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第3章 森から村へ
09 現状報告
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ミノルのお土産は色々あったが、開く前に晩御飯の支度を済ませようと、コイルは外のキッチンに行った。
ミノルは騎士団の宿舎から荷物を引き揚げてきていたので、それを片付けている。
少し暗くなり始めた頃、外の木の切り株テーブルを五人で囲んで、カレーパーティーが始まった。
ミノルと大工たちは改めて自己紹介し、家の完成予想時を見ながら、ひとしきり盛り上がる。
コイルからは畑を耕しまくった事、果樹園を作ろうと思うこと、乗馬の練習(笑)をしていること。
「あはは、そうそう。結構上手に乗ってたよ!あのロバはほんと、賢いね」
「そうだな、良いロバだ」
「なるほど。ポックルは賢いからな」
「……いや、みんな、僕を褒めようよ」
コイルが膨れると、ミノルが笑いながらガシガシ頭を撫でた。
ポックルは知らぬ顔で自分の小屋で寝ている。
そう、この二日間でコイルが、ケンジやレイガンに助言をもらいながら、家の下、一階の床が屋根になっている部分にポックルの部屋を作ったのだ。
1メルほどの高さで3方を囲む塀を作り、床は掃除しやすいように舗装した。周囲に溝を掘って、流した水はこの家の排水を処理する浄化槽に集められる。
舗装した床には切った藁を敷き詰め、大きな箱のエサ入れを置いた。扉はなく、出入りは自由だ。
ちなみに同じようなルフの部屋を作ろうとしたところ、インターフェイスを介して、「要りません」とのメッセージがあった。「護衛で連絡係なので、コイルの傍で寝るから」とのことだ。なるほど。最近乗馬の練習で注目度が高いポックルに対して、自分もしっかり見張り番頑張ってるんだぞと、今も少し離れたところで待機している。
ミノルからは街できいたダンジョンやこのデルフの森の噂話を持ってきた。
岡山村では今、攻略隊のメンバーと各ギルドの代表たちで、中の様子の検討会が開かれている。
ミノルが新しく所属した傭兵ギルドでも、少しずつ漏れ聞こえる会議の内容から、ダンジョンの注目度は高い。特に医師・薬師ギルドからは貴重な薬草をその場で処理したいと、護衛の依頼が多く舞い込んだようだ。
冒険者ギルドもまた、今回手に入った薬草のリストを手に入れ、その取扱い方法の講習会を開くなどの動きがあった。
入場時に魔力と体力が減少すること、罠や魔獣と競うステージでも、負けると魔力や体力が減少することも聞き取り調査から分かり始めた。
今までは第1層の薬草採取に毎日のように入っていた人でも、疲労具合が大きく、一日おきにしか入れない人もいるようだ。一方、「死なない」ダンジョンだという認識はもう広く知られ、今まではダンジョンに入っていなかった人も挑戦し始めている。初心者や、毎日入れなくなった人向けに改めて薬師ギルドから、第1層の魔アザミの採取方法が指導され、今後の薬の高品質化が期待される。
冒険者や旅行者からは、このデルフの森の変化も話題になり始めた。
元々この街道沿いは、矢羽の数が非常に多く、普通に街道を通行するだけでは大怪我という程のことはないが、何度も上空から攻撃され、鬱陶しいので有名だった。ところがこの最近になって、矢羽の数が激減したのだ。
街道を通る人々の歩く速度も当然早くなり、交通量も徐々に増えてきた。
どうやらデルフの森に誰か住み着いた人がいるらしいという噂もある。
森としては見通しが良いので、道行く人からコイルたちの様子がうかがえるのだ。さらに、何度も荷馬車で往復して作った獣道が、しっかりと街道から続いている。
矢羽がいないならと、この森の開拓を考え始めた者もいるようだが、それは現在領主に止められている。
「会議が落ち着いたら、来週にはエドワード様がここに視察に来られるそうだ。最初は岡山村から一緒に来るような話だったが、コイルがすでにここに住み着いているので、現地集合でいいんじゃないかと言われたぞ。それで良いか?」
「いいよ。案内と言っても、僕もそんなに森に詳しくはないけど」
「それは大丈夫だろうコイルの持っている土地の範囲と、どのくらい広範囲に開拓するかを見るだけだ」
「領主様が来られるのかあ。俺たちはどうしたらいいと思う?」
ケンジが聞いてきた。
「普通に作業していたら良いと思うぞ。多分エドワード様は、作業を見に来るがな」
