りさと3人のDoctors

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生理と救急搬送

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キーンコーンカーンコーン——





はぁ、薬かばんに入れとけばよかった……。

お腹痛いし腰も痛いし頭も痛いし……。

遅れてたせいで重いのかな?





事件があり、治療のこともあり、精神的に不安定になっていたりさは、しばらく生理がきていなかった。

生理の遅れ自体は念のため蓮にも診てもらったが、精神的な問題以外に異常はなく、りさは安心して生理が始まるのを待っていた。

そして、この日はようやく生理がきたのだが、遅れたせいか生理痛がかなりひどい。

ただ、こんな時に限って、学校に来てから生理になったせいで鎮痛薬も持って来ておらず、りさはなんとか痛みに耐えていた。





ゆき「りさちゃん、今日の体育は受けるよね!……って、りさちゃん大丈夫……?顔色かなり悪いけど、保健室行ったほうが……」





次は体育の授業。

激しい運動の時は見学することもあるりさだが、今日は体育館でマット運動なのでりさもみんなと一緒に体操服に着替えているところだ。





りさ「う、ううん。さっき生理来ちゃっただけだから、大丈夫大丈夫」


ゆき「生理なら無理しないほうがいいよ?」


りさ「ありがとう、ゆきちゃん。でも、本当に平気だよ」





本当は、すぐに横になりたいほどつらかったが、りさは授業を休むまいと体育館へ向かった。










体育の授業が始まった。

準備運動をした後、間隔をあけて4つ並べられたマットの前に、生徒たちは分かれて並んだ。

りさは、ゆきちゃんと一緒に1番端っこのマットに並んでいる。





先生「じゃあ、今から10分間、前転、好転、側転、自分ができる技なんでもいいから順にやっていくぞ。前の人が終わったら、次の人もどんどんやっていくように。いいな!」


「「はーい」」


先生「そしたら、よーい、始め!」





先生の合図で、生徒たちは一斉にマットを始めていった。





ぃ、いたた……。

ちょっとやばいかな……気持ち悪くなってきた……。





順番を待ちながら、りさはどんどん酷くなる生理痛に必死で耐えていた。





次わたしの番だ……。

どうしよう、手が痺れて耳鳴りがする……。

とにかく横になりたい……。





ゆき「りさちゃん、大丈夫?」





順番が回ってきたりさに、後ろに並ぶゆきちゃんが心配そうに声をかけるが、りさにはもうすでに聞こえていない。

マットを目の前にして、りさは失神しそのまま倒れ込んだ。





ゆき「りさちゃんっ!?」





目の前で倒れたりさを見て、ゆきちゃんはすぐに駆け寄った。





ゆき「先生ーっ!!白鳥さんがっ!!」





ゆきちゃんの声に先生もすぐに飛んできた。





先生「白鳥!?どうした、大丈夫か!?」





意識はすぐに取り戻したが、痛みと吐き気で返事ができない。





りさ「ぃ、いた……うぅっ……はぁはぁ……」


ゆき「先生、白鳥さん具合悪かったみたいで倒れちゃって……」





学校で倒れちゃった……。

目の前が真っ暗だ……。

気持ち悪くて痛くて痛くてもう起き上がれない……。

先生がいれば……。





りさ「……はぁはぁ、うぅ……せ、ん……せぇ……」


先生「おぅ。心配するな、白鳥。すぐ保健室連れて行ってやるからな!」





そういうと、体育の先生はりさを担ぎ上げ、ゆきちゃんと一緒に保健室へ連れて行った。



りさが"先生"と口にしたので、体育の先生はちょっと格好つけたようにりさを保健室へ運んだが、りさが口にした"先生"はもちろん蒼のこと。

ゆきちゃんだけはわかっていたので、そんな格好つける先生を冷たい目で見ていた。





ゆき「(りさちゃんの言った先生はあんたじゃない。体育教師って、本当筋肉バカよね……)」





保健室に運ばれたりさはすぐにベットに寝かされた。





養護教諭「白鳥さんわかる?どこか痛いの?」





保健室の先生に声をかけられるがりさは頷くので精一杯。





養護教諭「救急車を呼びますので、先生は一ノ瀬先生に伝えてお家の方に連絡してもらってください」


先生「はい!わかりました!」





体育の先生は無駄に良い返事だけをして職員室に走って行くと、ゆきちゃんは保健室の先生にりさが生理であることを伝えた。





ゆき「先生、白鳥さん今日生理になったみたいで具合悪かったんです……」


養護教諭「そう、ありがとう。あ、白鳥さんの着替えと荷物、悪いけど教室から持ってきてあげてくれる?」


