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本編
いつかの疑問*オリバーside*
しおりを挟む偶々第2魔法教材室の前を通り掛かったら、ロゼの声が聞こえた気がした。
そんな訳ない。ここは学校なんだから。しかし、それが分かっていても、身体が勝手に動いていた。
教材室の扉をノックも無しに開いて、属性特有身体強化を使用し、足に一層速さを乗せて割り込んだ。目に入ったのは、鮮やかなアクアブルー。ああ、この色は知っている。そして―――
セルジュの手首を掴んでいた、特別講師であるユベール先生を、セルジュから無理矢理引き剥がした。その時テーブルにぶつかり、ティーカップが落ちて割れてしまったが構いやしない。今の私に、他の物を気にする余裕なんてない。
「―――ユベール先生。何をしていらっしゃるのですか?」
「君は……」
「お兄…………オリバー?!」
ユベール先生をキツく睨み付けながら、私は震えているセルジュをぎゅっと抱き締めた。
……この匂いは知っている。やはり、セルジュはロゼなのか?いつかの疑問が再び脳裏を過りつつ、ユベール先生への詰問を続ける。
「嫌がる生徒に何をしていたのかと訊いているのです。セルジュは我がバルトフェルト家の親族。不埒な真似を働こうとしていたのならば、正式に抗議させていただく」
「え?!」
「お、オリバー違うんだ!先生はちょっとオタクスイッチが入っちゃっただけで、元はと言えば僕の為に……」
「だが、嫌がっていただろう?」
「それは…………」
煮え切らないセルジュの反応に若干の苛立ちを覚えながら、私はセルジュの腕を引いて扉の方へと歩を進めた。
「……セルジュの調子が悪そうですから、保健室に連れていきます。ユベール先生。後で事情を伺いに参りますから、そのおつもりで」
「…………はい」
青褪めたユベール先生をその場に残し、私はセルジュと共に教材室を後にした。
廊下に出て、保健室までの道程を歩いていると、セルジュが少しフラついている事に気付く。私はピタリと足を止めて、周囲に人が居ない事を確認してから、セルジュを横抱きに抱き上げた。
「わっ?!お、オリバー!降ろし……」
「この運び方が不本意なのは分かる。だが、今は早く保健室に行こう」
「……………………」
私の言葉に、セルジュは力なく頷いた。そして、無言のまま私の首に腕を回してくる。
……やっぱり、ロゼの匂い。
ロゼなのか?
もし、そうだとしたら、何故こんな格好をしている?どうして私に隠して、こんなこと……
訊いたら、事情を話してくれるだろうか?それとも…………
そんな事を考えている間に、保健室へと辿り着いた。けれど、保健室には相変わらず『保健医不在』の札がついている。いつも不在だが、この学校の保健医はいつもどこに行っているんだ??常勤と非常勤と、2人いる筈なんだが。居ないと分かっているが、一応ノックをしてから中へと入る。やはり保健医は居ない。ベッドを利用している生徒も居なかったので、私はセルジュを奥のベッドへと降ろした。
「保健室にある通信魔導具から、教員室に連絡を入れてくるよ。セルジュの体調不良と、私はその付き添いだ。……ここで大人しくしているんだよ?」
「……はい」
セルジュが大人しくベッドに横になったのを見届けてから、私は保健医の机にある通信魔導具を使用して教員室へ連絡を入れた。
連絡が終わった後、寝ているセルジュの元へ早足で向かう。仕切りのカーテンを閉め、外部に音が漏れないように音声遮断の魔法をかけてから、ベッドの横にある椅子に座った。
セルジュのアクアブルーの瞳が、じっと私を見ていた。色は違うけれど、どうしてもセルジュがロゼとダブる。私は、セルジュの頬にそっと触れて、その肌の感触を確かめながら、口を開いた。
「……セルジュは、ロゼなのか?」
* * *
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