「ええー、緊張するなあ」
緊張感のない顔で、ケンジが笑った。
少しは緊張すればいいのに……というレイガンの声が聞こえそうだ。
ミノルは騎士団の宿舎から荷物を引き揚げてきていたので、それを片付けている。
少し暗くなり始めた頃、外の木の切り株テーブルを五人で囲んで、カレーパーティーが始まった。
ミノルと大工たちは改めて自己紹介し、家の完成予想時を見ながら、ひとしきり盛り上がる。
コイルからは畑を耕しまくった事、果樹園を作ろうと思うこと、乗馬の練習(笑)をしていること。
「あはは、そうそう。結構上手に乗ってたよ!あのロバはほんと、賢いね」
「そうだな、良いロバだ」
「なるほど。ポックルは賢いからな」
「……いや、みんな、僕を褒めようよ」
コイルが膨れると、ミノルが笑いながらガシガシ頭を撫でた。
ポックルは知らぬ顔で自分の小屋で寝ている。
そう、この二日間でコイルが、ケンジやレイガンに助言をもらいながら、家の下、一階の床が屋根になっている部分にポックルの部屋を作ったのだ。
1メルほどの高さで3方を囲む塀を作り、床は掃除しやすいように舗装した。周囲に溝を掘って、流した水はこの家の排水を処理する浄化槽に集められる。
舗装した床には切った藁を敷き詰め、大きな箱のエサ入れを置いた。扉はなく、出入りは自由だ。
ちなみに同じようなルフの部屋を作ろうとしたところ、インターフェイスを介して、「要りません」とのメッセージがあった。「護衛で連絡係なので、コイルの傍で寝るから」とのことだ。なるほど。最近乗馬の練習で注目度が高いポックルに対して、自分もしっかり見張り番頑張ってるんだぞと、今も少し離れたところで待機している。
ミノルからは街できいたダンジョンやこのデルフの森の噂話を持ってきた。
岡山村では今、攻略隊のメンバーと各ギルドの代表たちで、中の様子の検討会が開かれている。
ミノルが新しく所属した傭兵ギルドでも、少しずつ漏れ聞こえる会議の内容から、ダンジョンの注目度は高い。特に医師・薬師ギルドからは貴重な薬草をその場で処理したいと、護衛の依頼が多く舞い込んだようだ。
冒険者ギルドもまた、今回手に入った薬草のリストを手に入れ、その取扱い方法の講習会を開くなどの動きがあった。
入場時に魔力と体力が減少すること、罠や魔獣と競うステージでも、負けると魔力や体力が減少することも聞き取り調査から分かり始めた。
今までは第1層の薬草採取に毎日のように入っていた人でも、疲労具合が大きく、一日おきにしか入れない人もいるようだ。一方、「死なない」ダンジョンだという認識はもう広く知られ、今まではダンジョンに入っていなかった人も挑戦し始めている。初心者や、毎日入れなくなった人向けに改めて薬師ギルドから、第1層の魔アザミの採取方法が指導され、今後の薬の高品質化が期待される。
冒険者や旅行者からは、このデルフの森の変化も話題になり始めた。
元々この街道沿いは、矢羽の数が非常に多く、普通に街道を通行するだけでは大怪我という程のことはないが、何度も上空から攻撃され、鬱陶しいので有名だった。ところがこの最近になって、矢羽の数が激減したのだ。
街道を通る人々の歩く速度も当然早くなり、交通量も徐々に増えてきた。
どうやらデルフの森に誰か住み着いた人がいるらしいという噂もある。
森としては見通しが良いので、道行く人からコイルたちの様子がうかがえるのだ。さらに、何度も荷馬車で往復して作った獣道が、しっかりと街道から続いている。
矢羽がいないならと、この森の開拓を考え始めた者もいるようだが、それは現在領主に止められている。
「会議が落ち着いたら、来週にはエドワード様がここに視察に来られるそうだ。最初は岡山村から一緒に来るような話だったが、コイルがすでにここに住み着いているので、現地集合でいいんじゃないかと言われたぞ。それで良いか?」
「いいよ。案内と言っても、僕もそんなに森に詳しくはないけど」
「それは大丈夫だろうコイルの持っている土地の範囲と、どのくらい広範囲に開拓するかを見るだけだ」
「領主様が来られるのかあ。俺たちはどうしたらいいと思う?」
ケンジが聞いてきた。
「普通に作業していたら良いと思うぞ。多分エドワード様は、作業を見に来るがな」
「ええー、緊張するなあ」
緊張感のない顔で、ケンジが笑った。
少しは緊張すればいいのに……というレイガンの声が聞こえそうだ。
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