ゆき「はい。わかりました!」





ゆきちゃんが教室にりさの荷物を取りに行ってくれている間、りさはついに耐えきれず嘔吐してしまった。





りさ「うっ……ぅぅ……っ……ゲホッ……はぁはぁ……」





5分経たずで救急車が学校に到着し、顔面蒼白で過呼吸になるりさは急いで病院に運ばれた。










***



そのころ、病院では蒼のスマホが鳴っていたが、タイミング悪くオペに入っており、蓮もお産の真っ最中だ。

運良く家にいた豪が学校からの電話に出ることができた。





豪「はい。小野寺ですが」


担任「突然申し訳ございません。私、りささんの担任の一ノ瀬と申します。実は、先ほどりささんが学校で倒れまして……」





豪はりさが倒れたという知らせに心臓が止まりかけた。





豪「わかりました。私もすぐに向かいますので、救急車はノワール国際病院へお願いします」





電話を切ると、豪はすぐに車で病院に向かった。










病院についた豪はすぐに救急搬入口へ向かうと、ちょうどりさが救急車から降ろされるところだった。





豪「りさ!!」


りさ「はぁはぁっ……うぅ……」





りさは救急車の中でも嘔吐し、体の震え、激しい痛み、真っ青な顔で冷や汗をかいており、急いで中へと運ばれた。

そして、りさが病院に到着したころ、お産を終えた蓮にも知らせがいっていた。





看護師「小野寺先生!たった今婦人科の救急で先生のところのお嬢様が運ばれたそうです……」


蓮「えっ!?わかった、ちょっと行ってくる……!」





看護師からりさが運ばれてきたと聞いた蓮は、すぐにりさの元へ向かった。










蓮「りさー?わかる?にぃにの声聞こえる?」


りさ「……っ、はぁはぁ……」





朦朧とする意識の中、りさは蓮の声にうっすらと目を開けて反応した。





蓮「つらいね、もうちょっと頑張るんだよ。お腹診るね~」





蓮は決して大丈夫という言葉を口にせず、りさの心を折れさせないように声をかけながら、テキパキと子宮や卵巣の状態をエコーで確認していく。

蓮がエコーで診ている間に、同時進行でスタッフたちが血圧を測り、採血をした。





看護師「りさちゃん、チクッとするよー」


りさ「はぁはぁ……ん゛っ!」





採血の針を刺したものの、りさは嘔吐による脱水症状で全く血液が取れなかった。





看護師「先生、脱水がひどく採血できないです」


蓮「じゃあ先に点滴入れて、吐き気止めも打って。あと坐薬用意してくれる?」


看護師「はい!」





エコーを終えると、りさはまた吐き気に襲われたようで、蓮は慌ててりさの体を横に向けた。





りさ「うっ……うぅっ……はぁはぁ……」


蓮「りさ、我慢しないで出しちゃっていいよ。吐き気止めも入れてあげるからね。もうちょっと頑張ってね」





蓮はりさの背中をさすりながら、優しく声をかけ励まし続けた。





看護師「先生、坐薬です」


蓮「ありがとう。このまま先に挿れるから体押さえといて」


看護師「はい」


蓮「りさ?ちょっとズボン下ろすよ~」





りさは横向きのまま体を看護師に押さえられ、蓮にはズボンをずらされた。





りさ「んんっ……」





りさは恥ずかしいのにどうすることもできない。





蓮「りさちょっと我慢するよ~」





蓮はそれだけ言いながら、りさのお尻に迷うことなくサッと坐薬を挿れた。





りさ「ん゛ん゛っ!!!」


蓮「ごめんねりさ、気持ち悪かったね。もうお薬入ったから、これで痛み引いてくるからね」





しばらくお尻を押さえた後、蓮はりさのズボンを戻して再び仰向きに姿勢を変えた。





蓮「よし、点滴入れて」


看護師「はい!りさちゃん腕ごめんね」





脱水状態で血管が怒張しないりさの腕を、看護師はベッドの下におろしてさすり始める。

ポロポロ涙を流すりさの心は限界寸前だった。





蓮「りさ、もうすぐ終わるからね。そしたらお部屋行って休もうね」


りさ「はぁ……はぁ……」





頭を撫でながら顔をのぞく蓮をりさは虚ろな目で苦しそうに見つめる。





看護師「りさちゃん、チクッとするよー……」





ようやく血管が出たりさの腕に、看護師は点滴の針を刺した。





りさ「ん゛っ……っ」


蓮「りさ、もう点滴入ったよ。ごめん、やっぱり吐き気止め打つのやめよう。点滴に追加して、滴下速めてくれる?」


看護師「わかりました」





最後に吐き気止めの注射を打つつもりだったが、これ以上はりさが耐えきれないと判断し、今入れた点滴に混ぜることにした。










