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本編
男の子同士のお昼ご飯
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学校入学初日。
私は同じクラスで席も近い、男の子二人組、アレクとロイと一緒に学食に居た。頼んだ料理を受け取り、空いていた席に座って各々食べ始める。
「セルジュは昼飯、何にしたんだよ?あー、シチューオムライスか!何シチュー?」
「……牛すじシチュー」
「何それめちゃくちゃ美味いやつじゃん!!俺も頼めば良かった!!」
「アレク、煩いぞ。お前は黙って静かに食べていろ。俺がセルジュと話すから」
「いや、何でだよ。というか、さっき俺の足踏んだだろ?!すげー痛かったんだからな?!」
…………うん。
とりあえず、この二人がとても仲良しだという事は分かった。
それにロイが言っていた通り、ここの学食は結構美味しい。牛すじシチューのオムライス、頼んで良かった。
私が無言でもぐもぐ食べていると、ロイが何か言いたそうに、私をじっと見つめてきた。
え。何、その目。
『ロイは仲間になりたそうにこちらを見ている』的な目なんですけど。そんな捨てられた子犬みたいな目で、一体何を……??
「セルジュ。俺は余計な事をしてしまっただろうか?」
「余計な事?」
「女子生徒達に囲まれて困っていたように見えたから、つい強引に連れ出してしまったのだが……」
「!」
え?!あれってそーゆう事だったの?!あまりに突然だったしアレクの足を踏んでるしで、よく分かんなかったんだけど……
なんだ、私を助けようとしてくれただけだったんだ。この学校、親切な人ばっかり!
私はにこっと笑ってお礼を口にした。ロイ達の行動の理由が分かって、安心したと共に嬉しくなったからだ。
「全然余計じゃないよ。本当に困っていたし、二人とも、助けてくれてありがとう!」
「「……っ?!」」
あれ。
なんでかな。二人とも一気に顔真っ赤。お昼ご飯に辛いものでも入ってたのかな??
そう思っていると、アレクが「すげーな」と言い出した。
「何が?」
「いや、お前だよ。セルジュって本当にすげー綺麗な顔してるよな。女子が騒ぐのも分かるわ」
「え?!アレク、何言ってるんだよ?!」
「……同感だ。俺は今まで君ほどに綺麗な人を見たことがない」
「ろ、ロイまで?!」
~~~っ?!
ふ、二人とも何なの?!
私は今、セルジュ・プランドルなんだよ?!男なんだよ?!
なのに、男に向かって綺麗綺麗っておかしいでしょ?!
急な褒め殺しに遭い、私の顔は一気に赤く茹だってしまう。クールな美少年キャラでいきたいのに、これではまずい。私は慌てて赤くなった顔を片手で隠した。
二人から目線を逸らし、少し怒ったように抗議する。
「止めろよ!き、綺麗とか言われたって嬉しくなんかない……っ!」
そう言った瞬間、何故かロイが鼻血を吹いて転倒した。
「ガハッ!!…………綺麗な上に照れ屋で素直じゃないとかっ?!」
「ちょ、ロイ?!気持ちは分かるけど落ち着け!!鼻血!!鼻血出てるからっ!!」
「ロイ大丈夫?!僕のハンカチ使っていいからっ!!」
「なんだって?!天使のハンカチを?!」
「は?!いや、あの、天使じゃなくて僕のハンカチ……」
「もういいから黙れよ、ロイ!!いつものお前はどこに行っちまったんだ?!!」
え?!
ロイって、いつもはこうじゃないの?!私?!私が悪いの?!
なんかよく分かんないけど、ごめんアレク!!なんかロイより、悲嘆に満ちた顔のアレクに謝った方が良さそうだよね?!
私達は学食の端のボックス席に居て、座る部分はU字ソファーになっているのだが、アレクが何とかロイをそのU字ソファーに寝かせてくれた。
「参ったな。俺もロイも光属性じゃないんだ。セルジュは?」
「僕も光は持ってない……」
「そうか。回復魔法が使えれば鼻血なんてすぐに止まるんだけど」
ああ、確かに。
……なんで私、5つも属性持ってるのに光は無いんだろう?ちょっと悔しいな。
「二人ともすまない。俺の事は気にしないで昼食を続けてくれ。大した鼻血じゃないし、すぐに血も止まるだろう」
「そうか?まぁ確かに、大人しくしてりゃ大丈夫だろ。つー訳で、セルジュも残りの昼飯食べようぜ」
「う、うん。ロイ、本当に大丈夫?僕、なんかまずかった?」
「いや、セルジュは美味しすぎた」
「何それ、どーゆう意味??ごめん。さっきからロイの言ってる事、よく分かんないんだけど……」
「セルジュ、ロイの事は気にすんなって。今日はもう放っておこうぜ。……あー、やっぱ牛すじシチューオムライス美味そう」
私の牛すじシチューオムライスを、アレクがあんまりにも物欲しそうに見てくるから、なんだか可笑しくなって、私はスプーンで一口分掬い取り、アレクの口元へとそれを運んだ。
「そんなに欲しいなら一口あげるよ。美味しいよ」
「え、いいの?やった!セルジュ優しいな!俺の唐揚げも良かったら食べていいぞ!」
「ありがとう。はい、アレク」
「あむ!」
「?!」
意外に男の子同士のお昼ご飯も楽しいかも。ロイはちょっと変わってるけど、アレクは話し方がフランクだからか凄く親しみやすいし。
私、思ったより上手くやっていけるかもしれない。……って、ロイが何だか凄い目でこっちを見てる。鼻血が止まんないのかな?
「ロイ、大丈夫?鼻が痛いの?」
「せ、セルジュ。俺にも一口……」
「ああ、牛すじシチューのオムライス?なんだ、ロイも欲しかったの?ごめん、今食べ終わっちゃったよ」
「?!」
「ロイ、俺の唐揚げで良ければ1つやろうか?」
「アレク、今程お前を憎いと思った事はない……!お前を唐揚げにしてやる!!」
「そんなに牛すじシチュー食べたかったのかよ?!ロイ、お前今日は本当にどうしちまったんだよ?頭でも打ったんじゃないのか?!」
……そんなにいつものロイと違うんだ。なら、本当にどこか悪いのかもしれない。アレクも友人として心配だよね。可哀相に。
「頭のどの辺が悪いのか分からないけど、早く治るといいね」
私が早く治るようにと、ロイの頭を撫でたら、ロイはそれまでとは打って変わり、キラキラと幸せそうな笑みを浮かべた。
「今程アレクを褒めたい気持ちになった事は、未だかつて無い……」
えーーーーーー??
確かにこれはおかしいわ。
情緒不安定過ぎる。昼食を食べ終わった後、私とアレクでロイを保健室へと運んだ。続きの学校案内と研究会の見学はアレクと二人で見て回り、何事も無く、無事に今日の日程は終了した。
今日は楽しかったけど何だか疲れました。
……学校で見たお兄様、素敵だったなあ。家で見るのとまた違うというか。一人称も最近は『私』に変わったし、髪も伸びたし。
早く帰ってロゼリアに戻ろ。
* * *
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