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2度目の誕生日プレゼント②

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そして、その夜。





藤堂「うん、いいよ。胸の音綺麗になったね。何か自分で気になることはない?」


ひな「はい、大丈夫です」


藤堂「うん、ありがとう。そしたら、また明日の朝に来るね。お休み」


ひな「ありがとうございました。おやすみなさい」





夕食を食べ、藤堂先生の診察を終え、寝るには少し早いかなとスマホをいじいじ。

していると……





コンコンコン——





五条「ひな」





五条先生が来てくれた。





ひな「五条先生!お疲れ様です。お仕事終わりですか?」


五条「あぁ、今日はもう上がったぞ。昼間は途中で悪かったな。ひなはまだ起きてたか」





言いながら、五条先生は白衣を脱いで椅子に腰掛ける。

白衣の下はスクラブだけど、冬の間はその下に薄手の長袖を着ていることも多い。

そして、長袖の時は大抵腕まくりをしているから、



腕まくりした腕かっこいいな~。



って、いつも見てたんだけど、今日はスクラブだけ。

久しぶりにたくましい二の腕が露わになって、やっぱり全部見えるのもいいな……と、少しドキッとする。





ひな「はい。藤堂先生の診察が早めに終わったので、眠たくなるまで起きてようと」


五条「それでずっとスマホ触ってたのか?余計眠れなくなるぞ。夜は見ないようにしないと」


ひな「はーい」





五条先生が来たから、暇潰しのスマホは用済み。

機嫌よく返事をして、わたしはスマホを棚に置いた。

すると……





五条「そっち座っていいか?」


ひな「え?」


五条「ひなの隣、座っても?」


ひな「あ、はいっ……//」





五条先生はベッドに深く腰掛けて、わたしを横からぎゅっと抱き締めた。

そして、





五条「お誕生日おめでとう」





優しく落ち着いた声をわたしの耳に響かせた。





ひな「ご、五条先生……?」


五条「昼間はゆっくり言えなかったから。2人きりでちゃんと伝えたくて。人生の節目の20才は、波瀾万丈だったな。この1年、辛いことの方が多かっただろ。でも、本当によく頑張った。21歳、おめでとう」


ひな「五条先生……」





思えば、去年の今日は最高の20代のスタートだった。

五条先生と旅行に行って幸せに満たされて、身体も元気で順風満帆な日々を送っていた。

けれども、それが一転。

後半は何もかもが最悪。

天国と地獄を味わった、本当に波瀾万丈の1年だった。





ひな「ありがとうございます、うれしいです……。五条先生がこうしてそばにいてくれて、幸せなお誕生日です」


五条「俺も。こうしてひなのそばにいられて嬉しいよ」





そう言って、五条先生はわたしのおでこにキスをする。





ひな「ご、五条先生……っ///」


五条「なに、またこのくらいで顔真っ赤にして」


ひな「だ、だって……//」


五条「ずーっとご無沙汰だからか?」


ひな「ご無沙汰?……って??」





言うと今度は、





!!?





ひな「んっ……」





唇にキスをされた。





五条「ひなとエッチ。しばらく出来てないだろ?そういうこと」





っ……/////





唇を離した五条先生は、わたしと鼻先をくっつけたまま言ってくる。

言われてることもされてることも恥ずかしくて恥ずかしくて、自分の顔がカァーッと熱い。





五条「ひな覚えてるか?ひなと初めてキスしたの、去年の誕生日だぞ」





そんなの、もちろん覚えてるに決まってる。

去年の今頃は、ベッドの上で五条先生に押し倒されて、キスされて、それから……





五条「初めてのエッチもしたな。あれからもう1年経って、しばらくしてなかったにせよ、入院前は家でキスもエッチもしてたのに。すっかり大人になったと思ったけど、恥ずかしがり屋のひなはまだまだお子様か」





そう言って、チュッと音を立てて、わざとらしくキスする五条先生に、





ひな「こ、こういうの久しぶりだったから……っ。それに、五条先生がかっこいいから、いつもドドッ、ドキドキしちゃうだけで。今日で21歳だし、もう大人ですよ……っ」





と言うと、





五条「……ひな。大人ならわかるだろ?大好きな可愛い彼女を前にして、男が理性を保つのがどれだけ大変か。サラッとそんな興奮させるようなこと言って、今ここで襲われたいのか……?」





えぇっ!?