全ての処置が終わって、蓮は豪に電話をかけた。





蓮「もしもし豪兄、部屋空いてた?」


豪「外科が埋まってたから産婦人科の特別室で」


蓮「了解。今から連れてく」





この日は、いつもりさが使っている外科病棟の特別室が空いていなかったので、代わりに、同じフロアの隣にある産婦人科病棟の特別室に入ることになった。





蓮「りさ~、お部屋移動するね」





病院に着いてからここまで20分ほど。

りさはストレッチャーで特別室に運ばれていった。



特別室のベッドに移ると、りさはまた嘔吐してしまった。

蓮がりさの体を支えながら背中をさすり、豪が吐き出すものを受けとめる。





りさ「うぅ……はぁ、はぁ……」


蓮「りさ、もう出なさそう?」


りさ「コクっ……」


蓮「そしたら、ゆっくり横になるよ~。もう大丈夫だからね……」





蓮はりさの体をゆっくりとベッドに休ませた。

そして、ようやく痛みも引き落ち着いたりさは、すやすやと眠りについた。






蓮「……寝たかな?」


豪「みたいだな」


蓮「血液検査はできてないんだけど、特に異常は見られなかった。ここ最近の相当なストレスが原因かな……」


豪「かわいそうにな……こんなボロボロになって、苦しい思いばっかりで……」


蓮「ほんと、早くりさをつらいことから解放して、毎日笑顔にしてあげたいよ……」










***



そのころ、ようやく蒼が手術を終えた。

5時間ほどの手術を執刀していた蒼は汗だくでオペ室から出てきたところで、看護師に声をかけられた。





看護師「先生!お疲れのところすみません……実は、りさちゃんが救急搬送されてきまして……産婦人科病棟に入ってます」


蒼「りさが……?わかった、ありがとう」





看護師からりさの報告を受けた蒼は、すぐにりさの部屋へ向かった。





コンコンコン——





手術着を着たままの蒼がりさの部屋に入ってきた。





豪「おつかれ」
蓮「おつかれさま」





蒼はすやすやと眠るりさを見ると、そっとりさの手を握った。





豪「学校からりさが倒れたって連絡があって、救急車で運ばれてきたんだ。酷い生理痛で嘔吐も繰り返した」


蓮「エコーで診た限りでは異常なし。点滴と痛み止めの坐薬挿れて様子見かな。脱水症状で血液検査はできてないから今夜か明日の朝採血するよ」


蒼「2人ともありがとう……原因はストレスかな……」


豪「あぁ。生理も遅れてたし一気にきたんだろ」


蓮「蒼兄、オペ終わってそのまま来たでしょ?りさ寝たとこだからまだ起きないと思うし、先に着替えておいでよ。目が覚めた時に蒼兄がいたほうがいいと思うから」


蒼「あぁ、そうだな……すぐ戻ってくる」





蒼はロッカールームで汗だくの体をシャワーで流し、真っ白な白衣に袖を通した。










夜になり、6時間ほど眠っていたりさはゆっくり目を覚ました。

先生は3人とも、時々出入りをしながら、書類を書いたり電話で指示を出したり、ずっとりさのそばで仕事をしてくれていた。

そんな先生たちは、まだりさが目を覚ましたことに気づいていない。

いつもと違う病室にりさはきょろきょろとする。





りさ「………先生」





りさの声で気づいた先生たちは、手を止めてベッドの側に集まった。





蒼「りさ、起きたか」





蒼はりさの頭を優しく撫でた。





りさ「ここどこ……?」


蒼「病院だよ。いつもの部屋が空いてなくて、産婦人科の部屋なんだ。フロアは同じだからね」


りさ「うん。……うっ、ぅぅ」





りさはお腹を抱えてうずくまった。





蒼「りさ痛い……?」


りさ「うん……先生、ちょっとトイレ行きたい……」


蒼「トイレ?わかった、ちょっと待ってな」





そういうと、蒼はりさの体をゆっくり起こし、豪は点滴をまとめてくれた。





蓮「りさ、トイレの中にショーツとナプキン置いてあるからそれに変えなね」


りさ「……?ぅ、うん……」





りさはなんでショーツも?と思ったが、それよりもショーツやらナプキンやら言われ恥ずかしかったので、とりあえず返事だけした。

特別室にはトイレがあるので、蒼に支えられながら数歩歩いてトイレに入った。



トイレに入ると、りさはやっといろんなことに気がついた。





あれ、わたしいつの間にか病院の服着てたんだ。

って、ブラもしてないし、オムツはかされてる……?

な、なんで……?





りさが眠りについたあと、看護師がりさを着替えさせていて、いつ起きるかわからないからと、生理が漏れないように大人用のオムツをはかせていた。





それでさっきにぃにはショーツって言ったの?

