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第3章 森から村へ

14 第2層

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 第2層に入ったとたんに、喧騒に包まれた。
 大きな木が視線を遮り、声を反響させて伝える。
 ダンジョンは不思議だ。薬草の森ダンジョンは壁や扉で仕切られている訳ではないのに、各層は明確に違う空気を持っていて、一歩進んだだけで、そこは第2層に入ったのだと分かる。


「ここより第2層
 三つ並んだ宝箱は、一つだけ選べ
 当たりは1つ。薬草が手に入るだろう
 外れれば、ささやかな代償を頂く

 第2層では魔獣への攻撃を禁止する
 ステージの上で決闘すべし
 決闘の方法は3種類
 勝者には薬草が与えられるであろう」



 第2層は森林ゾーンだ。見通しの悪い森の中で、あちらこちらに、地面に這いつくばって何かを拾っている冒険者たちがいる。

 ピシッ!
「ひゃあっ」

 草の蔓に巻き上げられて悲鳴を上げた冒険者。側にいた仲間は慣れているようで、すかさず蔓を切って助けた。
 蔓はシュッと消えて、小さな魔石が残された。
「お前またかよ。罠はほら」
 バシッ
 側の地面を冒険者が剣で突くと、分かりにくく泥で満たされた落とし穴が消え、小さな魔石が手に入った。
「引っかかる前に解除しねーと。体力大丈夫か?」
「いや、すまねえ。今日はもう3回も引っかかったから、これ以上は無理だ」
「仕方ねえな。俺たちがここ探してるから、お前は安全地帯でステージ応援してな」
「わかった」




「冒険者も罠にはもう、慣れてきたらしいな」

「だよねー。まだ引っかかる人が居るからいいけど、定期的に新しい罠を投入する必要があるなあ」

「魔獣の幹部たちに相談してみるのも良いだろう」

「うん。1人じゃあ、なかなか、ね」

 コイルもダンジョンマスターになって3か月、ようやく肩の力も抜けてきたようだ。

 飛びうさぎのステージに近づくと、ステージ傍の切り株の上に一人の冒険者が上って、マイク(ダンジョンの罠の一種なのだが)をガシッとつかんで叫んでいる。

「おーっと、ついに出た!280センチメルの大記録だあーーーーー。新記録を出したのは飛びウサギC!小さな体にロケットエンジン!飛び出せこのまま、宇宙までーーーー!
 さあ、対する冒険者はこれまたジャンプ力には定評があるパーティー、フライラビットのアキラだーーーー!いけえーーアーキーラーーー!冒険者の底力をみせてみろおおおお!」
「ピュ―ピュー」
「ブーーー」
「アキラさーン」
「ウサギCさん、可愛い!頑張って!」
「アキラこけろー」
「アキラ落ちろー」


「……なにあれ?」

「ああ、第2層じゃあ、体力切れの暇な冒険者が休憩を兼ねて実況してたんだが、それが受けて今じゃ本職だ。ほら、足元を見てみろ」

 実況中の冒険者の足元には帽子が置いてあり、その中に応援客から投げ銭が、時には矢羽から薬草が投げ入れられることもあるらしい。
 応援している者の中には、冒険者らしからぬ服がちらほらと見受けられる。
 普通の市民や身分の高そうな若者、護衛にぐるりと囲まれたお嬢様も1人いる。


「わーーーーっと、これは期待外れだ!フライラビットのアキラ、265セーーンチーー!自己記録更新どころか、とんでもない大コケだあーー!
 がっくりと膝をついたアキラーーー!笑い袋も大喜びだーーー!」

「大丈夫だ、アキラ!お前ならまだやれる!」
「そうよ、アキラさーん。」



 まあ、狙い通りなんだけれど。
 大丈夫ですかー?
 ここ、ダンジョンですよぉー!

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