ひな「なっ……!いや、あの、違っ……!そんなつもりじゃっ……!」


五条「ははっ、冗談だ。でも、ひなと早くイチャイチャしたいのは確かだからな。退院したら、覚えとけよ?」





そう言って、五条先生にまたぎゅっとされ、五条先生の匂いもするし、心臓の音も聞こえるし、





こんなの、どれだけ大人になってもドキドキしない方がおかしいよ……//

慣れるわけないじゃん……っ。





なんて思っていたら、





五条「ひな?俺、ひなにおめでとうって言いに来ただけじゃないだ」


ひな「えっ?」





最初におめでとうって言ってくれた時みたいに、急に真面目な感じになり、





五条「誕生日プレゼント。まだ渡してなかっただろ」





そう言って、五条先生はいつから手に持っていたのか、小さな長細い箱をわたしの目の前に。





ひな「えっ……?でも、今日はもうケーキもらったのに……」


五条「ケーキは先生方からだ。俺は何もしてないから、これが俺からの誕生日プレゼント。ほら」





と、その箱を手の上に乗せられて、





五条「開けてごらん」





五条先生からのお誕生日プレゼント。

箱の中に何が入っているのか、箱の形で何となくわかる。

そして、その予想が正しければ、これは人生で初めてもらう憧れのもの。

リボンを解き、箱を開け、和紙のような薄紙をそーっと捲ると……





ひな「わぁ……」





思った通り。

箱の中には、綺麗なネックレスが入っていた。





ひな「かわいい……すごく綺麗……」





ピンクゴールドの華奢なチェーンに、ダイヤモンドの粒が3つ並んだネックレス。

箱から出してみると、光に当たってダイヤモンドがキラリと……





ん?

あれ、このネックレスって……





キラリと輝くダイヤモンド。

ダイヤモンドはどれもキラキラするものだけど、どうしてだろう。

初めてもらうはずのネックレスなのに、どこかで見たことある気がする。

そう思うと同時に、





五条「ひな」





声をかけられ五条先生を見ると、





五条「見覚えないか?」





って、心を読んだみたいに五条先生が。





ひな「これ…………も、もしかして……っ。でもどうして……」





恐らく、いや、間違いなく。

この3つ並ぶダイヤモンドは、20才の誕生日に五条先生がプレゼントしてくれたブレスレットのもの。

あの大切なブレスレットは、事故で失くしたんだと思ってた。

目が覚めて、色々あって元気になって、手首につけてたブレスレットがどこにもないことに気づいたけれど、事故に遭った時に失くしたんだろうと。

そして、五条先生にはそのことを言えないでいた。





五条「実はな、事故の時に藤堂先生が拾ってくれてたんだ」


ひな「藤堂先生が……?」


五条「あぁ。ひなが倒れてた近くに落ちてたって、後で俺に渡してくれた」


ひな「そうだったんですね……」


五条「チェーンは切れてたけど、さすが、ダイヤモンドは無傷でな。だから、それをペンダントトップにして、ネックレスに作り変えてもらった」





そう言って、わたしの手からネックレスを取ると、五条先生は首につけてくれた。





五条「ん。綺麗だ。よく似合ってる」


ひな「五条先生……」





ポタッ……ポタッ……





涙が出るのはいつぶりだろう。

ここのところは泣くようなことなんてなかったから、久しぶりに頬を涙が伝い落ちた。





五条「なんで泣くんだ……」





五条先生が少し驚いて、わたしの頬を親指で拭う。





ひな「わたし、五条先生にもらった大事なブレスレット、一生の宝物なのに失くしちゃって……事故の後、ブレスレットが無いってことは気がついたんです。でも、五条先生にずっと言えなくて。謝らなきゃいけなかったのに、失くしたなんて聞いたら五条先生どう思うだろうって、黙ってたんです……グスン」


五条「ひな……。それくらい大切にしてくれてたんだな。毎日付けてくれてたもんな。それだけで俺は嬉しいから、こういうことがあっても思い詰めなくていいんだぞ。それに、今回はちゃんと見つかって、今こうしてひなの手元に戻ってきたんだから。泣かなくて大丈夫だ」





そう言って、五条先生はわたしをぎゅっと包み込んでくれる。





ひな「五条先生、ありがとうございます……こんな素敵なプレゼント、今度こそ失くさないように大切にします……本当に嬉しいです。グスン」


五条「気に入ってもらえてよかった。ひなが喜んでくれて俺も嬉しい。でも、涙はもう止められるか?誕生日なのに、俺いつもひなのこと泣かせちゃうな」


ひな「違うんです。うれしくて、幸せだから涙が出るんです……」


五条「わかってるよ。ありがとう。でも、あんまり泣くと疲れてしんどくなっちゃうから。な?よし、じゃあそろそろ寝るか」





そう言って、五条先生はネックレスを外してくれて、丁寧に箱の中へしまうと、





五条「おやすみ、ひな。寝るまでここにいるから、目閉じてごらん」





おでこにおやすみのキスをして、眠りにつくまで優しく頭を撫でてくれた。


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