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インフルエンザのりさ
しおりを挟む朝になり、りさの熱は38度まで下がったものの、まだまだ苦しそうにしている。
蒼も豪も朝まで付き添ったが、豪は昼からオペがあったので蒼が先に休ませた。
りさ「せんせ……はぁはぁ」
蒼「りさ、もう朝になったんだけどなにか食べれそう?」
りさは首を横に振った。
蒼「しんどいか……じゃあお水だけ飲もう」
蒼は水と言いつつも経口補水液をりさに飲ませた。
りさ「先生、一緒にいる……?行かないで……」
蒼「いるよ。大丈夫だよ」
蒼の優しい声と頭を撫でる優しい手に安心したりさは、またすぐにうとうとと眠りについた。
お昼を過ぎると、りさは咳き込んで目を覚ました。
りさ「ケホッ、ケホッ。先生……はぁはぁ……」
蓮「りさ、苦しい?」
りさ「せん……にぃに?……コホッ……ケホケホッ……はぁはぁ……」
朝までずっとりさに付き添っていた蒼だが、昼からはどうしても仕事に戻らなければならず、代わりに夜勤明けの蓮が来てくれていた。
蓮「りさ大丈夫だからね。ゆっくり呼吸整えてごらん」
発作が起きないようにと、蓮はベッドを起こしりさの背中をさすって落ち着かせた。
りさ「はぁはぁ……せんせぇは……?」
蓮「蒼兄は仕事だよ。どうしても行かなきゃいけなくて……すぐ戻って来てくれるからね。ねぇりさ、ちょっとお熱測ろうか」
まだまだ身体が熱いりさの脇に、蓮は体温計を挟んだ。
ピピピッ……
"38.9°"
お昼になって、熱は下がるどころかまた上がってきている。蓮はりさに頓服薬を飲ませた。
蓮「りさ、しんどいね…たくさんお水飲んでたくさん寝ようね。そしたらよくなるから大丈夫」
りさ「にぃに……せんせぇくる?」
りさは朦朧とする意識の中でしきりに蒼のことを気にした。
蓮「うん、大丈夫。次起きる頃には蒼兄もいるから、もう一回寝よう、ね」
りさ「コクっ……」
しんどくて不安で心細いんだよね。こんな時に、1番蒼兄がそばにいて欲しいんだろうな……
蓮は少しでもりさの寂しい気持ちが紛れるよう、優しく声をかけながら寝かしつけた。
***
陽が沈んだころ、蒼がりさのところに戻ってきた。
蒼「蓮、疲れてたのにごめんな。りさどう?」
蓮「俺は平気。昼にまた熱が上がってきて頓服飲ませたんだけど、あんまり……」
蒼「そうか……なんか食べたか?」
蓮「いいや全く。水分は取らせてるけど、食べるのは無理みたい」
蒼「点滴入れるか……ちょっと、持ってくる」
蓮「あ、蒼兄待って。俺が取りに行くから、りさといてあげて。ずっと蒼兄のこと呼んでたんだ」
蒼「え、あぁ、わかった。悪いな」
そう言って、蓮は蒼の代わりに点滴を取りに行った。
蓮が点滴を取りに部屋を出ると、蒼はりさのおでこに手を当てた。
蒼「まだだいぶ熱いな……」
りさ「んん……」
するとりさが目を覚ます。
蒼「ごめんなりさ、起こしちゃったか」
りさ「ぅ……うぅ……ぅわぁ~ん……」
目を開けると蒼がいて、びっくりしたのか、ほっとしたのか、うれしかったのか。
りさは突然泣き出した。
蒼「りさ、どうしたの~。ごめんな、先生いなくて、しんどかったな。ちょっとお水飲もうか」
と言って、蒼はりさの身体を起こし、水を飲ませた。
りさ「ぐすん、ぐすん……ケホッ、せんせ……うぅ……」
蒼「ほらりさ。泣いたら咳出ちゃうから。先生いるから大丈夫」
蒼はりさを横から抱きしめて背中を撫でた。
蓮「蒼兄おまたせ……あれ、りさ起きたの?なんで泣いてんの?」
点滴を取りに行った蓮が戻ってきた。
蒼「それは、さっき目覚まして俺の顔見た途端に泣き出して……」
それだけ聞いて、蓮はすぐに理由がわかる。
蓮「あぁ、そういうことね。りさ、蒼兄がいなくて寂しかったんだよね。起きたら蒼兄がいて安心したね」
と言って、蓮がりさの頭を撫でると、りさはコクンと頷いた。
蓮「蒼兄、これ……どうする?」
蓮の手には点滴が。
蒼「あぁ、俺押さえとくから蓮入れて」
りさはしんどくて半分目が開いてないような状態だっので、点滴には気付いてない。
蒼「りさちょっと腕ごめんな」
蒼と蓮はりさが気づく前に終わらせようと、連携プレーでささっと準備する。
りさ「んんんっ!いたぃ……うわぁ~ん」
突然腕に針を刺されたりさは、また泣き出した。
蒼「ごめんごめん。もう痛くないから大丈夫。ごはん食べれてないから点滴しようね」
りさ「いやだぁ~、はぁはぁ……ごはんたべるぅ……うぅ……ゴホゴホッ」
ソ「りさ~、泣かないで。咳出ちゃうと危ないから……よしよし、大丈夫大丈夫……あ、そうだ蓮、昨日から休んでないだろ?あとは俺がみるから大丈夫。長い間ありがとな」
蓮「うん、じゃあお言葉に甘えて。なにかあったら連絡してよ」
蒼「あぁ、ありがとう」
その後、蒼がずっとそばにいてすっかり安心したのか、りさは朝まで起きることなく眠り続け、熱も一気に下がっていった。
37.3°か……山は越えたな。
蒼はりさの熱がやっと下がり、胸を撫で下ろした。
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