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第2章 麗しき副社長

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 苦労の甲斐なく、声、若干、裏返ってしまった気がするけど。

「了解」
 わたしの声なんか、まったく気に留めた様子もなく、芹澤さんはリビングに置かれた小型冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出し、グラスについでくれた。

「実はこれから夜の便で上海に出張なんだ。とにかく今回の依頼のこと、手短に説明させてもらうよ」

「はい。ぜひお願いします。もう、さっきから頭のなかが〝はてなマーク〟でいっぱいで、今にも爆発しそうなんで」
 わたしの困惑する様子が面白いのか、彼はふっと相好を崩す。

 唇から白い歯がこぼれた。  
 歯並びもパーフェクト。
 なんて爽やかな笑顔。
 この笑顔なら、雑誌の表紙モデルだって、充分こなせる。

「実は今、ぼくに縁談が持ちあがっていてね。相手はさる政治家のお嬢さん。彼女が来年大学を卒業するので、それを待って結婚という話になってるんだ」

 いわゆる政略結婚だよ、と芹澤さんは付け加えた。

「ただ、その政治家にはいろいろ黒い噂があって、そんな人物と姻戚関係になるのは会社のためにならないからと断ったんだけど、芹澤ホールディングスCEOの叔父が首を縦にふってくれなくてね」
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