバルトロが寄越した治癒師だろう。
セルジュがハッとした顔をして「はーい!ここですー!!」と声を上げて男に答えている。

「治癒師が来たから離して、アレク」
「ん。分かった」

俺があっさりセルジュを離すと、セルジュは少しだけ意外そうな顔をした。なんでだよ。
治癒師が来たからセルジュは仕事に戻れよと言ったのに、『治療が終わるまで見届ける』と言って頑として聞かなかった。
お前、そういうところだよ。可愛い奴だな、本当に。
そして治癒師が俺の治療を始めたが、治療の最中に驚くべき事を言われた。

「うわぁ。君、頭の骨にヒビが入ってるよ!!かなり痛かっただろう?脇腹よりも、こっちの方が重傷だよ」
「え?」

そういや、目が覚めた時からずっと頭が痛かった。そうだった。もともと頭が痛くて診療所に行こうとしてたんだった。
治癒師の診断を聞いて、何故だか俺よりもセルジュの方が青褪めていた。やっぱりセルジュは良い奴だな。

「頭の骨にヒビって……!!何が『彼は大丈夫』だよ!!やっぱりやり過ぎてたんじゃないかっ!!」

いや、何の話??
と思ったら、セルジュが怒って訓練場から出ていった。何がどうしたのか俺にはさっぱり分かんねーんだけど。とりあえず、治癒師にハイヒールを唱えてもらって、俺の傷は頭の骨のヒビも含めて全部完治した。

じーさんが言ってた通り、騎士団の治癒師は優秀だな。


* * *
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