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番外編その2 木澤彰吾、パパになる
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わたしはぺこりと頭を下げた。
その瞬間……
「あっ」
はじめてお腹の赤ちゃんが動くのを感じた。
わー。動いた。
早く彰吾さんに教えてあげたい。
そう思っていたら、彼がジャストタイミングで戻ってきた。
「しょう……じゃなくて部長。ちょっと」
わたしは手招きして彼を呼び寄せた。
「どうした? 体調が悪いんなら早退しろよ」
「そうじゃなくて、ねえ、ちょっと来て」
わたしは小声で囁き、彰吾さんを廊下に連れ出した。
「触ってみて」
「なんだ、こんなところで」
そう文句を言いながらも、彰吾さんは素直にわたしの言うことを聞いてくれた。
そして、だいぶ丸くなってきたわたしのお腹に手を当てて、しばらくじっとしていた。
「ん?」
「わかった?」
彰吾さんは少し手を動かしてから、わたしの顔を見つめた。
「動いた……な」
「うん。足を伸ばしてるのかな」
「すげえ……」
彼はキョロキョロと周囲の様子を伺ってから、かすめるようにわたしの唇に口づけた。
それから、もう一度、わたしのお腹に手をあてて言った。
「ああ、待ち遠しいよ。おい、早く生まれてこい」
「あんまり早く出てこられても困るんだよ」
「そうか」
彼はわたしに優しい眼差しを向け、頭をぽんぽんと叩くと、先にオフィスに戻っていった。
その瞬間……
「あっ」
はじめてお腹の赤ちゃんが動くのを感じた。
わー。動いた。
早く彰吾さんに教えてあげたい。
そう思っていたら、彼がジャストタイミングで戻ってきた。
「しょう……じゃなくて部長。ちょっと」
わたしは手招きして彼を呼び寄せた。
「どうした? 体調が悪いんなら早退しろよ」
「そうじゃなくて、ねえ、ちょっと来て」
わたしは小声で囁き、彰吾さんを廊下に連れ出した。
「触ってみて」
「なんだ、こんなところで」
そう文句を言いながらも、彰吾さんは素直にわたしの言うことを聞いてくれた。
そして、だいぶ丸くなってきたわたしのお腹に手を当てて、しばらくじっとしていた。
「ん?」
「わかった?」
彰吾さんは少し手を動かしてから、わたしの顔を見つめた。
「動いた……な」
「うん。足を伸ばしてるのかな」
「すげえ……」
彼はキョロキョロと周囲の様子を伺ってから、かすめるようにわたしの唇に口づけた。
それから、もう一度、わたしのお腹に手をあてて言った。
「ああ、待ち遠しいよ。おい、早く生まれてこい」
「あんまり早く出てこられても困るんだよ」
「そうか」
彼はわたしに優しい眼差しを向け、頭をぽんぽんと叩くと、先にオフィスに戻っていった。
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