先生たちみんなわかってたのかな、恥ずかしい……。





羞恥心いっぱいでオムツを脱ぎトイレに座ると、ドロドロした経血がたくさん出てきた。





はぁ、血気持ち悪い。

少しふらふらするし、まだお腹痛い……。

横になりたい。





りさは置いてあったショーツに夜用ナプキンをつけて履き、お腹を抱えるようにしてトイレを出た。





蒼「りさ大丈夫か?痛い?」


りさ「うん……」





再びベッドに横になると、蓮がりさを診た。





蓮「りさ?倒れたときが10としたら、今どのくらい痛い?」


りさ「8くらい……」


蓮「気持ち悪いのはどう?吐き気する?」


りさ「少し……」


蓮「うん、わかった。ちょっと血圧測らせてね」





蓮は点滴をしていない右腕の服を捲ってカフを巻くと、聴診器を当てて加圧をはじめた。

腕の内側には、採血でなかなか血が出ず圧迫されたあざの痕が残っている。





りさ「んっ……痛い……」


蒼「りさ、血圧測ってるだけだから痛くないよ。ちょっと腕締めつけてるだけだから」





心が弱っているりさは、なんでも敏感に感じて反応してしまう。





蓮「う~ん、ちょっと低くなっちゃってるな……」


豪「足上げとくか?」


蓮「うん、お願い」





豪はりさの足の下にクッションを入れた。





蓮「りさ、痛み強かったらもう1回坐薬入れとこうか」


りさ「やだ……坐薬はやだ……本当にやだ……」


蓮「わかったわかった……我慢はダメだから、点滴に鎮痛剤入れとくね」





と、処置をした後、





蓮「次お熱も測るね」





蓮はりさの脇に体温計を挟み込んだ。





ピピピッ……





蓮「37.5°」


豪「だいぶもどしたから、熱出ちゃったな」


蓮「今から採血しちゃおうか。炎症反応あるだろうし」





蓮の口から1番嫌いなワードが出てきて、りさは不安になり泣き始めた。





蓮「泣かないで~。すぐ終わらせるから」


りさ「やだ……っ、もういっぱいしたからやりたくない……ぐすん」





さすがに先生たちも今日は可哀想だと思ったが、心を鬼にしてテキパキと準備し、アルコール消毒も終えた。





蓮「りさ、蒼兄か豪兄のこと見てて」





りさはなんの迷いもなく蒼の顔を涙目で見つめると、蒼はりさと目線が合うようにしゃがみ込み、りさの頭に手を置いた。

豪はわかっていても少し悔しそうな顔をしてりさの腕を押さえると、蓮はクスッと笑った。





蓮「りさ~、チクってするよ~、いくよ~」


りさ「んっ……ぁ、痛っ、いたい……っ、うぅぅ……」


蓮「もうちょっとね~……よし、抜くよ」


りさ「痛……っ」


蒼「りさえらいな。ほら、もう終わったよ。頑張った頑張った」





採血後、豪と蓮は持ち場に戻り、蒼だけ部屋に残った。

生理痛を痛がるりさに湯たんぽを抱えさせ、りさがうとうと眠り始めても、蒼はしばらくずっと腰を撫でてあげた。



夜中になり、蓮が点滴の交換を持ってそーっと部屋にやってくると、すやすや眠るりさの傍で、蒼もりさの右手を握りながらベッドに伏せて眠っていた。





ふふっ。完全にカップルじゃん。





蓮はこっそりスマホでその様子を写真に撮って、豪と楓に送っておいた。










点滴を交換していると、りさが目を覚ましてしまった。





りさ「にぃに……」


蓮「しーっ……。ごめん、起こしちゃったね。みて、蒼兄も寝てるよ」





蒼から隠れるようにりさの目線にしゃがむと、ひそひそ声でベッドの反対側の蒼を指さした。





りさ「……っ//」





自分の手を繋ぎながら疲れて眠る蒼の姿に、りさの胸にはドキドキと愛おしさが押し寄せた。





蓮「りさ、今気持ち悪くない?痛みは……?」





蓮はりさのおでこに手を当てた。





りさ「大丈夫……」





りさも蒼を起こさないようにひそひそ声で返事を返す。





蓮「うん。熱も下がってそうだね……また朝になったら来るからね」


りさ「にぃに、ありがとう……」





蓮は蒼の背中にそっとブランケットをかけて、りさの部屋をあとにした。










***



——翌朝





蒼「ん、んん~……」





先に目を覚ましたのは蒼だった。





……熱は引いてるな。





まだ気持ち良さそうに眠るりさのおでこに手を当て、しばらく愛おしそうに寝顔を眺めた。





あれ……?

