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第1章 旅立ちは1人で

9 旅は道連れ

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 ゴルゴを出るときは、忘れずに屋台のおじさんから昼食用の焼き鳥を買って、朝ごはんは別の屋台でおにぎりとスープのセットを買い、公園で食べた。
 ちなみに、おにぎりは大きめの笹に包まれ、スープは容器は有料なので手持ちの容器に入れてもらうのだ。


 再び街道に出ると、今日もいい天気で、遠くの空には、相変わらず矢羽と、何かの鳥が気持ちよさそうに飛んでいた。

 たまにポックルと並んで、木陰で休憩したり、時には荷馬車に乗り、ポックルに運んでもらいながら、のんびりとコイルの旅は続く。

 道行く旅行者が並んで歩くこともあり、しばらく行くと、魔獣が寄ってこないことに気づかれたりもする。

「ギフトの恩恵なんですよ」
 特に隠す必要もないので、コイルが簡単に説明すると、道々で魔獣を倒して路銀にしたい冒険者たちは、「じゃ、またな」と言いながら離れていくが、女性や子供のいる集団は、安全なのが良いと、コイルについてくる。

 半日も歩くと、コイルは、女性と子供と老人ばかり、13人ほどに取り囲まれているのだった。コイルが止まれば、集団も止まる。コイルが歩くと集団も歩き始める。

 ちょっとうっとおしいなあ。
 木陰で昼食を食べながら、コイルが考えていると、一緒に歩いていた老人が一人、コイルに近付いた。

「コイル君、すまんのう。お蔭で助かっちょるよ。」
「はあ」

「ほっほっ。めんどくさいという顔じゃな。申し訳ない。
 さっき皆で話し合ったんじゃが、もし良ければ、次の宿場町まで、護衛として雇われてはくれんじゃろうか?皆で合わせて、1万くらいしか出せんが、一緒に歩くだけでよいんでな」

「えっと、僕のギフトだけれど、矢羽とかの遠距離攻撃は防げないですよ。冒険者としては初心者で、護衛経験もないですし」

「もちろんもちろん。正式に護衛を頼んだら、一日3万以上からじゃし、大抵二人セットで頼むから、貧乏旅には護衛は付けられないんじゃよ。コイル君のおかげで、ほとんど魔獣に会わないこんな楽な旅は久々じゃ。条件は一緒に歩くだけ。魔獣が襲ってきたら、今まで通り一緒に撃退するということで、いかがかの」

 断って振り切って逃げるのも、のんびりという目的から外れる気がするので、コイルはにっこり笑ってうなずいた。

「そうかそうか。ありがとうのう」
 老人がみんなから集めてくれた金は一人千円計算らしく1万3000円だった。


「コイル君は冒険者なの?しっかりしてるのね」
 10歳にはなっていない感じの女の子を連れた母親らしい女性が話しかけてきた。

「はい、半年前に卒業して」

「そう。この子も将来冒険者になりたいんですって。母としては心配だけど、仕方ないわね。この子のギフト、「いつもニコニコ良い天気」って言うのよ。泣くと雨になるってわけじゃないけど、にこにこ散歩してると天気が良いことが多いの。農村じゃあ、あまり好まれないギフトだから冒険者なのかもね。」

「ママ、あまりギフトの話をしちゃあだめよ。さべつって怖いのよ」

「あら、そうだったわね。だめねえママったら。ごめんなさいね。コイル君も、忘れてちょうだいね。でも、この旅行中は、良い天気で過ごせるから、期待してて」

 ペロッと舌を出して笑う母親に、困ったなあという顔で見上げる娘。
 前世の記憶は早い子で3歳、遅くとも7~8歳頃までにだんだん蘇ってくるから、この女の子の精神年齢も見た目よりは高いのだろう。


 コイルは相変わらず、10歳児にも楽勝なのんびりペースで、休んだり歩いたりを繰り返しつつ、同行することになったみんなとも少しずつ話して、仲良くなった。
 殆どが今朝ゴルゴから出発した人たちで、山鳥の恋物語の歌を聴いた人も多く、先ほどのママがサビのところを熱唱して、じいさんがひとり、大爆笑して歩けなくなるというトラブルはあったが。

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