このブランケット誰が……まぁいいか。

一旦戻らないと。





蒼は自分の肩にかけられたブランケットに気づき不思議に思ったものの、りさを起こさないようにそっと部屋を出た。



部屋を出ると、ちょうど蓮も部屋に入ろうとしていたところだった。





蒼「おっと……蓮か」


蓮「あ、蒼兄おはよう。よく寝た?」


蒼「あぁ。……ん?なんで俺が寝てたこと……なるほど、ブランケットは蓮だったか」


蓮「正解」





そういうと、蓮はにやにやしながら隠し撮りした写真を見せた。





蒼「……っ!ちょ、これ、なに撮ってんだよっ!」


蓮「ひひっ。夜中点滴交換しに来たらさ、ドラマのワンシーンが目に飛び込んできたから思わず撮っちゃった」


蒼「ったく、やめろよ……」





蒼はそう言いながらかなり照れた様子だった。





蓮「医局戻るの?」


蒼「あぁ、外来も行かないと。あ、りさはまだ寝てるぞ」


蓮「わかった。りさは俺がみとくから心配しないで」


蒼「ありがとう。よろしくな」





蒼は蓮にりさを任せて医局へ戻った。



蒼と入れ替わりで特別室に入った蓮は、点滴の確認だけ済ませると、蒼と同じようにりさの寝顔を眺めた。





大きくなったな~と思えば、こんなかわいい寝顔して……。

ずるいな、りさは。





蓮がしみじみしていると、りさは目を覚ました。





蓮「おはよう、りさ」





蓮はまだ寝ぼけるりさに太陽のような笑顔をみせる。





りさ「ふわぁ~ぁ……にぃにおはよう。朝……?」





りさは大きなあくびをして眠そうに目をこすった。





蓮「うん、朝だよ。まだ眠い?」


りさ「ううん、起きた……先生は?」


蓮「ついさっきまでいたんだけど、仕事に戻っちゃったんだ」


りさ「そっか……昨日はわたしのためにずっといてくれたもんね。にぃにも、豪先生も。学校で倒れて、心配かけてごめんなさい」





りさは朝から申し訳なさそうにした。





蓮「りさ~?すぐ謝るのやめなさいっ。いろいろあったから、生理に跳ね返ってきちゃったね。女の子の宿命だけど、かわいそうに昨日はつらかったよね……」


りさ「救急車乗って、豪先生とにぃにに会うまで本当に死ぬのかと思った……」


蓮「よしよし。よく頑張ってえらかったね。病気とか異常はなかったから安心していいよ。今はどう?痛いとか気持ち悪いとかある?」





りさは首を横に振った。





蓮「よかった。でも、もう1日ここにいようね。2日目だからまだ生理痛がひどくなるかもしれないし、昨日はたくさん吐いちゃったし、様子見させて」





今日は家に帰れないとわかり、りさは少しだけしょぼんとした。





りさ「でも、このお部屋ホテルみたいにすごく綺麗だから、病院って忘れちゃいそう」





ノワールの産婦人科病棟の部屋は全て個室になっており、病院の入り口やエレベーターも産婦人科だけ別にあって、内装はまるでホテルのよう。

外科とフロアは同じだが、産婦人科の方に行くには外科と産婦人科の間にある医局の中を通らないといけないので、外部の人は入れないようになっている。

いつもの外科の特別室もスタイリッシュでそれなりにホテルみたいではあるのだが、産婦人科の方がよりスイートルームみたいになっていた。





蓮「ははっ。こっちは産婦人科だからね。お母さんたちが安心してリラックスして赤ちゃん産めるようになってるんだ」


りさ「いつもこっちがいい……」


蓮「こっちの部屋だと医療設備が外科ほどじゃないんだよ。まぁ、中は繋がってるからなにかあれば対応できるんだけどね。それはそうと、りさ今日は食べたり飲んだりはできそう?」


りさ「うん。もう大丈夫」


蓮「じゃあ朝ご飯食べようか。8時になったら運んでもらうね。にぃに一旦戻るからひとりになっちゃうけど大丈夫?」


りさ「うん。ひとりで大丈夫」





蓮はにっこりとりさに笑って、医局へと戻って行った。










***



コンコンコン——



昼過ぎ、外来を終えた蒼と蓮が一緒に特別室へきた。





りさ「先生//」





いつも通りさわやかな笑顔で入ってきた蒼だが、昨日の夜、手を繋いだまま疲れて眠っていた蒼を思い出して、りさはそのギャップにドキドキした。





蒼「ごめんな、朝いなくなっちゃって。今日は痛くなってない?」


りさ「もう大丈夫。ごはんも食べたよ」


蒼「そうか。えらいな」





蒼はりさの頭をぽんぽんとした。





蓮「りさ、点滴はもう外しちゃおうね」





蓮が点滴を外す準備を始めると、蒼はベッドに腰掛けた。





蒼「りさ、袖捲るよ」





点滴を外す蓮の邪魔にならないよう、蒼はりさの背中側から腕を回し、りさの左袖を捲り上げる。

背中に蒼の体があたって、バックハグを連想したりさはすごくドキドキした。

ただ、蓮がテープを剥がし針が見え出すと、りさのドキドキは一気に緊張へと変わった。

針から顔を背けたりさを見て、蒼は左手でりさの腕を掴んだまま、右手をりさの頭に乗せた。





蒼「りさ。抜くだけなんだからそんな怖がらなくて大丈夫」


りさ「だってちょっと痛いから……」


蓮「一瞬だけねっ。ほら、抜くよ~」


りさ「いた……っ」





針を抜かれてビクッとしたりさの体を、蒼は少し腕に力を入れてぎゅっとした。





蒼「よく頑張りました」


りさ「……//」





止血のために、蒼がしばらく腕を押さえてくれている間、りさは顔を真っ赤にして時間が過ぎるのを待っていた。

その後、りさは特に問題なく生理が終わり、次の生理もきっちり1ヶ月後にやってきた。


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